"教室の最後列に座る元教員" 第14話
「誰が……誰があんたに助けてくれって頼んだよ……!」
健君の声が、掠れ、裏返る。
「何が『してください』だ……! 何が『過ちを繰り返させない』だ! あんたは結局、昔も今も、自分のことしか見えてねえんだよ!」
「健君、私は……私はあなたと悠君を信じているから……」
「信じる!?」
健君は狂ったように笑った。泣きながら、をすすり、歪んだ元で嘲笑った。
「あんたが信じてるのは、俺たち親子じゃねえ! 『あの子が無実であってほしい』っていう、あんた自の都のいい願望だろうがッ!」
彼は濡れた作業着の内ポケットに、震えるを突っ込んだ。
バリバリと荒々しくチャックを引き裂く音が響いた。
引きずりされたのは、油で汚れたジッパー付きの透なビニール袋だった。
健君はそれを、机のに叩きつけた。
机のにぶちまけられたのは、くしゃくしゃになった万円札が枚と、千円札が枚。
と指紋で汚れた、計万千円の現だった。
そして、その幣ののから、破れた学ノートの切れ端が滑り落ちた。
そこには、消しゴムで何度も擦って黒ずんだ、震えるような乱暴な文字が並んでいた。
『ごめんなさい は返します 俺がやりました 悠』
私の界が、ぐらりと回転した。
元のが抜け落ちたような錯覚に襲われ、膝から力が抜けた。
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「……え?」
私の喉から、抜けな空気の抜ける音が漏れた。
万千円。
破れたノートの文字。
『俺がやりました』。
藤教諭も、教も、息を呑んでその幣とメモを凝していた。
「健……君……これ、は……」
「悠がやったんだよ!」
健君が、指導の井に向けて絶叫した。
「あいつが……あいつがやったんだよ! 先週からの良グループに脅されて、バイクの弁償代万せって言われてたんだ! 俺に言えなくて……がねえ俺をこれ以困らせたくなくて……あいつ、文化祭の準備委員だったから、準備の庫の鍵の所をってたんだよ!」
健君のきな体が、ガタガタと震え始めた。
彼は胸のの作業着を両で引きちぎらんばかりに掻き毟りながら、嗚咽を漏らした。
「さっき……駅の駐輪の裏で、震えてうずくまってるあいつを見つけた……。ポケットにこの突っ込んで、泣きながら『ごめんなさい、父ちゃんごめんなさい』って……! 顕微鏡は、逃げるにが引っかかって倒したんだとよ! パニクって、ジッポ落としたのも気づかねえで逃げてきたんだよ!」
のが、真っになった。
音が消えた。
藤教諭の勝ち誇ったような溜息も、教が慌てて内線話を取る音も、何も聞こえなかった。
私の目のにあるのは、机のに散らばった万千円と、泣き崩れる健君の姿だけだった。
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悠君は、盗んでいたのだ。
本当に、学に忍び込み、窓ガラスを割り、を盗み、逃げしたのだ。
私の『完璧な論理』は、何つ当たっていなかった。
ライターは彼のものだった。
裏から逃げたのも彼だった。
学側が抱いていた疑いは、偏見などではなく、ただの『残酷な事実』だったのだ。
「あいつは……」
健君は机に両をつき、ポタポタと涙をに落としながら言った。
「あいつは、悪いことをしたんだ。どんな理由があろうと、の盗んで、学の備品ぶっ壊して……許されることじゃねえ。だから俺は、あいつを引っ張って、警察に突きすためにここに来たんだよ!」
健君の線が、再び私に向けられた。
その瞳の底にある暗い炎が、私の臓を焼き焦がすように貫いた。
「なのに……あんたは何なんだよ」
健君の掠れた声が、静まり返った指導に落ちた。
「無実だ? 偏見だ? 魔女狩りだ? ……ふざけるなよ」
「健君……」
「あんたは悠を助けに来たんじゃない。あんたはただ、目ののあいつにの俺のをねて、『今度こそ無実の教え子を救った派な教師』になりたかっただけだろ!」
胃袋を鉄の棒で抉られたような衝撃がった。
息ができない。喉が引きつり、や汗が全から噴きす。
「あいつが本当に罪を犯したかどうかなんて、あんたにとっちゃどうでもよかったんだよ! あいつが無実じゃなきゃ困るんだろ!? あいつが棒だったら、あんたのこのの『見守り』が、ただの滑稽な勘違いになっちまうもんなぁッ!」
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