"一万八千円の伝票" 第21話
私が答えると、林先は温かく力い差しでさく頷いてくださった。 その様子を見ていたは、わざとらしくきな溜息を吐き捨てた。
「な再会ごっこはそこまでにしてもらいましょうか。……林先、あなたがしゃしゃりてきたところで、結果は何も変わりませんよ。もしそのばあさんが譲渡のサインを拒むというなら、私にも考えがありますからね」
はスーツの内ポケットにを差し入れ、枚のつ折りにされた類を取りすと、ガラステーブルのに乱暴に叩きつけた。
「よく見てもらおうか! これは、このホテルが私の個会社から借り入れた、『銭消費貸借契約』の原本だ!」
突きつけられた類の額欄には、目を疑うような数字が並んでいた。 ――『千万円也』。
「この、赤字続きだったこのホテルを維持するために、私が銭を切って私財を投げ打ってきた! その貸付の累計が、利息を含めて千万円に膨れがっているんだよ! もし今、この譲渡契約にサインをしないというなら、私は債権者として、即座にこの借全額の括返済を求する!」
は勝ち誇ったように胸を張り、ロビーに響き渡る声で叫んだ。 レストランの脇で様子を見ていたが、甲い声でくすくすと笑い声をげた。
「あらあらぁ! おばあちゃん、変じゃないですかぁ! 千万円なんて、払えるわけないですよねぇ?」
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「当然、払えるわけがない!」
は醜悪な笑みを浮かべ、テーブルを指差した。
「払えないのであれば、借のカタとして、このホテルのと建物を私が法に差し押さえるまでのこと! どちらに転ぼうが、このホテルは今、完全に私のものになるんだよ!」
京から来たの弁護士も、その契約に目を通し、さく頷きった。
「……佐藤様。支配の仰る通り、この正規の銭消費貸借契約が効である以、貴方に勝ち目はありません。民事訴訟を起こされても、即座に仮差し押さえが執されます。穏便に事業譲渡に応じられるのが、貴方にとっても最も傷が浅い選択かとじます」
彼らは、私が完全に詰まりとなり、恐怖で泣き崩れると信じ切っていた。 千万円という途方もない架空の借を突きつければ、世らずの老いた女など、簡単に屈するとを括っていたのだ。
だが、私は取り乱すことも、顔を変えることすらしなかった。 ガラステーブルのの切れを、ただ氷のようにややかな目で見つめていた。
「……さん。あなたは、どこまで愚かななのですか」
私の静かで澄んだ声に、の引き攣った笑顔がピクリと止まった。
「な……負け惜しみは見苦しいぞ! 証拠はこの通り、完璧に揃っているんだ!」
「証拠、ですか。……その言葉を、まさかあなたのから聞くことになるとはいませんでしたよ」
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私は林先の方を振り向いた。 林先はく頷くと、提げていたな革鞄をテーブルのにドンと置き、ファスナーをいた。
「支配。貴方が提されたその千万円の銭消費貸借契約……極めて興いですね」
林先は鞄のから、の印が押された分い取引履歴の類の束を取りし、京の弁護士たちの目のに広げた。
「実は私の方でも、貴方の個会社の座、および貴方個の座の資の流れを、徹底に洗わせていただきました」
の勝ち誇った笑みが、みるみるうちに凍りついていく。
「な……何を調べたというんだ!? 私の会社は、完全に真っ当な――」
「真っ当、ですか?」
林先は鋭いでを射抜いた。
「ではお聞きしますが、なぜ貴方の個会社の座には、このホテルの売から、毎のように『使途』として数百万円単位の現が定期に正送されているのですか? それも、過で累計千万円以も」
その言葉に、京の弁護士の顔が劇に変わった。
「……使途の正送? 支配、これは体どういうことですか!?」
若い方の弁護士が、子からを乗りして鋭く問い詰めた。 は脂汗をダラダラと流しながら、両を狂ったように振り回した。
「ば、馬鹿な! それはホテルの正当な経営コンサルタント費用、正当な業務委託費だ! こいつらは嘘をついている!」
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