みかん小説
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"「この子は俺の子じゃない」" 第14話

ノックを回。

「……はい」

から聞こえたのは、母の掠れた声だった。

ドアをゆっくりと押しけた。

の窓からは柔らかな朝のが差し込んでいた。 ベッドのに、葵が体を起こして座っていた。 顔はまだ青かったが、のようなのような気配は消えていた。 その腕のには、さないおくるみが抱かれていた。 ベッドの脇のパイプ子には母が座り、さな哺乳瓶をガーゼで拭っているところだった。

私が部に入った瞬、母のがぴたりと止まった。 母の顔に、サッと緊張がる。 葵は、抱いていた赤ん坊を守るように、わずかに体を引いた。

その拒絶の仕が、私の胸を鋭く抉った。 当然だ。私はあの子から、この腕のの命を奪おうとしたなのだから。

「……紗枝」 母がく、警戒を解かない声で言った。 「何の用だい。健太さんから聞いてないのかい? 今、退院の続きをするから、あんたは来るなって――」

「お母さん」

私は母の言葉を遮った。 そして、部央へると、持っていたトートバッグから束の類を取りした。

葵がかされた『親権放棄および特別養子縁組に関する事』。 私が勝に作成した、葵名義の委任状。 そして、病院宛てに提するはずだった、偽りの産証の申請き。

私はそれらの類を、葵と母の目ののオーバーテーブルに置いた。

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が息を呑むのが分かった。 葵の指が、おくるみの端をぎゅっと握りしめる。

「……それ、何……?」 葵の震える声。

私は何も言わず、類の束を両で掴んだ。 そして、力を込めて――真っつに引き裂いた。

ビリッ、と。 が千切れる音が、静かな病に乾いて響いた。

もう度、字にねて、引き裂く。 つに破片となった類を、私はテーブルの端にあるゴミ箱のに、静かに落とした。

「紗枝……?」 母が目を見いていた。

私は歩、退した。 そして、に両膝をついた。 両を腿のに揃え、く、げた。 額が、たいフローリングに触れた。

「葵。お母さん」

に向かって、言葉を絞りした。 喉の奥が引き攣れて、声が震えた。

「本当に……申し訳ありませんでした」

沈黙が部を満たした。 エアコンの微かな送音だけが聞こえていた。

「私は……自分のことしか考えていませんでした。子供ができない惨めさから逃げたくて、世に認められたくて、葵のみにつけ込みました。『助けてあげる』なんて綺麗な言葉で自分を飾りてて……やってたことは、ただの脅迫でした。葵の体も、も、この子の未来も……全部、自分の都のいいように踏みにじろうとしました」

涙がにポタポタと落ちて、黒い染みを作っていった。

「私が違っていました。本当に、ごめんなさい……!」

額をに擦り付けながら、私は肩を震わせて泣いた。

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許してほしいとはわなかった。 こんな座ひとつで、の恐怖や、母が受けた恥辱が消えるはずがない。 それでも、このげなければ、私は、あのシリコンの偽腹を巻いた化け物のままきていくことになる。それだけは分かっていた。

どれくらいのが経っただろうか。

擦れの音がして、ベッドのから葵の声がってきた。

「……を、げて」

その声には、りも、怯えも含まれていなかった。 ただ、ひどく疲れた、静かな響きがあった。

私はゆっくりと顔をげた。 界が涙で滲んでいた。

葵は私を見つめていた。 その目は、かつての頼りない妹の目ではなかった。 母親の目だった。

「お姉ちゃん」 葵はさく息を吐いた。 「私ね……お姉ちゃんを許すことは、たぶんできないとう」

刃物のような言葉だった。 だが、議とにすとんと落ちた。

「あの……毎晩、お姉ちゃんからのLINEの通音が鳴るたびに、臓が止まるほど怖かった。『今何キロ?』『ちゃんとべてる?』って聞かれるたびに、私の子宮ごと監されてるみたいで、気が狂いそうだった。……だから、許せないよ。お姉ちゃんがどんなに泣いて謝っても、あの恐怖は消えない」

「……うん」 私は唇を噛みしめ、頷いた。

「でも」 葵は線を落とし、腕のさな命を見つめた。 赤ん坊は、さな唇をもごもごとかしながら、無に眠っていた。

「おしてくれたのは、本当だった。

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