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"「この子は俺の子じゃない」" 第15話

病院を配して、賃を払って、私がに迷わないようにしてくれたのは、お姉ちゃんだった。……もしお姉ちゃんが『産め』って言ってくれなかったら、私、あの適当な病院で絶して、男をみながら、今頃もっとボロボロになってたとう」

葵の瞳から、筋の涙がこぼれ落ちた。

「お姉ちゃんのやり方は狂ってたよ。でも……この子に会わせてくれたきっかけを作ったのは、お姉ちゃんなんだよね」

葵はおくるみをそっとき、赤ん坊のさな顔を私に見せた。 赤黒く、まだ皮膚のい、頼りないほどさな顔。 だが、その胸は確かにし、自分の力で息を吸い、吐いていた。

「この子の名、決めたよ」 葵が言った。

私は息を呑んだ。

「……『悠(はるき)』にした」

胸の奥が、激しく締め付けられた。

『悠』という字。 それは、、まだすべてが偽りの狂のにあった頃、私が健太とリビングで名付け辞典をめくりながら、「男の子なら、のびのびときてほしいから、この字がいいな」と葵にLINEで送った字だった。

「……どうして」 私の声が震えた。 「どうして……私の言った字を……」

「お姉ちゃんへの謝じゃないよ」 葵はきっぱりと言った。 「ただ……この子がきくなったに、嘘をつきたくないから。『あなたには、あなたを狂おしいほど欲しがって、愚かな違いを犯すほどそうとしてくれた叔母さんがいたんだよ』って、いつか話せるように。

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私の戒めとして、この字をもらったの」

葵は私から線をした。 それは、「これ以の会話は望まない」という確な境界線だった。

母ががり、私と葵のに割って入るようにった。 母の顔は、厳しく引き締まっていた。

「紗枝。あんたの謝罪は聞いたよ。……でもね、族の縁がこれで元通りになるなんてわないでおくれ」

「……お母さん」

「私は葵と緒に、実へ戻るよ。この子を育てる伝いをする。所のになんて言われようと、親戚にろ指を指されようと、私がこの子と葵を守る。……あんたのは、もう借りないよ」

母の言葉は、徹だった。 だが、その背には、かつて見たことがないほどのさと覚悟が宿っていた。 私が「救ってやる」と傲がっていた妹を、母は本当ので背負おうとしていた。

「さあ、おき」 母は私に背を向けた。 「あんたには、あんたが片付けなきゃいけない現実が、ほどあるはずだよ」

私はげた。 についた両を握りしめ、がった。

ベッドのの悠は、度も泣かなかった。 ただ、微かにさなくしゃみをした。 そのさな命の温もりを、私は度と抱くことはないのだと、魂の底で理解した。

、私はドアノブにをかけ、振り返らずに言った。

届……葵の名で、ちゃんとしてね。健太が、ロビーで待ってるから」

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返事はなかった。 だが、静かにをすする母の気配が、ドアの向こうから聞こえていた。

病院をた私は、そのに乗り、都にある勤務先へ向かった。

。 オフィスの入る層ビルのエントランスをくぐる。 普段なら社員証をタッチして颯爽と通り抜けるゲートが、まるで断台の入りのように見えた。

エレベーターで総務事部のあるフロアへ直した。 アポイントは取っていなかった。 受付で「緊急で事部にお会いしたい」と告げると、受付の女性は私の顔を見て、パッと表るくした。

「あれ?! 梨さん! 産休に入られたばかりじゃ……ご産されたんですか?!」

「……個な、なご報告があってお伺いしました」

私のい表に、受付の女性は審そうに目を瞬かせ、内線話を取った。

、私はさな会議に通された。 向かいって座ったのは、髪交じりの事部と、女性の労務担当課だった。 には、私が提したばかりの『退職届』と、枚の陳述が置かれていた。

梨さん……これは、どういうことですか?」 事部が眉をひそめ、類に目を落とした。 「産休業の申請を取り消し……即退職? 理由が『の都』では、あまりに唐突すぎます。会社としても、優秀なあなたには復職してキャリアを続けてほしいと考えていたのですが……」

私は背筋を伸ばし、両を膝ので揃えた。 逃げを作らないように、事で何百回も組みてた言葉を、淀みなくにした。

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