"一万八千円の伝票" 第24話
だった。
は目のに置かれたその息を呑むほど美しい膳を見て、耐えられないように線を泳がせ、唇を噛み締めた。 彼女自、昨私にしたものが、どれほど残飯同然の卑劣な代物であったかを、痛烈に自覚させられていた。
「……召しがってください」
私の静かな声に、は微だにできなかった。 支配は俯いたまま、膝ので握りしめた拳を刻みに震わせている。
「昨、あなたが私にしたのは、たく濁った汁の、欠けた湯呑みの茶と、塩辛い粗末な事でした。そして、その対価として、平然と万千円を求しましたね」
私の言葉が、静寂に包まれたレストランに、言言く染み渡っていく。
「これが……私たちが、命を削って守り続けてきた『千百円』のみです。お客様からいただく代には、材の原価だけでなく、私たちの誠と、謝と、おもてなしののすべてが含まれているのですよ」
の肩が、激しく波打った。 彼もかつては、このをっていたはずだった。健の元で副支配として仕えていた頃、賄いとしてされたこの炊き込みご飯を、『本美いご飯です』と涙ぐみながら頬張っていた代が、彼にも確かにあったのだ。 いつから彼はそのを忘れ、のを捨て、帳簿の数字と私利私欲の者へと成り果ててしまったのか。
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「べられないのでしたら、結構です」
私は彼らからややかに線をした。
「おに用したのは、このお事だけではありません。……実はもう方、どうしても支配にお会いしたいという方を、ここへお呼びしております」
がビクッと顔をげた。その額には、びっしりとや汗が張り付いていた。 もう、すべての悪事は暴かれたはずだ。これ以、体何が残っているというのか――恐怖に引き攣るの瞳が、レストランの入りへと向けられた。
彼がつき続けてきた巨な嘘ので、まだつだけ、のに晒されていない真実があった。 彼が、なぜこれほどまでに狂ったようにを求め、ホテルの横領にを染め始めたのか――その「真の」だった。
レストランの簾をくぐり、の柄な初老の男性が、静かに姿を現した。 その顔を目にした瞬、支配の喉から、ヒッと引き裂かれるような絶望の鳴が漏れした。
レストランの入りに姿を現した柄な男性は、なグレーのスーツにを包み、古い革の鞄をに提げていた。 見すればどこにでもいる平凡な初老の紳士だったが、その双眸には、修羅をくぐり抜けてきた者特の、鋭く徹なが宿っていた。
「……お久しぶりですね、さん。いくらお話をしても向に連絡がつきませんでしたが……林先を通じてご連絡をいただき、こうしてを運ばせていただきましたよ」
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男性の静かな声が、張り詰めた内に凛と響き渡った。 支配は完全に腰を抜かし、子からずり落ちそうになるのを、テーブルにしがみついて必に堪えていた。 隣に座るが、怯えと苛ちの混じった声で叫んだ。
「ち、ちょっと支配! 誰なのよこのおじさん!? あなたのりい!?」
「黙れ……ッ! 黙っていろッ!」
は狂乱したように鳴り散らしたが、その声はずり、惨めに震えていた。
私は静かに歩み寄り、その男性に向かって々と礼した。
「方よりわざわざお越しいただき、より謝申しげます。伊藤様ですね」
「ええ、佐藤オーナー。……この度は、本当に何とお詫びを申しげてよいか……」
伊藤と呼ばれた男性は、私に向かって痛の面持ちでくをげた。 が眉を吊りげ、切り声をげる。
「だから誰なのよ! 訳のわからないこと言ってないで説しなさいよ!」
伊藤氏はゆっくりとの方を向き直ると、内ポケットから枚の名刺を取りし、テーブルのに滑らせた。 『株式会社キャピタル・アセット 代表取締役 伊藤 誠郎』
「都内で投資コンサルティング会社を経営しております、伊藤と申します」
伊藤氏は淡々と、だが々しい調で語り始めた。
「今から……さんは私の会社を介して、あるの未公株の案件に、極めて額の投資をされました。
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