みかん小説
本棚

"愛人の妊娠を信じた夫と15年前の無精子症診断書" 第14話

ナナは私を睨みつけた。

「みかちゃんはこれからこのしいママになるなんだから」

その言葉を聞いて、美は勝ち誇ったような笑いを浮かべた。

20歳の彼女にとって、45歳の私はただのれな追いされるおばさんにしか見えていないのだろう。

は堂々と名乗った。

「初めまして。鈴です」

は私を見すように微笑んだ。

「健さんからゆみさんのことはよく伺っています」

げた。

「今まで健さんのお世話をしてくださってありがとうございました」

まるで自分がすでに正妻であるかのような堂々とした挨拶だった。

私はりよりも先に、この若い女性の無と図々しさに呆れ果ててしまった。

庭を壊しておきながら、悪びれるどころか謝の言葉をにする。

彼女もまた、健と同じように自分の欲望しか見えていないなのだ。

私は丁寧に答えた。

「わざわざご挨拶痛み入ります」

私はキッチンへ向かいながら尋ねた。

「お茶を入れ直しますね。美さんも温かい緑茶でよろしいですか?」

私がそう尋ねると、美し顔をしかめて言った。

「あ、私いお茶はちょっと苦で」

は注文をつけた。

「もしあればたいアイスコーヒーをお願いできますか?ガムシロたっぷりで」

その言葉に、私は微かな違を覚えた。

広告

妊娠初期の女性は、カフェインの摂取を控えるのがだ。

もちろん絶対にんではいけないわけではない。

だが、彼女のぶりからは、お腹の子供を気遣う様子が微じられなかった。

弁護士のが言っていた「妊娠をでっちげるケース」という言葉が、の片隅をかすめる。

私は静かに頷いた。

「アイスコーヒーですね」

私はキッチンへと向かった。

グラスに氷を入れる音に紛れて、リビングからは再び義母たちの楽しげな会話が聞こえてくる。

義母は楽しそうに話しかけた。

「美さん、男の子を産んでちょうだいね。佐藤派な跡取りを」

義母の声がきくなる。

「あの女は15もいて、結局自分の子供を1も産めなかった役たずだから」

義母の言葉は、私のをかつて何度も切り裂いてきた鋭い刃だった。

妊治療の末に子供を授かることができず、私がどれだけ毎晩1で泣いていたか。

つ当たりされ、義母に欠陥品と呼ばれ、それでもナナを実の娘としてそうと必だった。

しかし義母にとって私は、ただの跡取りを産むための具だった。

それができなかった点で、価値のないだったのだ。

の無邪気な声がリビングに響き渡る。

「はい。お義母様、私絶対に元気な男の子を産んでみせます」

るく言った。

広告

「健さんの財産は、私が産むちゃんとナナちゃんで半分こですね」

は笑いながら付け加えた。

「ゆみさんにはしだけ退職代わりにおを渡してあげればいいですよね」

の財産を、まるで自分のおもちゃのように分けう算段をしている。

こののローンの半分を私が払い、健の浪費のせいで貯などほとんどないことなど、彼女は何もらないのだ。

義母もまた、見栄を張るばかりで、息子の本当の経済状況を全く理解していない。

義母はきっぱりと言い放った。

「当然よ、このの財産は全て佐藤の血を引くが受け継ぐべきなの」

義母は酷に言った。

「あの女には1円たりとも渡す必なんてないわ」

義母の酷な言葉を、私のポケットのスマートフォンが正確に記録していく。

私はたいアイスコーヒーとしい緑茶をお盆に乗せた。

再びリビングへと戻った。

「お待たせいたしました」

静かにグラスを置く私を見ろしながら、美はストローをくわえる。

しそうにたいコーヒーをみ干した。

その姿を観察しながら、私は彼女の装に目を向けた。

タイトなミニスカートに、いヒールのパンプス。

妊娠していると主張する女性の装としては、あまりにも無防備で自然だった。

私ので、彼女の妊娠に対する疑がさらにきく膨らんでいく。

もしこの妊娠が、夫と別れさせるための狂言だとしたら。

あるいは、お腹にいる子供の父親が健ではない別の誰かだとしたら。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: