みかん小説
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"優しい教室で震える息子" 第12話

そのものを、私ので、完膚なきまでに叩き潰してやる。

夜がけても、のリビングには苦しい沈黙が淀んでいた。

昨夜、過呼吸寸まで泣き叫んだ蓮は、精神な疲労からのように眠り続けていた。 夫の雅史はを遅らせ、青ざめた顔でダイニングテーブルに両肘をつき、め切ったコーヒーを見つめていた。

「……俺が、甘かったんだ」

掠れた声で、雅史が呟いた。

「蓮がそこまで追い詰められているともらずに、ただ『うちにはがある、配するな』と鳴り散らして事実を突きつければ解決するとい込んでいた。蓮の言う通りだ。いきなり学鳴り込んでを叩き返せば、あいつはから『善のクラスメイトを騙していた嘘つき』として扱われる。子供の世界の残酷さを、俺は何も分かっていなかった」

私はテーブルのに散らばる枚のレシートを、枚ずつ丁寧にね直した。 の表面に並ぶ、子供たちの無邪気な跡。 席番号番、浅井悠席番号番、飯田蒼太。 席番号番、川咲良……。

「雅史さん、蓮が夜しだけ話してくれたの。先、お父さんの転職先が決まった直のこと」

私が静かに言うと、雅史が痛ましそうに顔をげた。

「……何を話したんだ?」

「蓮ね、自分でお弁当を作って持ってこうとしたのよ。

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の夕飯の残りの唐揚げとおにぎりを詰めて、ランドセルに隠して」

蓮の震える告が、の奥に々しく蘇る。 づいた、蓮は机のからそのさなタッパーを取りし、隣の席の悠君や周りの男子に言ったのだという。 『今から僕、お弁当持ってきたから。もう費は丈夫だよ』と。

だが、その瞬、教の空気は凍りついた。

駆け寄ってきたのは、学級委員の蒼太君や女子数だった。 彼らはタッパーのの歪なおにぎりとえた唐揚げを見るなり、斉に胸を痛めたような、痛ましい目を蓮に向けたのだ。

『蓮君、無理しないで……!』 『お母さん、朝くからお仕事で変なんでしょ? 蓮君のために無理してお弁当作ってくれたの?』 『そんなの、蓮君が余計に辛いじゃん!』

誰も蓮の言葉を信じなかった。 むしろ「貧困を隠すための痛々しいがり」として解釈されたのだ。 そして、その当番だった男子が、蓮の目のにトレイを置いた。ほかほかの湯気をてるポークビーンズと、揚げパン。 『いいから、べて! 今の分は咲良ちゃんがもう払ってくれたんだから! 残したら咲良ちゃんの気持ちが無駄になっちゃうよ!』

の包囲網だった。 斉に、慈に満ちた瞳で自分を取り囲み、逃げを塞ぐ。 蓮はその、涙をこらえながら、のしない揚げパンを胃袋に押し込むしかなかった。

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自分が用したたいおにぎりは、誰にも見られないように持ち帰り、公園のゴミ箱に捨てたのだという。

『お母さん……僕が「助けて」って言ったんじゃないのに。なんで、断る方が悪者になるの?』

蓮のあの絶望に満ちた問いかけが、私の胸を激しく締め付けていた。

「雅史さん。これはもう、おを返せば済む話じゃない」

私はがり、バッグを肩にかけた。

「蓮は今、あの教で『れな救済のシンボル』として祭りげられているのよ。誰もあの子の本当の声を聞こうとしない。あの子をにしておくことで、自分たちのを満たしている怪物たちがいる。その仕組みそのものを解体しない限り、蓮の尊厳は戻らない」

「……どうするつもりだ?」

「まず、堀を埋めるわ。浅井織さんは『クラス全員がんで協力した』と言っていたけれど、本当にそうかしら。の子供全員が、度の疑問も持たずに遣いを拠し続けるなんて、そんなことがあり得るとう?」

同調圧力だ。 が作りし、子供たちに内面化させた、逃げのない「正義の制」。

私は雅史に蓮の病を頼み、午、再びた。

私が最初に向かったのは、学ではなく、区の端にある型スーパーの駐輪だった。 今の目は、学の公式見解を聞くことではない。

あの教の「空気」に巻き込まれ、息を潜めているはずの、別の子供と保護者の声を探すことだった。

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