"祖母は十二年年賀状を書いてない" 第4話
「都の悪いこと? お? ……男さん、恵子さん。よくそんな言葉が、そのからてきますね」
「な、なんですって……!?」 母が気ばんだ。
「淳子、お、その言い方は……」 叔父さんが慌てて妻の袖を引こうとしたが、叔母はそのをたく振り払った。
「私がいつ、母さんの名を騙っておを借りましたか? 私がいつ、母さんの財産を着しましたか? 通帳なら仏壇の引きしに全部ありますよ。円もをつけていません。記帳も毎してありますから、どうぞ今すぐ見にってください!」
叔母さんはちがらなかった。 座ったまま、しかし背筋をまっすぐに伸ばし、男伯父さんと母を真正面から見据えた。
「、母さんが内障を悪化させて、の震えもひどくなって、賀状が枚もけなくなった……私が最初に何と言ったか、覚えていますか?」
は言葉に詰まり、線を泳がせた。
「さんを通じて、男さんにも恵子さんにも連絡したんですよ。『お義母さんの目がだいぶ悪くなってきたから、度みんなで実に来て、今の活のことを話しってくれませんか』って。……そしたら、なんて返事が返ってきたといます?」
叔母さんの線が、母を射抜いた。
「『今は仕事が忙しいから無理』『いから頻繁にはけない』『くにんでるたちが見てくれるのが番自然だから、よろしく頼むね』……そう言ったんですよ、あなたたち」
広告
母の顔から、さっと血の気が引いた。
「母さんはプライドのいです。った姿を、くにいる子供たちに見せたくないって、泣きながら言ったんです。『京や横浜で頑張ってるあの子たちに、配をかけたくない。迷惑をかけたくない』って。だから私が、『じゃあ今はお義母さんが言う通りに、私が代わりにきましょうか』って言ったのが始まりですよ!」
「だ、だったら……」 男伯父さんが狼狽しながら、それでも威厳を保とうと声を荒らげた。
「だったら、その最初のだけでよかっただろう! なぜも、母さんに内緒でし続けたんだ! 母さんはさっき、『もうもいてない』って言ったんだぞ! 半は母さんの許すら取ってなかったんじゃないのか!?」
その言葉がた瞬、祖母がびくりと肩を揺らし、く首を垂れたのを、私は見逃さなかった。 だが、伯父さんも母も、目のの叔母を攻撃することに必で、実の母親のその仕にすら気づいていなかった。
淳子叔母さんは、男伯父さんを然と見つめ返した。 その瞳の奥にある絶望のさに、私は背筋が粟つのを覚えた。
「ええ、そうですよ」 叔母さんは、あっさりと認めた。
「半は、母さんには何も聞いていません。私が勝に買って、私がで同じ文面をいて、私がポストに入れました」
広告
「ほら見ろ! やっぱり勝に……」
「じゃあ聞きますけど!」
叔母さんの声が、初めて鋭く張り裂けた。 座敷の空気を切り裂くような、鳴にいだった。
「私がくのをやめたら、どうなっていたんですか!?」
伯父さんの言葉が喉で止まった。
「もしある、突然、崎の実から賀状が届かなくなったら……あなた方、どうしたんですか? 『あれ、今は届かないな、母さん丈夫かな』って、すぐに幹線に乗って様子を見に来てくれたんですか? 病院に連れてって、仕事を休んで、オムツを替えて、デイサービスの送り迎えをしてくれたんですか!?」
部のが、息を止めた。
「来やしないでしょう!?」
叔母さんの両が、畳をく叩いた。
「話本かけてきて、『淳子さん、今賀状届かないけど、母さんどうしたの? ちゃんと見てくれてる?』って、私を責めるだけで終わりだったはずよ! あなたたちが欲しかったのは、母さんの本当の姿じゃない。『元気にしています、配しないで』っていう、あのたったの免罪符だったんじゃないですか!」
「じゅ、淳子さん、言い過ぎよ……!」 母が青ざめた唇を震わせる。
「言い過ぎ? 何が言い過ぎですか。ですよ」
叔母さんの声が、再びく、恐ろしいほどの静寂を帯びた。 その線が、テーブルのの、のアルバムに向けられた。 私が、親孝のつもりで作った、あの分の葉たち。
「、あなた方は毎元旦に、あの葉を受け取っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
優しい教室で震える息子
息子が突然学校に行けなくなり、担任は「いじめなどなくクラス全員に愛されている」と胸を張った。不審に思った私が息子のランドセルを調べると、底板の裏から三十七枚の給食費受領書が出てくる。我が家は困窮などしていないのに、三ヶ月間、生徒全員が日替わりで息子の昼食代を立て替えていた。私が学校へ確かめに行こうとした瞬間、息子は「言わないで」と叫んで床に泣き崩れ、その紙片を必死に胸へ抱え込んだ。怒り|裡の顔|親子関係|金銭問題3.2万字5 0 -
完結第23話
母の職場で死んでいた私
母の定年退職をサプライズで祝うため、私は東京から新幹線に乗り宴会場へ駆けつけた。お祝いの品を手にして扉を開けた瞬間、母の同僚は手にしたグラスを取り落とし、顔を青ざめて後ずさりした。毎年盆と正月には実家へ顔を出し、仕送りも続けていたはずの私は、母が二十八年勤めた職場では十五年前に事故で亡くなった娘として扱われていた。ステージを駆け下りてきた母は私の手首を強く掴み、そのまま非常階段へと力任せに引きずり出した。親不孝|親子関係|退職金|修羅場3.5万字5 32 -
完結第23話
締め出された新社長
父から印刷会社を継ぎ、代表取締役として誰よりも早く出社した初日の朝、私のカードキーだけが赤く点滅して通用口が開かなかった。清掃員や入社三カ月の新人、配送トラックが次々と通過していく中、古参の会計は「先代の指示で権限を削除した」と告げる。社内では判断を下せる者がおらず、営業と現場の怒号が響き合い、輪転機が完全に停止した。私は閉ざされたガラス扉の脇にパイプ椅子を置き、冷たい缶コーヒーを握りしめた。職場逆転|人生逆転|怒り|親子関係|修羅場3.5万字5 51 -
完結第24話
妻の手術翌朝、七通の解約通知
妻が胆嚢ポリープの手術で入院した日、私は仕事を優先し「自分で処理しろ」と見舞いを断った。だが翌朝、私の携帯にマンションの駐車場、クレジットカード、父のデイサービスを含む七通の解約通知が立て続けに届く。カードは店頭で弾かれ、ビルのゲート前で立ち往生した私は、妻の報復を確信して病室のドアを乱暴に開けた。点滴に繋がれた妻は、今すぐ元に戻せと詰め寄る私の目の前で、スマートフォンの画面を静かに伏せた。怒り|夫婦|介護|修羅場3.7万字5 37 -
完結第25話
義母の合鍵が入らない
結婚五年目、情緒不安定を理由に義母に家の合鍵を預けさせられた。夫は母を庇い、私に我慢を重ねるよう笑って求めた。義母の無断侵入は続き、私の大切な机まで雨のベランダへ放り出されたが、私は一度も怒鳴らなかった。一ヶ月後、いつものように合鍵で入ろうとした義母の前に現れたのは、鍵穴すら存在しない最新の電子錠だった。激怒して電話をかけてきた義母に対し、今まで母に逆らったことのなかった夫が「僕が鍵を変えた」と告げた。嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場3.8万字5 123 -
完結第18話
ゴミ箱の隣に座る学年一位
学年1位を守り続けてきた娘が、二学期に入ると突然一番後ろの席に移動させられ、学級委員長も外された。何か処分を受けたのかと学校へ詰め寄る私に、娘は「この席でいいの」とだけ言い、何も説明しようとしない。納得できないまま迎えた参観日、教室の後ろに立つ私は、娘の隣にぽつんと置かれた空っぽの机に気づいた。誰の席なのかと問い詰める私に、担任は教室の隅を見つめ、「娘さんが残してくれと頼んできたんです」と静かに告げた。怒り|真実|孤獨|親子関係|修羅場2.8万字5 101 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 82 -
完結第21話
解雇された職人が未明に餡を練る
創業五十周年を控えた和菓子屋で働く私は、常連客の前で二十五年尽くした職人が店主に突然解雇される場に居合わせた。跡を継ぐため会社を辞めて戻った一人息子がいるものの、看板である漉し餡の技術はまだ誰にも継がれていない。店が立ち行かなくなると焦った私が翌朝四時に店へ駆け込むと、暗い厨房で追い出されたはずの職人が大鍋を振っていた。仕上がった餡を前に、朝一番に出勤した店主は無言で味見の木さじを口へ運んだ。裡切られた|親不孝|親子関係|修羅場3.2万字5 14 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2597