みかん小説
本棚

"「この子は俺の子じゃない」" 第3話

「じゃあ……あのエコー写真は? あなたが嬉しそうに見せてくれた、戌の産祈願は? 私たちは……私たちは、何をお祝いしていたの……?!」

義母の線が、に転がるシリコンの塊と、私の平らな腹を何度もき来する。 裏切られたりというよりは、怪異にくわしたような、純粋な恐怖の表だった。

私は毎朝、誰よりもく起きて洗面所の鍵を閉め、このたいゴムの塊を腰に巻きつけてきた。

始まりは、ほんのしの同と、拭いきれない絶望だった。

。 私たちは妊治療の暗いトンネルのにいた。 排卵誘発剤の副作用で吐き気に耐え、毎のようにたい診察台にがり、を広げ、械の挿入される痛みに耐えた。 それでも理が来るたびに、トイレので声を殺して泣いた。

健太は優しかった。 「もうやめようか。だけでも、楽しくきていけるよ」 そう言って私の肩を抱いてくれた。

だが、その優しさが、かえって私を追い詰めた。 義理の実に帰省するたび、親戚の子供を抱く健太のぎこちない笑顔を見るたび、私の胸の奥で黒い澱のようなものが溜まっていった。

私は、女として欠陥品なのだ。 誰もそんなことは言わなかった。母も、義母も、健太さえも。 だが、世のすべての差しが、私にそう告げているようにじていた。

広告

そんなだった。 妹の葵が、私のに転がり込んできたのは。

葵は私より歳若く、定職にも就かず、方のバーやを転々としていた。 泣き腫らした目で私の部に座り込み、差ししてきたのは、くっきりと本の陽性ラインがた妊娠検査薬だった。

は、葵が半ほど同棲していたの男だった。 妊娠を告げた翌、男は部の荷物をすべて引き払って姿を消した。話も解約されていた。

「お姉ちゃん、どうしよう……」 葵は私の膝に顔を埋めて震えていた。 「産めないよ。おもないし、仕事もクビになったし……お母さんにられたら殺される。でも……もう週なんだって。病院の先に、術するならもうがないって言われたの……」

その、私ので何かが弾けたのだ。

週。 赤ん坊の形が、すでにエコーのがっている期。

私が何百万ものを注ぎ込み、何千本もの注射を打ち、それでもに入らなかった「命」が、無責任な男と逃げた妹の腹のに、あっさりと宿っていた。

激しい嫉妬。 そして、その嫉妬の裏から鎌首をもたげてきたのは、狂気のような閃きだった。

『私が、育てる』

あの夜、私は葵のえ切ったを握りしめながら、確かにそう言ったのだ。

「葵、堕ろすことなんてない。産みなさい。その子は、私が引き取るから」

葵は驚いて顔をげた。

広告

「え……? でも、どうやって……」

「特別養子縁組がある。私たちの子供として育てればいい。健太も納得させる。戸籍のでも、法のでも、絶対にその子を幸にはしない」

「でも、お父さんたちには……親戚にはなんて言うの? 私、恥ずかしくて元にいられないよ……」

泣きじゃくる妹を見て、私はさらに踏み込んだ。 踏み込んではいけない線を、いとも簡単に越えてしまった。

「言わなければいいのよ」 私の声は、あの、驚くほど澄んでいた。 「私が産んだことにするの。誰にも言わなければ、最初から私たちの子供だったことになる。葵、あなたは京のいのところで半、静かに暮らしていればいい。活費も、産費用も、全部私がすから」

最初は呆然としていた葵も、逃げのない現実に押し流されるようにして頷いた。

健太は猛反対した。 「狂ってる! そんな嘘、絶対に突き通せるわけがない!」 夜通し鳴りい、健太は何度もこうとした。

だが、私は座したのだ。 健太の首にしがみつき、額をに擦り付けながら泣き叫んだ。

「お願い、健太! のお願いだから! 私を母親にして! このまま子供が持てないまま、惨めにを取っていく私を見殺しにするの?! 葵を助けるためでもあるのよ! 誰にも迷惑はかけない、誰も傷つかないじゃない!」

私の異様な執着に、健太は恐怖を覚えたのだとう。

そして最には、壊れかけていく妻を見捨てられず、共犯の契約を結んでしまった。

それからのは、神経が擦り切れるような々の連続だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: