みかん小説
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"母を遠ざける姉の嘘" 第2話

受話器の向こうで、母が「え……?」と息を呑んだ。 信じられないというような、細い声だった。

「嘘……美咲が、そんなことを……? だって美咲はいつも、『千佳は自分の活で杯だから、お母さんも迷惑かけちゃダメよ』って……」

「本当だよ! 私、お母さんに会いたかったよ! 毎万円のおだって、お姉ちゃんの座に振り込んで――」

そこまで叫んだだった。 受話器の向こうから、ガタガタと玄関の引き戸が激しくく音が響いた。

母が「ひっ」と鳴を漏らした。

『お母さん!? 誰と話してるの!?』

くから、鋭く張り詰めた女の鳴り声が受話器を突き抜けてきた。 美咲の声だった。 いつも私に「お母さんの体調が」と囁いていた、あの静かで物分かりのいい声とは似ても似つかない、剥きしの苛ちに満ちた声。

「あ、美咲……あのね、これ、千佳から……」

『切って! 今すぐ切りなさい! 受話器を渡しなさいって言ってるでしょ!』

バタバタと畳を激しく踏みつける音。 ガチャン、という激しい属音とともに、母の「ああっ」という怯えた叫びが響いた。 そして――。

ツーツーツー……。

質な子音が、私のの奥を乱暴に叩いた。

「もしもし!? お母さん!? お母さん!!」

画面を見つめて叫んでも、通話は完全に切れていた。 静まり返った私ののワンルームに、自分の荒い呼吸の音だけが虚しく響いていた。

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が、激しく震えていた。 背に嫌な汗がじっとりと滲んでいた。

今のは、何だったんだ? 母の怯えきった声。 美咲の、狂気じみた鳴り声。 そして、母がにした信じがたい言葉の数々。

『千佳は、お母さんの顔なんて見たくもないんだって』 『帰る理由がないって、話をガチャ切りしたって』

私はスマホを握りしめたまま、ち尽くした。

私は歳。京のさな品輸入商社で、営業事務のリーダーをしている。 結婚はしていない。激務と呼べるほどではないが、平は毎晩まで働き、休は溜まった洗濯と掃除をこなし、たまに同僚といワインをむ。 そんな、どこにでもある平凡な毎を送っている。

けれど、この、私のの底には、常に鉛のようにが沈んでいた。

それは、「罪悪」だった。

野のあいの町で、歳になり、膝も悪くしてで暮らしている母。 父がくなってから、実くにあるアパートにみ、母の面倒をずっとで見続けてくれている、歳の姉、美咲。 姉は元のスーパーの事務員として非正規で働きながら、週に何度も実に通い、母の通院に付き添い、買いしをし、掃除をしてくれている。独のまま、自分のを母の介護に削り取られている。

それに比べて、私はどうだ。 京の学へ学させてもらい、そのまま京で就職した。

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の苦しい台所事りながら、私は都会の自由を放せなかった。 母の膝の術が決まった、私は「仕事を辞めて野に戻ろうか」と美咲に相談したことがあった。

その、美咲はくため息をつき、静かに言ったのだ。

『あんたが帰ってきたって、田舎には仕事なんてないわよ。京で正社員として働いて、しでも仕送りしてくれた方が助かる。お母さんのの回りの世話は、私が全部やるから。あんたは、自分のきなさい』

姉のその言葉に、私は救われた。 救われると同に、決定な負い目を背負った。 私は介護から逃げた。姉にすべてを押し付けて、全な京で、自分の自由を買い取ったのだと。

だから、姉が「今はお母さんの緒が定だから、帰ってこないで」と言うたび、私はその言葉に従うしかなかった。 どんなに母に会いたくても、「現」でをかぶっている姉の判断を疑うことなど、許されるはずがなかった。 せめてもの罪滅ぼしとして、ボーナスがれば万円、毎料からは欠かさず万円を、姉名義の座に振り込み続けてきた。 「お母さんの医療費と、お姉ちゃんのお茶代に使って」とき添えて。

それなのに。 さっきの母の言葉は、体何だったのか。

母は、私が自分を嫌って寄り付かないとい込んでいた。

私が母を疎ましくって、連絡を絶っていると信じ込まされていた。

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