みかん小説
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"完璧な夫に給料を突き返した朝" 第1話

「査定額は、点で千円になります」

ガラスカウンターの向こうで、黒い袋をはめた若い員が、申し訳なさそうに眉をげた。

目のに置かれているのは、つのさなフェルトの皿。 片方には、学の卒業祝にお母さんが贈ってくれた、さなダイヤが粒だける細のプラチナブレスレット。 もう片方には、結婚の記に亮介が買ってくれた、ピンクゴールドのリング。

「……万円には、なりませんか」

自分でも驚くほど、掠れた声がた。 員は元のルーペを置き、指先のリングを指で軽く突いた。

「申し訳ございません。どちらも使用く、リングのほうは細かい打痕がございます。とプラチナの量としても、これが精杯でして……」

打痕。傷。 、私がこので米を研ぎ、浴槽を擦り、息子のだらけの体操着を洗いしてきたのことだ。 みなど、属を測る精密秤のではミリグラムの価値も持たない。

「わかりました。それで、お願いします」

分証を提示し、類に震えるでサインをする。 渡された茶の封筒には、万円札が枚と、千円札が枚。 それを受け取った瞬、指先がひやりとたくなった。

来週のまでに、健太の学の期集特訓講座の費用、万円を振り込まなければならない。

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を目指す健太が、「どうしてもきたい」と目を輝かせて持ってきたパンフレットの端には、赤い印字で「期厳守」とかれていた。

千円。 持ちの活費の残りをかき集めても、まだ万円りない。

て、駅へと続く商の雑踏に紛れようとしただった。

「……お姉ちゃん?」

聞き覚えのある声に、背筋がねた。 振り返ると、買い物袋をげた妹の志保が、丸い目をさらに見いてっていた。

線が、私が胸元に握りしめていた茶封筒と、まだいたままのブランド買取の自ドアを往復する。

「志保……なんでここに」 「こっちのセリフだよ。駅のスーパーに寄ろうとったら、お姉ちゃんのろ姿が見えて。……え、そこ、質っていうか、買取だよね? 何売ったの?」

志保の目が、私の首元や元を慌ただしくる。 そして、の薬指に線が止まった。 そこにあるはずだったピンクゴールドのリングが消えていることに、妹はすぐに気がついた。

「嘘でしょう……? 亮介さんからもらったやつじゃん。なんで?」 「ちょっと、ここではあれだから。お茶でもしよう」

私は志保の腕を引き、駅暗いセルフサービスの喫茶に駆け込んだ。

運んできたアイスコーヒーの氷が、カランと乾いた音をてる。 志保は席に着くなり、を乗りしてきた。

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「ちょっと、どういうことなの? 亮介さん、会社で何かあったの? ボーナスがなかったとか?」 「ううん。会社は順調だよ。先も役職当がついたってんでた」 「じゃあ、なんで指輪なんか売ってるのよ」

志保の声には、純粋な混乱と、微かなりが混ざっていた。 無理もない。志保にとって、そして私の実の両親や親戚全員にとって、私の夫・佐藤亮介は「この世で最も理な夫」のはずだった。

「だって亮介さん、毎料がたら、そののうちに全額お姉ちゃんの座に振り込んでくれるんでしょ? 昔から円も誤魔化さないで、通帳も全部渡してくれてるって、お母さんにも自してたじゃない。『あんな来た旦さん、今の代どこ探してもいないわよ』って、親戚みんな言ってるよ」

志保の言葉が、私のの奥に針のように突き刺さる。

「……うん。毎になったらきっちり振り込んでくれるよ。先も、取りの万円、円も引かずに私の座に入れてくれた」 「でしょ? なのに、なんで指輪売って万円ちょっとのお作ってんの? お姉ちゃん、まさか怪しい投資とかに引っかかったんじゃないでしょうね?」 「そんなわけないでしょ」

私は力なく笑った。 笑おうとしたけれど、頬の筋肉がうまくかなかった。

テーブルので、自分の膝のにあるトートバッグをぎゅっと握りしめた。

のセールで買った布製のバッグは、持ちの角が擦れてっぽい繊維が毛羽っている。

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