"消えた写真屋の父が残した一本のビデオ" 第8話
、名だけを奪われた座ではなかった。千鶴は「本当の持ち主に返す」と言って健太に通帳を渡した。健太は受け取ったが、引きさなかった。の額より、母が初めて自分で決めさせてくれたことのほうがきかった。
写真館が取引していた信用庫には、昭62の古い座照会記録が残っていた。本名義の記録は閲覧できても、由美と健太の座については当未成だった事の確認が必だった。千鶴が同すると、窓の係員は慎に古い台帳を調べた。
信吾はの名で、それぞれ額の貯座を作っていた。だが失踪の、その座を担保のように示す類が作成されている。法に効な担保設定にはなっていなかったものの、産業者の古川に対して《族も売却を承している》と印象づけるために使われていた。
類のには千鶴の署名もあった。彼女は度も署名していないと言う。写真館ので子どもの写真を受け取る際に記した、母親としての受領サインを切り取って複写したような自然な線があった。印章はの角印が押されているだけで、の権利をかす正式なものではない。
「つまり、瀬はの契約を成させたわけじゃない」
「でも、相を急がせることはできた。信吾さんだけが反対しているように見せられるから」
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古川は由美へそう説した。買いにとって、主の抵抗なら額をげれば済む。族全員が反対すれば取引自体が危うい。瀬は、写真館を先に売ったことにしてからの位置を決めさせるつもりだったのだ。
由美は父の借入を見直した。借は写真館の現像を更するためのもので、返済予定も守られていた。消えた百万円は現箱の売ではなく、隣の主たちが変更に異議を申してる際、調査費として父へ預けただった。通帳と領収控えがそれを示している。
「お父さんがで抱えていたわけじゃないのね」
千鶴は信吾の帳簿を眺めた。父がで音を吐かなかったため、妻はのことも借のこともらず、噂のほうを信じてしまった。由美は父を勇敢なとして記憶していたが、族へ相談しなかったことには腹がった。
主の、青果の飯田は、信吾が預かった百万円についてしい事実を話した。失踪の会で返を求められ、信吾は翌週には返すと約束したという。現が見つからなければ父も疑われる。由美は、どこかに調査費と写真原本を緒に隠したのではないかと考えた。
写真館のを調べても何もなかった。ところが帳簿には、運会の当、写真館かられた所に《材保管・百円》という支がある。
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支払先は駅のコインロッカーではなく、商の銭湯だった。
信吾はなぜ、写真や現を銭湯に預けたのか。
銭湯の帳簿を見せてもらうまで、由美は《材保管》という言葉を信じていた。番台のの学ノートには、番の預かり物について《箱つ、返却に本確認》とかれている。材を預けた記録ではなかった。信吾は写真館の帳簿にはを悟られない名目を使い、タツには箱のをらせていた。
タツは「男が戻るまでけないでくれ」と頼まれたと話した。由美は父がその約束をしたとき、も姿を消すつもりだったのか聞いた。タツは首を横に振った。「が暮れるに戻るって言ったよ。だから最初の週は、毎晩戸締まりのに裏を見た」。銭湯には所のが毎来る。父が無事なら、いつか誰かが自分のことを話すだろうと、タツはっていた。
古い棚は脱所にはもうなかった。しいの棚と鏡が並び、番は子どもでもの届くさに付いている。番号だけが使い回されていた。信吾が預けたのは改修の最段の棚で、タツは預かり物のある棚を残すようへ頼み、棚ごと倉庫へ移した。は預かり物があるとり、鍵を付けたまま解体しなかった。偶然ではない。何かがそれぞれさな約束を守った結果、箱は残った。
箱の表面にはいが付いていた。
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