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"優しい教室で震える息子" 第5話

もし蓮が「おがないから恵んでくれ」と頼んだのなら、それは恐か詐欺だ。 だが、このレシートの保管のされ方はどうだ。 まるで、見てはならない呪いの証拠を隠すように、ランドセルの底板の裏に封印されていた。 蓮はこの片の枚を、どんないで受け取り、ここに隠していたのか。

「あ……」

で、息を呑む音がした。

振り返ると、部の入りに蓮がっていた。 いつのにか目を覚まし、パジャマ姿のままち尽くしている。

その線は、私のに握られた黄いひまわりの封筒と、面に並べられた枚のレシートに釘付けになっていた。

蓮の顔から、急速に血の気が引いていった。 を通り越して、だった。 見かれた両目が、絶望に染まってきく見かれ、唇がわなわなと震えている。

「あ……ああ……」

声にならない鳴が、蓮の喉から漏れた。

「蓮、これ……」

私がレシートを指差し、きかけたその瞬だった。

「返して!!!!」

聞いたこともない絶叫とともに、蓮が突してきた。 普段の温な息子からは像もつかない狂暴な力で、のレシートを掻き集め、私のから封筒をもぎ取ろうとびかかってきた。

「蓮! 落ち着きなさい!」 「見ないで! 見ないでよ! 返せよ!」

蓮は涙とで顔をぐしゃぐしゃにしながら、私の腕に爪をて、必屑を胸に抱え込もうとする。

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が、蓮の指ので無惨にクシャクシャと音をてて潰れていく。

私は蓮の両首を掴んで引き剥がした。 「蓮! 話しなさい! これは何なの!? なんでクラスのみんなが、あなたの費を払ってるの!?」

私の厳しい声が部に響き渡った瞬、蓮はまるで糸が切れた操り形のように、そのに崩れ落ちた。

畳のに膝をつき、両で顔を覆って、子供のように激しく嗚咽し始めた。 そのさな肩が、引きつけを起こしたように波打っている。

「……言わないでって言ったのに」

に涙を滴らせながら、蓮は掠れた声で絞りした。

「お母さん、お願いだから……学かないで……」 「蓮……」 「誰にも言わないで……これ以、僕を惨めにしないでよ……!」

に散らばった枚のレシートので、息子はただただ、許しを乞うようにを抱えて震え続けていた。

なぜ、うちの子が。 誰が、こんな残酷な仕組みを作ったのか。 そしてなぜ、蓮はそれを拒絶できずに受け入れ続けたのか。

元に散らばる「席番号番、浅井悠」の文字を見つめながら、私はかつて経験したことのない底れない恐怖に呑み込まれていた。

ドアが乱暴に閉まり、カチャリと内側から鍵の掛かるい音が廊に響いた。

「蓮! けなさい! 蓮!」

洗面所のドアノブを何度も回したが、応えは虚しく空回りするだけだった。

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からは蛇を力任せに捻ったような、激しい音が響いていた。 自分の泣き声をかき消すための音。 その奥から、しゃくりあげるような息の詰まる音が微かに漏れてくる。

「蓮、っているわけじゃないの。お母さんは、何が起きたのかりたいだけ……」

扉に額を押し当てて呼びかけても、返事はない。 ただ、激しい流の音だけがたいタイル張りのを震わせていた。

私はそのち尽くし、荒い息をえた。 元には、先ほど蓮が抱え込もうとして握り潰したのレシートが、何枚も落ちている。 拾いげて掌ので伸ばしてみる。 『370円』 『受領印 緑が丘事務』 裏面には、消え入りそうな鉛の文字で『席番号1番 浅井悠』。

胃の腑のあたりが、氷を詰め込まれたようにえ切っていた。

りではなかった。混乱と、そして得体のれない気の悪さだった。 枚のレシート。 それは、クラス全員が、も欠かすことなく蓮の費を順番に支払っていたというかぬ証拠だった。

は貧困庭ではない。 夫の雅史は精密器メーカーの営業職で、私も民の設計事務所でフルタイムの正社員として働いている。世帯収は同代の平均よりもややだ。都内の分譲マンションのローンも滞りなく払えているし、蓮の習い事の謝を惜しんだこともない。

百円が払えないなどという状況は、がひっくり返ってもあり得ないはずだった。

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