"母を遠ざける姉の嘘" 第18話
「そうよ!!」
美咲はを激しく叩きながら、狂ったように笑いした。 涙を流しながら、甲い声で、壊れた械のように笑い、叫んだ。
「そうよ! 何が悪いのよ!? 何が悪いっていうのよ!!」
美咲の瞳に、溜め込み続けたドロドロの怨嗟が、真っ黒なマグマのように溢れしていた。
「ずるいじゃない! あんたばっかりずるいじゃない!! 同じにまれて、同じ親から育って、私の方が勉だってできたのに! どうしてあんただけが京へって、お洒落なで働いて、綺麗なマンションにんでるのよ!? 私はね、この田舎で、ずっとお父さんとお母さんの顔を窺ってきてきたのよ!」
美咲の指が、自分の胸元を掻きむしる。
「代の頃、コンにっても『野からられない女』ってだけで男から敬された! 代になって、周りの友達がみんな結婚して子供を産んでいく、私は毎スーパーのレジ打ちと、お母さんの病院の送り迎えだけ! あんたがSNSに載せてる京のカフェの写真を見るたびに、私、スマホを壁に投げつけて壊したかったわよ!!」
美咲の告は、もはや止まらなかった。 胸の奥底に溜まっていた毒が、滴残らず部のに撒き散らされていく。
「最初はね、本当に配だったのよ。お母さんの術の、あんたが帰ってくるって言った、お母さんが『千佳に悪いから、あの子には迷惑かけたくない』って泣いたの。
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その、ったのよ。……あ、お母さんは、あんたには良い顔をしたいんだって。みじめな姿を見せたくないんだって。それなら、あんたをざけておけば、お母さんは私にだけ全部を曝けすんじゃないかって!」
美咲は顔をげ、歪んだ笑みを私に向けた。
「度『体調が悪いから来るな』って嘘をついたら、あんたはあっさり引きがった。仕送りのだけ振り込んできて、京で適に暮らし続けた。……それを見た、私ので何かが弾けたのよ。ああ、この子は結局、で解決したいだけなんだ。現のをかぶる気なんてないんだって! だったら、私が全部独占して何が悪いのよ!?」
美咲の息が荒くなる。
「お母さんが『美咲しかいない』って言ってくれた、まれて初めて、自分が誰かに必とされた気がしたのよ! この世でたったつ、私だけの居所ができた気がしたの! それを……それをあんたが、今さら乗り込んできて、デイサービスだの役所だの配して……私の居所を奪おうっていうの!? お母さんから私を奪ったら、私のこのは何だったのよ!? ただの、無駄飯らいのき遅れの介護バカじゃないのよ!!」
居に、美咲の荒い呼吸と、引き裂かれたプライドの残骸だけが散乱していた。
これが、真実だった。 の嘘の、の幽閉の、本当の理由。
姉は、母親をしていたのではない。
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母親に依されていたかったのだ。 母親を「自分がいなければんでしまう」に仕てげることでしか、自分のすり減った自尊を保つことができなかったのだ。
私は、何も言えなかった。 りは、すでに消え失せていた。 ただ、目ので泣き叫ぶ姉の姿が、あまりにも痛ましく、あまりにもれで、胸が締め付けられるようだった。
そのだった。
「……美咲」
部の隅から、掠れた、しかしはっきりとした声が響いた。
美咲がハッと息を呑み、涙で濡れた顔をげた。 私も振り返った。
そこにいたのは、こたつからいて、畳のに正座した母の姿だった。
母の顔は、く張っていた。 目元は赤く腫れがり、唇は激しく震えている。 けれど、その瞳には、先ほどまでの怯えや狂気はなかった。 何かを悟ったような、く、底れないしみが宿っていた。
「お母さん……」美咲が々しく呟いた。
母は、ゆっくりと美咲の方へと膝をめた。 痛むはずのを引きずりながら、歩、また歩と、をうようにして美咲の元へづいていく。
そして。
母は震える両を伸ばし、にへたり込んでいた美咲のを、力任せに自分の胸へと抱き寄せた。
「……え?」美咲の体が直する。
「ごめんね……美咲……」
母のから漏れたのは、嗚咽混じりの、絞りすような謝罪だった。
「お母さんが……悪かったのよ。
全部、お母さんのせいだ……」
「何……何言ってるのよ、お母さん……してよ……」
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