みかん小説
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"「この子は俺の子じゃない」" 第17話

……俺も、おを止められなかった罰を受けなきゃいけない。だから、別居だ。お互いに、やすが必だ」

「健太……私……」

「紗枝」 健太は私の言葉を優しく、だが断固として遮った。 「俺たち、ずっと『子供ができない夫婦』という枠のでしかきてこなかったな。 子供ができないから幸なんだ、子供さえできれば幸せになれるんだって……で自分たちを呪い続けてきた」

健太のきなが、私の肩に触れた。 かつてのように抱きしめるためではなく、距を測るように、そっと置かれただけだった。

「もう、呪うのはやめよう。 俺たちは、最初から違ってたんだ。子供がいないを受け入れる勇気がなかったんだよ」

健太のれた。 スーツケースの輪が、を転がるい音が響いた。

「鍵はポストに入れておく。……体、事にしろよ。本当にお、このでボロボロになったんだから」

バタン。

ドアが閉まった。 今度こそ、本当に部きりになった。

には、夕暮れの赤黒いが満ちていた。 私は靴を履いたまま、リビングの奥の子供部へ歩いていった。

然と並んだ、真っ具。 度も使われなかったベビーベッド。 井でもないのに微かに揺れている、のモビール。

私はクローゼットをけた。 の段の奥から、黒いきなゴミ袋を取りした。

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に入っていたのは、あのシリコン製の偽腹だった。 病院の面談で健太がに投げ捨て、私が拾い集めて持ち帰ってきた、キログラムのたい肉塊。

私はそれを両で持ちげた。 ずしりとい。 、私の腹を圧迫し、皮膚を赤くただれさせ、私に「母親」という甘美な覚を見せ続けた塊。

「……さようなら」

私はそれを、指定の燃ゴミの袋のに押し込んだ。 ベリベリと、マジックテープが虚しく擦れる音がした。

それから、私は狂ったように子供部の解体を始めた。

段ボール箱を組みて、引きしのの肌着を放り込んだ。 度も赤ん坊の肌に触れることのなかった、真っ肌着、コンビ肌着、さな靴ミルクの缶、ガラスの哺乳瓶、オムツのパック。 すべてを箱に詰め、ガムテープで封をした。 送り先は、ネットで調べた乳児院と孤児支援のNPO法だった。 私の歪んだ欲望の残骸を、せめて見らぬ誰かの役にてるために。

ベビーベッドのネジを、角レンチで本ずつしていく。 ギギギ、と属が軋む音が、静かな部に響く。 の板が枚ずつ解体され、ただの平らな材へと戻っていく。

のネジをした、部は完全に空っぽになった。

そこには、ただ角い、何の変哲もない畳の空が広がっているだけだった。

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フェルトのモビールだけが、ぽつんと井からぶらがっていた。

私はした材のに、へたり込んだ。

のひらが、ネジの油と埃で黒く汚れていた。 全の筋肉が痙攣するように震え、疲労が津波のように押し寄せてきた。

腹部が、ズキリと痛んだ。

理の痛みだった。 皮肉なことに、偽腹をし、極度の緊張と恐怖から解放された私の体は、きっかり遅れで、何事もなかったかのように血を流し始めていた。

「……あ……」

声が漏れた。

私は空っぽになったに突っ伏した。 両で自分の平らな腹部を抱え込み、丸まった。

涙が、止まらなかった。 もう、嘘をつく必はなかった。 誰かに見せるための演技も、妹への嫉妬も、夫への脅迫も、世体への恐怖も、ここには何つなかった。

ただ、ひとつの酷な事実だけが残されていた。

私は、子供を産むことができなかった。 どんなに祈っても、どんなにを積んでも、どんなにの命を奪おうとしても、私のこの体からは、しい命はまれてこないのだ。

「うああああああっ……!」

私は子供のように声をげて泣いた。 たいフローリングに顔を押し付け、声を枯らし、胸をかきむしりながら泣き叫んだ。

、ずっと喉の奥に押し込んできた本当の鳴だった。 妊治療の痛みに耐えながら「私は平気」と笑ったの涙。

健太に「でも楽しいよ」と言われて、「そうだね」と嘘をついたの涙。 妊娠した友の報告を聞いて、笑顔で「おめでとう」

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