"死刑執行直前、1匹の犬が見つけた「8年前の嘘」" 第11話
無罪の2文字
「主文。被告は無罪」
裁判官の声が、法廷に響いた。
直は、まっすぐを見たままかなかった。言葉は聞こえていた。聞きたかった言葉だった。それなのに、次に何をすればいいのか、すぐには分からなかった。
隣で浦がうなずいた。
直は机ので握っていたをいた。爪の跡が掌に残っていた。
判決では、以の罪判断を支えた証言と資料について、その信用性が否定された。たに確認された映像と、当からした通報や現の記録は、直の説を裏づけていた。
直を2の殺害と放の犯と認めることはできない。
裁判官が読みめるあいだ、直は度も顔を伏せなかった。聞き逃さないように、声のするほうを見続けていた。
閉廷を告げられてちがると、結が傍聴席からこちらを見ていた。元を押さえたをろし、何度もうなずいている。
廊へてから、直は浦へ尋ねた。
「無罪って、俺が言ってもいいんですよね」
「もちろんです。今、裁判所がそう言い渡しました」
直は壁際へ歩寄り、く息を吐いた。そこへ結が来た。
「聞いた?」
「聞いた」
「ちゃんと、言ってくれたね」
直はうなずいた。結が差ししたを握り、言葉を探したが、何もてこなかった。結も続きを待たず、そのままを握っていた。
しれたところで、橘織がち止まった。
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目がうと、織は胸のに持った鞄をげ、をげた。直も静かに会釈した。父を奪われたと、犯にされたのあいだに残っていたものが、すべてなくなるわけではない。それでも、どちらも同じ偽りを見続けなくてよくなった。
記者への説は、浦がになってった。直はいだけ質問に答えた。
「今のお気持ちは」
「今から何をしようか、考えています。まだ、すぐにはいつかないんですが」
直は机のに置いたを見てから、記者へ線を戻した。
「仕事も、むところも、もう度決めたいです」
須藤の協力をどう受け止めているかという質問もた。
「本当のことを話した部分は、助けになりました。ただ、俺を犯にしたことも事実です。その責任は、取ってもらいたいとっています」
直はそこまで答え、浦へ目を向けた。浦が、まだ別の刑事続きが続いていることを説した。
会見が終わって席をつと、にいた記者がを空けた。
「相沢さん、ありがとうございました」
自分の名だけで呼ばれたことに、直はし遅れて気づいた。「刑囚」も、「事件の」もついていなかった。
そのの夜、結が聞社の配信記事を見せた。
『相沢さん、再審無罪。映像と証言の虚偽がらかに』
直は見しを読み、記事のへ指をかした。
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当初の報について、判決とたに確認された事実を踏まえた訂正が付されていた。
「全部は、度には変わらないとう」
結が言った。
「でも、変わったものは残しておこう」
直は記事を保した。無罪とかれた自分の名を、あとで何度でも確かめられるようにした。
その、判決は確定した。
刑事補償や会社への請求について、浦との相談が始まったころ、ホテルグループから面談の申し入れが届いた。しい経営陣は謝罪し、直の仕事と活を支えることを検討したいと説した。
提案のには、設備管理の顧問として戻るという話もあった。
条件を確認するために送られてきた類の最に、対発表用の文章案が添えられていた。
『相沢直氏を迎え、しい信頼関係のもとで再発いたします』
直はそのページを抜き、浦のへ置いた。
「まだ、戻るとも言っていません」
「そうですね。受け入れる義務はありません。謝罪や必な対応と、雇用の提案は別に考えていいんです」
直は条件のかれたページをもう度読んだ。すぐに働きがあることは、確かに助かる。けれど、会社へ戻った自分の写真が、その文章と緒に公表されるところを像すると、が止まった。
「復帰の話は、お断りします」
直は自分で返事をいた。
会社がどの資料を確認せず提したのか、誰が関わったのかについては、引き続き調査と説を求める。
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その対応を、自分が戻ることの条件にしないでほしいと付け加えた。
浦は文面を確認し、直のをそのまま先方へ伝えた。
仕事については、結の訓練仲からさな相談が来ていた。古くなった具棚の扉が閉まりにくく、見てもらえないかという話だった。
「直せるかどうか、先に見にってもいいですか」
直がそう返すと、相は都のいいを尋ねた。
事件の話を聞くためではなく、直にできる仕事の話をするための約束だった。
鷹宮に対する捜査と起訴の続きも、そのにんでいた。以の殺と放、須藤に対する今回の監禁などについて、別の刑事裁判で責任が問われることになった。
、直のもとにも法廷での証言に関する連絡が届いた。
類をき、事件の当事者の名を確かめた。裁かれる側として記されていたのは、鷹宮亮介だった。
直に求められていたのは、自分を弁解することではなく、っている事実を証言することだった。
直はするを帳にき込んだ。自分の予定として、始刻と帰りのを調べた。
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