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"「この子は俺の子じゃない」" 第4話

ネットの裏ルートで注文した、さの異なる種類のシリコン製偽腹。 妊娠初期、期、期にわせてサイズを変え、着でガチガチに固定した。 母が「お腹を触らせて」とを伸ばしてきたは、「まだ定だから、触られると気持ち悪くなるの」とたく払いのけた。 義母が持ってきたマタニティウェアに袖を通し、会社の同僚たちから「おめでとう、体事にしてね」と祝福されながら、産休業の続き類に判を押した。

腹ののゴムは、には猛烈に蒸れ、皮膚を赤くただれさせた。 だが、その痛みさえも、私にとっては「母親になるための儀式」のようにえていたのだ。

葵は臨に入る直、私の配したこの方の個産婦科に入院した。 院には、複雑な事がある未婚の妹を姉夫婦がく支援している、という体裁を取り繕い、個を押さえた。 計画では、葵が産した、退院のタイミングで「姉の私が里帰り先で急遽産した」という筋きにして、双方の親に引きわせるはずだった。

だが、葵の陣痛は予定よりく、突然始まった。

朝、葵から震える声で「陣痛が来た」と連絡が入った、親たちへの根回しはまだ完していなかった。 私が病院に駆けつけ、取り乱す両親と義両親には「破したから病院に向かう」

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と嘘の連絡を入れた。 そして健太に命じたのだ。

『親たちが病院に来ても、絶対に部に入れるな。産が終わるまで、ロビーで待たせておけ』と。

そして健太は、待たせた。 もの、嘘と罪悪の檻のに閉じ込められ、で両親たちの無邪気な祝福に晒され続けたのだ。

「……もう、終わりにしよう」

健太の声で、私は現実の廊に引き戻された。

元には、無残に転がったシリコンの腹。 義母は過呼吸のように胸元をかきむしり、私の母はをついたまま、幽霊のように私を見げている。

「紗枝……あなた、本当に……自分の産んだ子じゃないの……?」 母の震える唇から、血の気が完全に消えていた。 「じゃあ……あの分娩で……誰が……誰が産んでいるの……?」

その問いに、私は答えることができなかった。

喉が完全に塞がっていた。 爪を掌にい込ませ、血が滲むほど握りしめても、声がない。 認めてしまえば、私ののすべてが、このになって消えてしまうからだ。

そのだった。

カチャリ、と静かな子音が響いた。

私たちの背で、分娩の自ドアが再びゆっくりとスライドした。

現れたのは、術着を着た助産師だった。 その腕には、透なアクリルケースが抱えられていた。 真っなおくるみに包まれた、さな、赤黒い顔をしたき物。 まだこの世の空気に慣れていないさな肺を震わせ、か細い、だが力い産声を廊に響かせている。

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助産師は廊の異様な空気にを止めたが、元のカルテに目を落とすと、事務で朗らかな、よく通る声でこう言った。

「お待たせいたしました――梨葵(たかなし あおい)さんのご族の方」

が止まった。

助産師は、私の母の顔を見つめ、それから私の顔を見つめた。

「母子ともに、無事ですよ。元気な男の子です」

梨、葵。

その名が、い壁に反響した。

母が、弾かれたように顔をげた。 「……葵……?」

義母が、恐ろしいものを見る目で私を睨みつけた。 「葵さんって……あなたの、妹さん……?」

助産師のろのいた扉の奥、暗いリカバリールームのベッドのに、点滴を打たれ、青い顔で横たわっているの若い女性の姿が、はっきりと見えていた。

葵だった。

葵は、いたドアの隙から、廊つ私たちを見ていた。 その瞳は、恐怖と、悔と、そしてまれたばかりのが子を探す激しい執着に揺れていた。

逃げは、もうどこにもなかった。

面談の空気は、湿った氷のようにく、たかった。

病院の配慮で通された階の奥にあるには、円形のテーブルと、簡素なパイプ子が脚並んでいた。 窓のブラインドは固くろされ、蛍灯の青だけが、私たちの青ざめた顔を容赦なく照らししている。

テーブルの央には、つの物が置かれていた。

つは、先ほどまで私の腹に張り付いていた、汚れた肌のシリコン製の偽腹。

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