みかん小説
本棚

"消された母親席" 第10話

の放った言葉は、そのにいた全てのきを止めた。

華やかなに満ちていたロビーが、を打ったように静まり返る。

列席者たちのさざめきも、ホテルのスタッフたちの音も、全てが嘘のように消えた。

ただ千酷な声だけが、代ので悪のように反響していた。

お母さんの席はありません。

その言葉のを、代の脳は理解することを拒絶していた。

そんなはずはない。何かの違いだ。これは質の悪い冗談なのだ。

そういたかった。

しかし目のつ千の嘲りに満ちた瞳が、それが紛れもない現実であることを無慈に突きつけてくる。

代の声は、もはや懇願にかった。

「どういうなの……私は優太の母親として……」

誰か、この悪を終わらせてくれ。

しかし千は、そんな代の最の希望を、笑顔でカプなきまでに打ち砕いた。

「ですから、母親だから何だと言うんですか?」

は、見すような線を代に浴びせた。

「お義母さんの価値は、これまで優太に援助してくださったあのおだけ。それ以に何の価値もないんですよ」

その言葉は、集まったゲストたちにも聞こえるように、にそしてはっきりと発せられた。

周囲からどよめきと、信じられないものを見るような線が斉に代へと注がれる。

広告

は、涼しい顔で言葉を続けた。

「教育費も、結婚資も、も、本当に助かりました。謝してます」

そして千は、残酷な宣告をす。

「でも、価値はそれだけです。に何の取り柄もないんですから、席なんて必ないでしょう」

の言葉は本の槍となって代の胸を貫き、その奥にある母親としての最の誇りをズタズタに引き裂いた。

の血が逆流し、の奥でキーンという属音が鳴り響く。

っているのがやっとだった。

その、騒ぎを聞きつけた息子の優太が、慌てた様子で駆け寄ってきた。

優太は、周りの目を気にしながら千にすがりついた。

「千、何やってるんだよ。みんな見てるだろう」

代は、最の蜘蛛の糸にすがるようないで息子の顔を見つめた。

助けて。おから、この女の言っていることは違いだと言ってくれ。

お母さんの席がないなんて、そんな馬鹿なことがあるはずがないと。言だけでいいから言ってくれ。

しかし優太は、母親のその痛な差しから、スッと目を逸らした。

その線は、げに千と周囲のゲストたちの顔ったり来たりしているだけだった。

優太は、か細い声で言い訳をした。

「母さん、ごめん。でもこれは、千が決めたことだから……」

全ての責任を妻に押し付ける、卑怯な言い訳。

広告

代は、その言で完全に絶望した。

この息子はもう、自分のっている優太ではない。

妻の言いなりになり、母親が衆でこれほどの侮辱を受けているというのに、見て見ぬふりをするらない男だ。

代は、震える声で息子を問いただした。

「あなたが……何も言わなかったのね。私があなたの母親なのに」

優太は、まるで駄々をこねる子供のようなけない声で反論した。

「だって、千るから……」

代のの献が、息子夫婦にとってどれほど価値がなく、そして恥ずかしいものでしかなかったのか。

その残酷な真実が今、こので全てのに暴されたのだ。

代の瞳から、粒の涙が堰を切ったように溢れした。

「あんまりだわ……あんまりよ……」

は、泣き崩れる代を見て、さらに追い打ちをかける。

「お義母さんみたいな代遅れの護師なんて、正直恥ずかしいんですよ。私たちの華やかな結婚式には釣りいなんです」

は、たく言い放つ。

「それに、お義母さんがいると私の友たちも気を遣うでしょう。センスもないし、話も面くないし」

そして千は、とどめの言を放った。

「だから、ご祝儀だけ頂いて、そこの隅で体育座りでもしていてくだされば、それで分なんです」

それが、息子夫婦が尽くし続けた母親にした、最終な価値判断だった。

は、勝ち誇ったように唇の端を吊りげた。

「それが嫌なら……」

の悪魔の囁きのような言葉が、代のに届く。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: