"昭和五十一年、消えた父の声を十八年後に聞いた" 第5話
昭という代を理由にすれば、族の嘘が許されるわけではない。しかし、誰かが名を消したあと、自分でを戻す方法がなかったことは確かだった。
報の区切りを静が読み違えたのも、偶然だけではなかった。彼女は孝と澄子が同じでったというの説を先に聞いていた。そのため《スミコカエセナイ》と自然に区切った。報を受け取る順番が、い文字列のを決めたのだ。奈津美は報原の複写へ、当の解釈と別の能性を並べて記した。
葉の跡は若く、文字の隔が定だった。差が千代本とは限らない。扱いになった女性が名を使った能性も、その娘や第者がいた能性もある。奈津美は葉を袋へ入れ、発見所と刻を記録した。父の事件を追ううち、自分に都のよい結論へを引っ張らないよう、資料館でにつけた順を守った。
の旧宅はダムの予定かられた台にあった。現は無で、れにむ親戚の静が鍵を預かっている。静は千代の妹で、姉は昭の砂崩れでくなったと話した。遺体は見つからず、同じ所で方になったと緒に届が認められた。千代には半の娘がいて、親戚が育てた。その娘が坂巻澄子だった。
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「姉は本当に砂崩れに巻き込まれたんですか」
静はすぐ答えなかった。千代は当、の青と結婚する約束をしていたが、相のが子どもを認めなかった。災害の数、千代は娘を妹へ預け、京で働くと言ってをた。その直に砂崩れが起き、族は千代も現へ戻っていたことにした。未婚で子を産んだ娘が町で暮らすより、んだことにして孫を親戚の子として育てるほうがよい、と父親が決めたという。
千代はきていた。数に度、差名のない現留が静へ届いた。澄子へ渡してほしいとだけかれ、所は転々としていた。昭の、初めて「翌のに迎えにく」とが来た。静は澄子へ見せなかった。ダムの移転をに族関係を乱したくなく、千代へも返事をさなかったという。
澄子は親戚の娘として育ち、自分のを歳でった。毛ラジオへ臨職員として入ったのは、母から届くかもしれない葉を探すためだった。父は事をり、番組の葉を捨てずに澄子へ見せていた。、千代の名を使った葉が届き、澄子は母が迎えに来ると信じて継を用した。父は葉を放送し、町に千代がきていることをらせようとしたのだろう。
「澄子さんは、いまどこにいますか」
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静は、昭のから連絡がないと答えた。失踪したのは父だけではなかった。局は澄子を《契約満で退職》と処理し、警察へ方届をしていない。親戚は千代が娘を連れていったとい、探さなかった。奈津美の父と澄子が緒に逃げたという噂は、ここからまれていた。
静は古い茶箪笥から通の報をした。の朝、郵便局から届いたものだ。《スミコ カエセナイ コウイチ》。族は「孝が澄子を返さない」と読み、の関係を疑った。しかし報の原では、語のに区切りはない。別の読み方もできる。
《スミコカエセ ナイコウイチ》
澄子を返せ。差は《内幸》という物だった能性がある。静はその名を見て、顔を変えた。千代の娘の父として族が隠してきた男は、当ダム事業を担当した県職員、内田幸だった。
県の資料には、ダム事業の完成を祝う写真集があった。内田は民代表と笑顔で握し、はマイクを持って式典を実況している。写真のでは移転を拒んだの交渉が続いていたが、冊子にはもない。奈津美は父の事件をってから、公式記録に嘘だけが載るとは考えなくなった。正しい式典の付と、実際に握した々を残しながら、写らなかった利害を隠すこともできる。
油所の老は、部座席の澄子が自分でドアをけようとした面も覚えていた。がから閉め、内田が何か説すると、澄子はを引いた。
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