みかん小説
本棚

"五人の元彼と三万一千円" 第6話

からろしたての綺麗な万円札ばかりではなかった。誰かの財布から直接かき集めたような、皺くちゃの幣の束。

『これ、俺たちえる限界なんだ。全部で百円ある』

佐々さんが言った言葉を、私は今でも句違わずに覚えている。

『端数まで全部集めたから変な数字だけど、りないよりはマシだろ。返さなくていい。困ったときはお互い様だし、千里が学を辞めずに済むなら、それでいいから』

「受け取れなかった」

私はドレスのサテンを固く握りしめた。

「怖かったの。万円なんて、当の私にとっては文学だった。父が借に追われて性を失っていく姿をずっと見ていたから、誰かからおをもらうということが、どれほど恐ろしい毒になるかをっていた。『返さなくていい』なんて言葉を信じたら、私はこのたちの奴隷になるんじゃないか、いつか体やを差しして埋めわせをさせられるんじゃないか……本気でそう怯えていた」

「千里……」

「でも、背に腹は代えられなかった。所がなければ、バイトも学も続けられない。私は泣きながら、げてその封筒を受け取った。『絶対に返します。円も欠かさず、利子をつけてでも返します』って、何度も何度もいた借用を押し付けようとした。

広告

でも彼らは笑って、借用を受け取らなかったの。『友達のでそんなものくなよ』って」

それが、すべての始まりだった。

「その、佐々さんに告されたわ」

私の声は、ひどく平坦になっていた。

「断れなかった。……断れるわけがなかったのよ。親切にしてくれて、焼けされた私に真っ先におしてくれた恩を、どうして振ることができるの? 『ごめんなさい』と言った瞬に、『あんなに助けてやったのに、都のいいときだけ利用して恩を仇で返すのか』ってわれるのが、ぬほど怖かった」

「……じゃあ、君は……」

俊平の声が微かに震えていた。

「好きでもないのに、付きったのか? 借の代償として?」

「最初は、謝だったの」

私は首を振った。

「本当に謝していたし、素敵なだとっていた。でも、付きい始めてから、私のはそれどころじゃなくなったの。佐々さんとご飯をべにくたびに、私は自分の財布をいて、円単位まで割り勘にしようとした。佐々さんが『俺がめにすよ』と言っても絶対に譲らなかった。誕プレゼントをもらったら、翌週には全く同額のお返しを渡した。佐々さんのに乗せてもらったら、距を計算してガソリン代を封筒に入れて助席に置いたの」

『千里、頼むからやめてくれよ』

付きって半が過ぎた頃、ファミレスの席で佐々さんがを抱えた顔が、ありありと脳裏に浮かぶ。

広告

『俺、おの彼氏だろ? なんで毎回毎回、取引先と清算してるみたいにおを突きつけてくるんだよ。息が詰まるんだよ』

「佐々さんにとって、私への好労働でしかなかったのよ。好を差しすたびに、私が怯えた目で『おいくらですか』と清算を返してくるんだから。も経たずに、佐々さんから『もう無理だ、疲れた』と言われて別れたわ」

「そのあとの……も、そうなのか?」

俊平が痛ましいものを見るような目で私を見つめていた。

「そうよ。佐々さんと別れて半、今度はさんからアプローチされた。さんもあの事のときにおしてくれた。私はまた断れなかった。『佐々と別れたなら、俺にもチャンスがあるだろ』と言われて、罪悪で押しつぶされそうになった。そして、同じことを繰り返した」

徹底な割り勘。

からの親切の拒絶。

料理をご馳になったら、翌には同等の材を買い込んで相の部蔵庫に詰めた。

けば、速代から宿泊費、缶コーヒー代に至るまで几帳面にノートにメモし、帰りの卓を叩いて現を握らせた。

さんもっていった。その次は藤田さん、その次は松本さん、そして学を卒業して社会になってから、林君……。みんな、最初は私の『真面目さ』や『自したところ』を褒めてくれたわ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: