"「この子は俺の子じゃない」" 第11話
鍵穴に鍵を差し込むと、カチャリと鈍い音がしてドアがいた。
部のは、酷く静まり返っていた。
カーテンが閉め切られた畳のワンルーム。 埃っぽい空気のに、葵が使っている物の柔剤の匂いが微かに漂っていた。
私は靴を脱ぎ、部のに踏み込んだ。
証拠を探すために。 督促状はどこだ。散乱したゴミはどこだ。 だが――
部は、驚くほど片付いていた。
さな流し台には、洗われたコップと皿がつずつ、切りカゴに綺麗に伏せられていた。 物のローテーブルのには、埃つない。 部の隅には、ゴミ袋がを固く縛られて置かれていた。
「……何よ、これ」
荒れ果てた部を期待していた私の胸に、苦い苛ちが広がった。 芝居だ。退院したに私がチェックすることを見越して、綺麗に片付けたに違いない。
私は部のを荒らし始めた。 クローゼットをけ、装ケースを引きし、類の束を探す。
テレビ台の引きしをけた、奥の方に、冊の学ノートが押し込まれているのが見えた。 何の変哲もない、百円均で売られているような、紺の表のB5ノート。
表をめくると、最初のページには、のの付が記されていた。
葵の字だった。
『』
その付を見た瞬、私の指先が止まった。 葵が私のに泣きついてきた、まさにそのの付だった。
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私はノートをテーブルのに置き、震えるでページをめくった。
『お姉ちゃんのにった。妊娠検査薬を見せたら、お姉ちゃんは瞬、すごく怖い顔をした。 見たこともないような、真っ黒な目だった。 でも次の瞬には笑って、「私が育てる」って言ってくれた。 助かったとった。獄から救われたとった。 お姉ちゃんは神様みたいに見えた』
ページをめくる。
『』 『アパートを決めてもらった。お姉ちゃんが全部おをしてくれた。 「葵は何もしなくていいから、体だけ事にしなさい」って言われた。 ありがたいのに、なんだか息が苦しい。 お姉ちゃんは毎話してくる。「何をべた?」「体は?」「ちゃんとサプリんだ?」。 話を切った、いつも吐き気がする』
『』 『お姉ちゃんがアパートに来た。 ネットで買ったっていう、シリコンのお腹を着けて見せてくれた。 「どう? 自然に見えるでしょう?」って笑ってた。 鏡ので、自分の偽物のお腹を撫でながら、何分もうっとり眺めてた。 私のお腹はまだししか膨らんでないのに、お姉ちゃんのお腹はもう臨みたいだった。 怖かった。 本当のお母さんはお姉ちゃんで、私はただの器なんじゃないかってえて、寒気が止まらなかった』
「……な……」
私の喉から、引き裂かれたような音が漏れた。
違う。 私は、葵をさせようと……私たちが本気でこの子を迎える準備をしていると見せるために……!
震える指で、さらにページをめくる。
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面には、所々、滴が落ちて乾いたような染みが残っていた。葵の涙の跡だった。
『』 『今、初めてお腹のでポコポコっていた。胎だ。 すごく嬉しくて、涙がた。 でも、そのあとでお姉ちゃんからLINEが来た。 「葵、お腹の赤ちゃんの画送って。健太に見せるから」。 送れなかった。 この子は、私のお腹のにいるのに。 私の血を吸ってきくなっているのに。 お姉ちゃんに「画を送れ」って言われるたびに、私の子宮が削り取られていくみたいだ。 健太さんにメッセージを送った。「やっぱり放したくない」って。 健太さんは「葵ちゃんの気持ちが番事だ。俺から紗枝に話す」って言ってくれた。 でも、お姉ちゃんには言えない。 お姉ちゃん、会社休んで産休の続き取ったって嬉しそうに言ってた。 「もう戻りできないからね」って、話で笑ってた。 あの声が、毎晩にてくる。 助けて。誰か助けて。 私、悪魔に子供を売っちゃったの?』
「違うッ!!」
私はノートをに叩きつけた。
激しい呼吸が、狭い部を満たした。 臓が破裂しそうだった。
悪魔? 誰が悪魔だというのだ。 をしたのは私だ。む所を与えたのも私だ。 男に捨てられてに迷っていたおを拾いげてやったのは、誰だとっている?! それを……悪魔?!
「恩らずが……! 全部、私のできてたくせに……!」
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