"母を遠ざける姉の嘘" 第5話
美咲は、認症の妄だと言った。 だが、もし母が本当にい認症なら、なぜ今、私の京の話番号を正確にプッシュして話をかけてこれたのか? 「蘇のお菓子」と「のストール」が届いたことを、なぜあんなにも嬉しそうに、確に私に伝えてきたのか?
母の言葉が、脳裏に霊する。 『千佳は、お母さんのこと、んでるって……』 『みじめな母親の顔なんて、見たくもないんだって……』
美咲は、母にそう吹き込んでいたのだ。 そして私には、「お母さんが会いたがっていない」「体調が悪いから来るな」と吹き込み続けていた。
なぜ? どうして、そんなの込んだ嘘を? 母と私を互いに憎みわせ、もの、言も直接言葉を交わさせないようにして……姉は体、何をしようとしていたのか?
「……私を、排除してたんだ」
声にした瞬、パズルのピースが音をてて噛みっていくような戦慄がった。
姉は、母と私を分断していたのだ。 私には「母親の拒絶」を信じ込ませて京に縛り付け、母には「妹の軽蔑」を信じ込ませて野のに閉じ込めていた。 そうすることで、美咲は何をに入れた?
『の回りの世話は、私が全部やるから』 『現でをすすっている私の苦労もらないで』
――唯の、絶対な。 母にとって、世界と繋がる唯の窓。 そして、私に対して、永に徳な優位にち続けられる「犠牲者」
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の座。
「……冗談じゃない」
唇から、い息が漏れた。 目から涙はなかった。代わりに、胸の奥底で、ドロドロとした黒いりが発した。
。 私は、自分が親を見捨てたなだとい込まされ、毎晩のように罪悪に苛まれてきた。 京で美しいものをべるたび、しいを買うたび、「野で苦労している姉とお母さんに申し訳ない」と、胸を痛めてきたのだ。 その私の痛みを、姉は最初から全部っていて、都よく利用していたというのか。
私はパソコンの画面を乱暴に閉じ、スマホをに取った。 社内のイントラネットにアクセスする。 勤怠管理の画面をき、休暇の申請フォームをちげた。
【申請理由:私用(庭の事)】 【期:今週曜〜来週曜】
迷わずエンターキーを押した。 、曜のうちに抱えている案件をすべて同僚に引き継ぎ、曜の朝番でく。
私はクローゼットの奥から、何も使っていなかった黒いキャリーケースを引きずりした。 埃を払い、ジッパーをける。 着替えを分、化粧ポーチ、そして過の美咲とのLINEをすべてプリントアウトしたの束。 通帳と、毎の振込細の控え。 すべてを、鞄のに詰め込んだ。
スマホで「えきねっと」をく。 曜の朝、京駅午分発、陸幹線はくたか号。
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野県、田き。 シートマップの窓側の席を選び、決済ボタンを押した。
美咲には、言もらせない。 「来るな」と言われる筋いはない。あそこは、私のまれ育っただ。 母は、私の母親だ。
話越しに怯えていた母の顔を、この目で確かめる。 そして、母を囲い込み、私から族を奪いった姉の顔を、真正面から見据えてやる。
スマートフォンの画面が消え、暗くなったガラスに、私のえ切った顔が映っていた。 そこにはもう、姉の顔を窺い、罪悪に震えていた妹の姿はなかった。
陸幹線のドアがき、田駅のホームにりった瞬、涼な空気が肺の奥まで突き刺さった。
の野のは、京のそれとは全く違っていた。 湿り気のない、乾いた気。くに見える々の頂は、すでにくづき始めている。
駅のロータリーから線バスに乗り込み、千曲川を渡る。 窓を流れる見慣れたリンゴ畑や瓦根の並みを見つめながら、私は膝のでトートバッグの持ちをく握りしめ続けていた。 鞄の底には、京から持ってきた母の好物の菓子と、美咲との分のやり取りを印刷したの束が入っている。
バスに揺られること分。 「千曲堂」という錆びた留所でり、舗装のひび割れた坂を分ほど登ると、懐かしい平の本が見えてきた。
私のだ。
父がくなってから。母がで暮らしているはずのそのは、目には以と何つ変わっていないように見えた。
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