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"死刑執行直前、1匹の犬が見つけた「8年前の嘘」" 第10話

もう度、法廷へ

橘織と名乗った女性は、相談で直を見ると、子のでち止まった。

双方の弁護士が席を勧め、織は鞄を膝に置いて座った。直も向かいの子へ腰をろした。

「父のそばへってくださったんですか」

挨拶のあと、織はそう尋ねた。

「映像に、がている建物へ入るところがありました。それで、どうしても聞きたくて」

直は両を膝へ置いた。

「会議で、お名を呼びました。野寺さんにも声をかけました。でも、返事はありませんでした」

「何か、話したりは……」

直は首を横に振った。させられる言葉を探しかけたが、自分が聞いていない声を、聞いたことにはできなかった。

「息があるのか、自分には分からなくて。へて、救急と消防を呼んでほしいと伝えました」

織は鞄の持ちを見つめていた。しばらくして顔をげると、直へもう度聞いた。

「2とも、名を呼んでくださったんですね」

「はい」

織はうなずいた。目元にハンカチを当てたが、直を責める言葉はてこなかった。

「裁判のとき、あなたを見ないようにしていました。父にひどいことをしただとっていたから」

直はその話を黙って聞いた。織がそうった理由を、自分がいちばんっていた。法廷で示された話を信じたたちに、別の証拠を見せることができなかったのだ。

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「今聞いたことを、父のことを話すときに伝えてもいいですか。助けようとしてくれたがいたって」

「俺がしたことのとおりなら」

織は、初めて直の目を見てうなずいた。

別れ際、握を求められることも、許してほしいと迫られることもなかった。織はくをげ、直は子の横でそれを受け止めた。

再審の公判の、直は自分で選んだを着てをた。

結に預けたハルは、玄関で直の靴を嗅いだ。直がを撫でてちがると、ついてようとした。

「帰ってくるから、待ってて」

今度は、いつ戻れるか分からないまま言う言葉ではなかった。

法廷へ入ると、直は傍聴席を度見た。結の姿があり、しれたところに織も座っていた。

審理では、元の判決が何を根拠にしていたかが改めて確かめられた。直がいから管理棟にいたとする入退の覧、須藤の目撃証言、血のついた作業着。そして、直が消したとされていた9分の映像だった。

今度は、その根拠を作った経緯も問われた。

須藤は証として、覧表を変更したこと、映像の部を抜いたことを認めた。自分の刑事責任についても問われるだったが、答えた内容には、提済みの記録と照できる具体な箇所があった。

「相沢さんを、その刻に見たのですか」

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浦が尋ねると、須藤は証言台の端を見た。

「見ていません」

「では、なぜ以は見たと証言したのですか」

「相沢さんがやったという話に、わせました」

直は須藤の顔を見ていた。あのとき自分を見なかったが、今もこちらを見ようとしていない。けれど、その声は法廷で記録されていた。もう、病のだけで取り消せる話ではなかった。

鑑定からは、原記録の連続性や、独した資料との照結果が説された。刻表示だけを根拠にした結論ではないこと、以の提映像にしなかった面が、のきとつながっていることが示された。

直への質問では、勤務のと、管理棟へ入ってからのきが確認された。

浦が見取り図を示した。

「須藤さんから連絡を受けたとき、どこへくように言われましたか」

「管理棟です。設備がおかしいから見てほしいと。裏を使えばかったので、具鞄を持って、そこへきました」

直は裏の位置を指した。持っていたカードで扉をけ、煙を見たこと、鞄を置いて会議へ向かったことを、いた順番に話した。

「入退の覧にかれた2143分という刻については、どうですか」

「その刻に管理棟へ入ってはいません。それは、最初からお伝えしていました」

直は度言葉を切った。以なら、覚え違いではないかと話を戻されるところだった。

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浦は別の資料を示した。

「裏の映像では、2152分にあなたの姿が確認できます。この鞄は」

「俺の具鞄です。そこへ置いたままになりました。通報したあと、取りにこうとして、消防のに止められています」

現写真にも同じ鞄が写っていた。直が以から説していた所と、映像と、当の写真がなった。

着について聞かれると、直はのシャツで仕事をしていたと答えた。紺の予備の作業着はロッカーに置いていた。映像には、それを先に持ちす須藤が映っていた。

「作業着に付着した血について、あなた自はどう説していましたか」

「自分がその着たものではない、と。自分のだからこそ、誰がしたのか調べてほしいと話しました」

直の声がしかすれた。をみ、顔をげてから、最まで答えた。

同じ説をするのに、以と同じ勇気が必だった。それでも今回は、言葉の先に、それを確かめる記録があった。

公判をね、しい証拠の調べが終わると、検察官は従来の罪主張を維持できないと述べた。直を犯とする根拠は、旧の証拠をわせて見直すことで崩れていた。

無罪の判決を求めるという言葉を、直は席で聞いた。

最に発言を求められたとき、直は用していたを置いた。

「私は、頼まれた仕事へきました。

がていたので、へ入りました。そこで見たことを、最初から話してきました」

裁判官へ顔を向けた。

「どうか、その夜、私が本当にしたことを判決に残してください」

判決を言い渡す期が告げられた。直はく息を吐き、机に置いたを畳んだ。

傍聴席の結は、直がちがるのを待っていた。裁判官の席では、提された類が静かにそろえられていた。

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