"昭和44年、最終バスから消えた女性車掌" 第2話
名簿にはのと、番に鉛で《瀬誠、歳》とある。枚目の切符は《県―》ではなく、《県―旧分》の児券だった。
父は瀬誠という名をっていた。美が名簿を読んだ瞬、英のから湯呑みが滑り、畳へ茶が広がったからだ。それでも彼は説せず、缶を持って帰ろうとした。美は父のから原物をざけ、学のと教育委員会へ発見を報告した。自宅へ持ち込めば、と同じように族の判断だけで証拠が消えるかもしれない。
その夜、美は運報の複写と枚目を机に置いた。報のという数字は、誰がいついたのか。母の失踪に作られた記録なら、目を消したがいる。父の沈黙は母を疑ったためではなく、その子どものを隠すためだったのかもしれなかった。
昭の掌鞄には、運賃別に束ねた違いの切符、釣り銭、刻表、乗務員証が入っていた。終点へ着くと掌が残券番号をき、現と照する。子どもの券が増えれば、売も同額増える。紀子は誠の運賃を自分の財布から入れたため、帳簿はっていた。無料で乗せて隠したのではなく、会社の記録も乗客にしようとしていた。
精算表には、紀子が鉛で《児、確認》といた跡があった。
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から赤い線が引かれ、《計》と訂正されている。訂正印は営業所のものだ。児券の売は計へ入ったままなのに、数だけへ戻されていた。失踪翌朝、万円をしただけでなく、目を消す作業も同じ机でわれていた。
写真に写るの袋には、鉱業会社の名が印刷されていた。誠は父の働いた会社を訪ね、受付で古い作業着と全帳を受け取ったのだろう。会社は閉鎖準備で、に詳しい説をしなかった。袋の文字が読めたことで、彼が県へ遊びに来たのではなく、父のについて何かを探していたことが裏付けられた。
未現像フィルムは、根裏の寒差にさらされていた。美は町の写真へ持ち込まず、県の文化資料課へ相談した。古いフィルムは乳剤が傷み、無理に現像すれば像ごと剥がれることがある。担当者は発見の状態を撮し、缶のの配置を記録してから、専の現像所へ送った。
待つ、美は越交通の継会社を訪ねた。倉庫には昭の運報、残券台帳、掌別の精算表が残っている。女性掌が廃止されたも、労務関係の類と緒に保管されていたらしい。紀子の最終便は分の運賃と残券が致していた。現欄にもはなく、担当係の確認印が押されている。
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「万円がなくなったと聞いています」
現職の経理担当者は別冊の事故報告をした。万円は乗券の売ではなく、《臨貸切代・未入》として失踪翌に追加されている。貸切の依頼主は島備、担当運転は田正雄。しかし配簿には貸切便がせず、両も通常線に使われていた。紀子が触れたではなかった。
当の精算係、杉原文は町の老ホームにいた。美が帳簿を見せると、紀子の鞄を数えたのことを話した。売はっていた。翌朝、田と営業所が「の貸切代が鞄に入っているはずだ」と主張し、文が断るもなく事故報告へ万円をきした。紀子の受領印はなく、掌鞄に保管する決まりもなかった。
「どうして警察に言わなかったんですか」
文は、聞かれたのは鞄にがあったかだけだと答えた。万円の名目を説しようとすると所が遮り、《本が預かった》と話した。夫を病気でくしたばかりの文には、営業所を辞める選択がなかった。数に帳簿を訂正しようとしたが、所も田も既に別の職へ移っていたという。
美は陳述を作り、文に読み返してもらった。母がを盗んでいないと分かったびより、誰かが翌朝に数字をした事実のほうがかった。噂は失踪に自然発したのではない。
紀子を捜す方向を変えるため、を持って逃げたの形が作られていた。
数、フィルムが戻った。
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