"父の葬儀を捨てた夫へ、亡き父が遺した最後の証拠" 第9話
「美央……頼むよ! 悪かった! 俺が悪かった! リサとは今すぐ別れる! 会社のことだって、おが嫌なら担保には入れない! だから、婚だけは勘弁してくれ……! 頼む、やり直そう!」
に額を擦り付け、見苦しく涙を流す夫。
美央はその背を見ろしながら、昨夜、午の暗ので受け取った父のの言葉を噛みしめていた。
『これは、おが自分のを自分で決めるために必なものだ』
父は、この男を懲らしめるために恵を絞ったのではない。娘が度とこの男の欺瞞に縛られず、誇りくを向いてきられるように、厳な真実の武器を遺してくれたのだ。
「健太郎さん」
美央の声は、驚くほど静かで、凛としていた。
「私は、あなたを許すことも、やり直すこともありません。あなたの荷物は、までにすべてリサさんのマンションへ着払いで送ります。度と私のに姿を見せないで」
健太郎が着の着のままでを追いされたそのの夕刻、法律事務所の相談には、もうの当事者が呼びされていた。
リサ、歳。
ブランド物のトレンチコートにを包み、ぶりのサングラスをしたその顔には、隠しきれない苛ちと焦燥が張り付いていた。テーブルを挟んで対面には美央と弁護士、そして背には記の事務員が控えている。
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「佐伯さんの奥様ですよね。いきなり弁護士から内容証を会社に送りつけるなんて、どういう嫌がらせですか? 私、健太郎さんとは純粋な仕事のパートナーとしてお付きいしていただけですけど」
リサは組んだ脚を刻みに揺らし、勝ち誇ったような笑を浮かべてみせた。
「健太郎さんから聞いてますよ。夫婦仲はとっくにえ切っていて、庭内別居同然だったって。奥様が全然理解してくれないから、彼が精神に追い詰められて私のところに相談に来ていただけです。慰謝料なんて払う筋いはありません」
弁護士がく息を吐き、机のに分いファイルを置いた。
「リサさん。あなたがそのように居直ることは、百も承でここへお呼びしました」
はファイルをめくり、枚の領収との送履歴をリサの先へ突きつけた。
「あなたが現おまいの世田のマンション、敷・礼および過ヶ分の賃計百万円は、どこから支払われていたかごですね?」
リサの眉がぴくりとねた。
「……健太郎さんが、会社の経費で福利として契約してくれた部です」
「いいえ。契約名義は株式会社スタジオ・ケンですが、その原資は、健太郎氏が美央氏の承諾なく夫婦共座から私に引きした使途、ならびに取引先からの架空請求を偽造して横領した資です。
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すでにスタジオ・ケンの監査役および主株主に対し、業務横領の調査報告を提する準備がっております」
リサの顔から、さっと血の気が引いていった。
「お、横領……?」
「それだけではありません」は老鏡の奥の目を細めた。「あなたが勤務する広告代理のコンプライアンス委員会に対し、取引先役員との適切な銭授受および背任為への関与について、午をもって正式な事実確認請求を送付いたします。あなたの署名が入った級貴属の受領証も、すべて証拠として保全済みです」
リサの組んでいた脚が解け、のでガタガタと震え始めた。
「ま、待ってください……! 私、そんなが横領のだなんてらなかったんです! 健太郎さんが『妻の父親が持ちで、遺産が何億も入るから何でも好きなものを買ってやる』って言うから……!」
醜悪な本音が、呆気なくそのから零れ落ちた。
美央は静かに線を向け、ややかに告げた。
「父の遺産は、円たりともあなたたちのには渡りません。あなたが健太郎さんから受け取ったプレゼントや賃の原資は、すべて法為に基づく当利得として返還請求をいます。慰謝料百万円の支払いに今すぐサインするか、それとも、会社を解雇されて法廷で争うか。
選びなさい」
リサは唇を噛み締め、悔し涙をポロポロとテーブルのに落とした。
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