"一万八千円の伝票" 第27話
の謝罪の言葉は、激しい慟哭のに掻き消えていった。
入りで見守っていた渡辺のおじいさんが、静かにをいた。
「私たちは……、のにあの先代のご主が注いでくれた、杯の温かいお茶のが忘れられなくて、ここへ戻ってまいりました。でも……あなた方は、私たちのかけがえのないいまで、のために踏みにじろうとした。……おでは決して買えないのというものを、あなた方は永に失ってしまわれたのですね」
その静かな宣告が、との胸に、最の止めを刺した。
彼らがに入れようとしたも、虚栄も、ブランド品も、すべては蜃気楼のように消えった。 元に残ったのは、取り返しのつかない罪のさと、底れない絶望のだけだった。
くから、ウーウーとけたたましいサイレンの音がづいてきた。 赤灯の禍々しいが、レストランの窓ガラスを赤く染めげながら、ホテルの正面玄関へと滑り込んできた。
正面玄関の自ドアがき、々しい音と共に、数名の制警察官とスーツ姿の刑事たちがレストランへと踏み込んできた。 内は静まり返り、誰も声をげる者はいなかった。
支配は子から崩れ落ち、に両をついたまま、微だにできなかった。その双眸からは完全にが消え失せ、焦点のわない虚ろな目で宙を見つめている。
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見栄と欲だけで塗り固められてきた男の、あまりにも惨めな崩壊の瞬だった。
刑事のが真っ直ぐに林弁護士の元へと歩み寄った。林先は静かに頷き、鞄から分い茶封筒を取りして渡した。
「事にご相談申しげていた件の、決定な証拠原本式になります。浩司によるきの裏帳簿、偽造された銭消費貸借契約、そして使途の正送記録のすべてです」
「確かに受け取りました。ご協力、謝いたします」
刑事は封筒を部の警官に渡すと、にへたり込むと、青ざめて震えるのに厳然とち塞がった。
「浩司さん、美保さんですね。業務横領および組織詐欺の容疑で、警察署までご同願います」
事務で、切のを交えない徹な通告だった。 がビクッと肩をねがらせ、消え入りそうな声で願するように呟いた。
「わ、私……私は本当に、支配に指示された通りに伝票を打っただけで……っ!」
だが、女性刑事のややかな線に射竦められ、その言い訳は喉の奥へと押し戻された。 は子から崩れ落ち、テーブルの端にく張った指先をわせながら、ガタガタと震えることしかできない。
「さあ、ってください」
警官に両脇を支えられ、支配は力なくちがろうとしたが、膝に力が入らず、何度もをもつれさせた。
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かつて仕ての良い級スーツをまとい、従業員や客を見して威張り散らしていた男の威厳は、完全に剥ぎ取られていた。その背は丸まり、酷くさく、みすぼらしいの初老の男に過ぎなかった。
はふと顔をげ、私の方へ掠れた線を向けた。
「オ……オーナー……」
許しを請おうとしたのか、それともき夫のノートについて何かを言いたかったのか。 だが、私は彼が言葉を紡ぐのを待たずに、静かに線を伏せた。
「……もう、あなたにかける言葉はありません。自らが犯した罪のさと、たい檻ので、で向きってください」
私の静かな言が、彼の息の根を完全に止めた。 はく首を垂れ、引きずられるようにして歩きした。
もまた、女性警官に促されてちがった。 彼女はテーブルの脇に置いてあった、に買ってもらったであろう級ブランドのバッグを掴もうとしたが、震えるからは滑り落ち、バッグは無惨にへと転がった。から派なのや化粧品が、絨毯のに散らばる。 かつてなら、誰かがすぐに駆け寄って拾いげてくれただろう。だが今、彼女を助けようとする者は、このにとしていなかった。
はに散らばった虚栄の残骸を呆然と見つめた、すべてを諦めたように、俯いてにへと連されていった。
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