"完璧な夫に給料を突き返した朝" 第8話
あなたのクレジットカード。先の請求額は万千百円。しい反発のシャフトと、輩を連れてった座のバーの領収がついてるわね。これもの引き落とし。止められたら、来のコンペでカードが使えなくなるわよ」 「う……あ、あれは仕事の付きいで……」 「次。健太の学ゼミナール。毎の通常授業料が万千円。これも。そして、気・ガス・のライフラインが約万千円。族分の携帯代と回線が万千円。ここまでで、いくらになるとう?」
私は卓を叩いた。 カチカチというい音が、静まり返ったリビングに響く。
「万千百円よ」
卓の液晶画面を、亮介の目のに突きつけた。
「あなたの取りは、万円。万千百円を引いたら、元に残るのは……万千百円」
亮介の顔から、完全に笑みが消えていた。 眉根を寄せ、卓の数字を睨みつけている。
「万千百円……? 馬鹿な。そんなはずないだろ。俺は毎万も稼いでるんだぞ? なんでそんな端しか残らないんだよ」 「残らないのよ。これが現実なの」
私は、赤ペンで囲んだ枚のを亮介の元に滑らせた。
「そしてここからが、今あなたが決めるべきことよ」 「決める……?」 「そう。お義母さんへの毎の仕送り万円。今のおねだりの旅代、万円。
広告
計万円。そして、健太の期集特訓の費用、万円。全部で万円」
私は腕を組み、亮介の瞳をまっすぐに見つめた。
「元にあるのは、万千百円。りないのは、約万円。……さあ、亮介さん。どうする?」 「どうするって……」 「誰に払って、誰を断るの?」
亮介の呼吸が、浅くなったのがわかった。 ワイシャツの胸元が、刻みにしている。
「お義母さんに『旅代はせません、仕送りも今は無理です』って話する? それとも、健太の部にって『おの特訓は諦めろ、お父さんの見栄とおばあちゃんの温泉旅のほうが事なんだ』って言い渡す? あるいは、落ちるあなたのクレジットカードを止めて、来のゴルフを全部キャンセルする? ……あ、そうそう、分の今の費万千円も、まだ円も確保できてないわよ」
「な……」
亮介の顔が、りと屈辱で真っ赤に染まった。
「な、何なんだよその言い方は! 俺を脅してるのか!? 俺がまるで、族を困らせてる元凶みたいじゃないか!」 「元凶よ」
私は即答した。 秒の躊躇もなく。
亮介が、まるでビンタでもらったかのように息を呑んだ。
「何言ってるんだ……! 俺は働いてる! 朝から晩まででをげて、毎万持って帰ってきてるんだぞ!? 全額おに渡してるじゃないか! それをやりくりするのが主婦の役目だろうが! りないなら、おがどっかから面するのが筋だろ!」
広告
「面って、どこから?」 「どこからって……おのへそくりとか、実の援助とか、いくらでもあるだろ! 俺の同期の奥さんはな、パートにてに万も万も稼いで計を助けてるって言ってたぞ! おは専業主婦でにずっといるくせに、俺にそんな偉そうな利く権利があるのかよ!」
ついに本音がた。 「俺がわせてやっている」という、彼がの底でずっと抱え続けていた傲な優越。
私はため息すらなかった。 ただ、え切ったで、エプロンのポケットから冊の通帳を取りした。 緑の、表が擦り切れた方の通帳。
「これ、見て」
私は通帳をき、最のページを亮介の胸元に押し当てた。
「何だよこれ……」 「私の、独代の通帳よ。結婚する、私がのOL活で、毎のお料とボーナスを切り詰めて貯めた百万円が入ってた座」
亮介が、恐る恐る線を落とす。 印字された数字の列。 毎、律儀に万円、万円、万円と引きされている記録。
そして、番の。
【残 ¥0】
「ぜ……ゼロ……?」 「そう。今ので、完全にゼロになったわ」
私は亮介のから通帳を取り戻し、テーブルのに放り投げた。 パサリと、乾いた音がした。
「あなたが『やりくり』と呼んでいたものの正体はね、亮介さん。私の独代の貯を、毎いつぶすことだったのよ」
静寂が、部を支配した。
テレビのついていないリビングに、蔵庫のいモーター音だけが響いている。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
教室の最後列に座る元教員
定年退職した元教員の私は、一度も教えたことのない男子生徒の保護者会に、身元を偽って六年間通い続けていた。教室の最後列から見つめる先には、油まみれの作業着を着た父親が座っている。受付簿の不審な記録に気づいた校長から昇降口で問い詰められた帰り道、桜が散る坂道でその父親が私の前に立ちふさがった。二十四年前の元教え子だったその男は、振り返りもせず、私の背中に向けて「あの席、あと何年座るつもりですか」と低く告げ怒り|真実|親子関係|修羅場3.1万字5 0 -
完結第18話
「この子は俺の子じゃない」
二十六時間に及ぶ難産を終え、産室を出た私を待っていたのは双方の両親の涙と祝福だった。だが壁際に立つ夫は一歩も近寄らず、「この子は俺の子じゃない」と冷たく言い放った。色めき立つ義父母から不倫を激しく追及される中、私の口から咄嗟に出たのは無実を叫ぶ声ではなく、「今日だけは言わない約束でしょ」という悲鳴だった。冷え切った目で私を見下ろす夫の手が、私のカーディガンの前立てにかかる。裡切られた|兄弟姉妹|夫婦|修羅場2.7万字5 2 -
完結第21話
優しい教室で震える息子
息子が突然学校に行けなくなり、担任は「いじめなどなくクラス全員に愛されている」と胸を張った。不審に思った私が息子のランドセルを調べると、底板の裏から三十七枚の給食費受領書が出てくる。我が家は困窮などしていないのに、三ヶ月間、生徒全員が日替わりで息子の昼食代を立て替えていた。私が学校へ確かめに行こうとした瞬間、息子は「言わないで」と叫んで床に泣き崩れ、その紙片を必死に胸へ抱え込んだ。怒り|裡の顔|親子関係|金銭問題3.2万字5 0 -
完結第15話
五人の元彼と三万一千円
結婚式当日の朝、ホテルのフロントに差出人不明の現金書留が五通届いた。中身はすべて、三万一千四百八十円という奇妙な端数のご祝儀だった。面識のない私の歴代の元彼五人からだと気づき、私は血の気を引かせて金庫への保管を頼み込む。だが、不審に思った夫が私の手提げから抜き取ったのは、三週間前に私がその五人へ同額を送金した明細だった。親族紹介まであと十五分、夫は控え室の鍵を閉め、冷たい目で私を見下ろした。夫婦|裡の顔|金銭問題|修羅場2.2万字5 19 -
完結第17話
消された母親席
「お義母さんの席はありません。ご祝儀だけ置いて、隅で体育座りでもしていてください」――一人息子・優太の結婚式で、看護師として41年間働き、学費や結婚資金、新居費用まで1500万円以上を支えてきた私・道代は、嫁・千夏から大勢の前でそう言い放たれた。しかも優太は妻を止めず、「母さんは恥ずかしい」と目を逸らす。最後まで母親として我慢しようとした私だったが、隣で全てを見ていた夫・剛がついに「帰るぞ」と私の手を取った。さらに千夏は、席も用意しない私から祝儀250万円だけは受け取ろうとする。そこで私たちは初めて、自分たちのお金と尊厳を取り戻す決意をする。祝儀の返還、結婚資金300万円の返還請求――華やかな披露宴の裏で、息子夫婦が当然だと思っていた“親の犠牲”が一つずつ引き上げられ始める――。嫁姑2.6万字5 374 -
完結第23話
母の職場で死んでいた私
母の定年退職をサプライズで祝うため、私は東京から新幹線に乗り宴会場へ駆けつけた。お祝いの品を手にして扉を開けた瞬間、母の同僚は手にしたグラスを取り落とし、顔を青ざめて後ずさりした。毎年盆と正月には実家へ顔を出し、仕送りも続けていたはずの私は、母が二十八年勤めた職場では十五年前に事故で亡くなった娘として扱われていた。ステージを駆け下りてきた母は私の手首を強く掴み、そのまま非常階段へと力任せに引きずり出した。親不孝|親子関係|退職金|修羅場3.5万字5 32 -
完結第23話
締め出された新社長
父から印刷会社を継ぎ、代表取締役として誰よりも早く出社した初日の朝、私のカードキーだけが赤く点滅して通用口が開かなかった。清掃員や入社三カ月の新人、配送トラックが次々と通過していく中、古参の会計は「先代の指示で権限を削除した」と告げる。社内では判断を下せる者がおらず、営業と現場の怒号が響き合い、輪転機が完全に停止した。私は閉ざされたガラス扉の脇にパイプ椅子を置き、冷たい缶コーヒーを握りしめた。職場逆転|人生逆転|怒り|親子関係|修羅場3.5万字5 55