"母を遠ざける姉の嘘" 第8話
所の田所さんが回覧板を持ってきてくれたも、美咲がからものすごい勢いで鳴り込んできて……『私がいないに勝にをにげるな』って……」
母の声は、完全に怯えきっていた。 歳の母親が、歳の娘の顔を窺い、その支配に完全に屈している。
私は持ってきたバッグから、老舗の菓子の包みを取りした。 「お母さん、これ。昨話してた蘇のお菓子。お姉ちゃんのじゃなくて、今幹線に乗るに、京駅でしく買ってきたの。緒にべよう?」
綺麗な包装を見た瞬、母の顔にパッと歓びのが浮かんだ。 だが、その次の瞬、母はハッとに返ったように青ざめ、両を振り乱した。
「だ、ダメよ! 千佳、それ片付けて! くカバンにしまって!」
「え? どうして?」
「美咲が……美咲がもうすぐ来ちゃう! いつもに、ドラッグストアのパートの休憩を使って、薬の確認に来るのよ! こんなものがあったら……千佳がここに来たってバレたら、美咲が何をするか……!」
母は震えるで菓子の箱を押し返してきた。 その目には、狂気じみた恐怖が宿っていた。
「あの子、ると本当に怖いのよ……! 『私がこれだけあんたのためにを犠牲にしてるのに、裏切る気か』って、部の物を投げばして、何もご飯を持ってきてくれなくなるの……! 千佳、お願いだから隠れて! 今すぐ帰って!」
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「お母さん、落ち着いて!」
私が母の肩をく抱きしめた、まさにそのだった。
の砂利を、乱暴に踏みつけるのエンジン音が聞こえてきた。 キーッという障りなブレーキ音とともに、軽自のドアが激しくバタンと閉まる。
母の息が、喉の奥でヒッと止まった。
タッ、タッ、タッ、と、で玄関ポーチを登ってくるヒールの音。 ガチャリ、と鍵のく音がして、玄関の引き戸が凄まじい勢いでけ放たれた。
「お母さん!? 玄関に脱いである靴、誰の靴よ!?」
張り詰めた、鋭利な刃物のような美咲の鳴り声が、静まり返ったのに霊した。
母は私の腕ので、刻みに震えながら直していた。 逃げはなかった。 私は母の肩からゆっくりとをし、居の畳のに正座した。 逃げるつもりなんて、最初から毛なかった。
ドカドカと廊を乱暴に踏み鳴らし、居の引き戸が勢いよくけ放たれる。
そこにっていたのは、紺の事務にベージュのカーディガンを羽織った、私の姉――美咲だった。
よりも、頬がこけ、目元に濃い隈が張り付いている。 髪は乱雑に束ねられ、唇はく引き結ばれていた。 だが、その両目には、侵入者をつ裂きにせんばかりの凄まじい敵が燃え盛っていた。
美咲の線が、私を捉える。 瞬だけ、その瞳に狼狽のがった。
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私が本当に京から来るとはっていなかったのだろう。 けれど、その揺は次の瞬、侮蔑と激の炎にかき消された。
「……千佳。あんた、何の真似?」
く、押し殺した声。 美咲は肩で息をしながら、同然の勢いで居に踏み込んできた。
「何の真似って……お母さんに会いに来たのよ」 私は努めて静に、線を逸らさずに答えた。
「会いに来た?」 美咲の元が、歪んだ笑みを刻んだ。
「あんた、よくもまあ抜け抜けとそんなツラげて来られたわね。昨、あれだけ話で来るなって言ったでしょうが! 私の言うことが聞けないの!? あんたが突然押しかけてきたら、お母さんの血圧ががって倒れるかもしれないって、言ったわよね!?」
美咲の声が、狭い居にビリビリと反響する。 母はこたつの隅に縮こまり、両をで塞いで震えている。
「お母さんは倒れてなんかいないよ」 私はちがり、美咲の正面にった。
「倒れるどころか、私のことをちゃんと覚えてた。会話だって完全に成してる。……美咲ちゃん、どうして嘘をついたの? お母さんが認症で、被害妄があるなんて。どうしてそんなデタラメを私に吹き込んだの?」
美咲の眉がピクリとねがった。 しかし、姉は歩も引かなかった。 それどころか、軽蔑を煮詰めたような笑を私に浴びせてきた。
「デタラメ? たった数、京からお客さん気分でやってきただけのあんたに、何がわかるのよ!」
美咲が歩、私に詰め寄る。
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