"給料袋を取り上げる姑と、娘の進学" 第2話
歳。真面目で、遅刻も欠勤もしない職だったが、世渡りがで、職での世や昇とは無縁の男だった。
典子は息を呑み、浩の横顔を見つめた。 今しかない。子どもたちが箸を置き、タツが台所へったわずかな隙を見計らい、典子は浩の膝元へを寄せた。
「あなた……今、私のパートの最初の料がたの」 浩は鮭の皮を箸で剥ぎながら、返事を返した。 「ああ、そうか。ご苦労だったな」 「そのことなんだけど……お義母さんが、玄関で全部持っていってしまったのよ」
浩の箸が、ピタリと止まった。 「……母さんが?」 「ええ。私、全額を自由にしたいなんて言ってないわ。計が苦しいのは分かってる。でも、千円だけでも、恵子の受験の願代と制代のために、私の元で積みてさせてほしいって頼んだの。それなのに、お義母さんは銭も残さず……」
典子の声にがこもる。しかし、浩の反応は、典子が最も恐れていたものだった。 浩は妻の目を見ようとせず、さくため息を吐くと、再び鮭のをに運んだ。
「……典子。母さんはな、俺がさい頃に親父をくしてから、女つでこのを守ってきたんだ。計のやりくりに関しちゃ、母さんに任せておけば違いはないよ」 「でも、恵子の学のことはどうなるの? お義母さんは『女の子には必ない』って最初から決めつけてるのよ!」
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「母さんだって、悪で言ってるわけじゃないだろ」
浩は面倒くさそうにを掻いた。 「うちのの連だって、娘をへかせてる奴なんて半分もいないよ。学をたら紡績か、商のみ込みにすのが普通だ。正の代だってこれからかかるんだし……今すぐ決めなくてもいいじゃないか」
「今すぐ決めなきゃにわないのよ! 恵子はもうのなのよ!?」
典子がわず声を荒らげた瞬、台所の引き戸が静かにいた。 盆を持ったタツが、氷のようにえ切った線でを見ろしていた。
「何をコソコソ揉めてるんだい。浩、疲れて帰ってきたんだから、ゆっくり休ませておやり」
浩は弾かれたようにちがり、「ごちそうさん、呂入ってくる」と、逃げるように茶のをていった。 残されたのは、典子と、ややかな笑みを元に浮かべるタツだけだった。
「典子さん。夫婦ので隠し事を作ろうなんて、浅ましい真似はおやめよ。浩はおの方にはならないよ。あの子は、このがどうやって守られてきたかをっているんだからね」
タツはそう言い捨てると、居の庫の鍵をチャリと鳴らした。 その夜、典子は布団ので、悔しさに震えながら拳を握りしめ続けた。 夫は頼りにならない。こので娘の方は、自分しかいないのだと、骨の髄までいらされていた。
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それから週、典子の毎は獄のような忙しさに追われた。
午。まだが残る凍てつくので起し、かまどに薪をくべて米を炊く。 たい井戸で顔を洗い、浩と子どもたちの弁当箱に卵焼きと梅干しを詰め、タツの朝の粥を煮る。 全員を送りした、洗いで溜まった洗濯物を井戸端で絞り、物干し竿へ干し終えるのが午半。 そこから息つく暇もなく自転を漕ぎ、には品のタイムカードを押す。
での作業は過酷を極めた。 底えのするコンクリートのので、次々と流れてくる煮豆の選別と箱詰め。指先は気で赤に腫れがり、あかぎれから血が滲んだ。 それでも、昼のの休憩、のパート主婦たちが持ち寄った漬物をつまみながら世話に興じる、典子は古の裏に鉛をらせ、学に必な費用の計算を繰り返していた。
(入学、教科代、制、通学定期……最でも万円。今の私のが円だから……)
気がくなるような数字だった。だが、自分が学をてすぐにメリヤスへ送られ、学ぶ会を奪われたあの悔しさを、恵子にだけは絶対にわわせたくなかった。
午半にをると、帰の途で百と魚に寄り、値切り交渉をしながら夕の買いしをする。
に戻ればすぐに洗濯物を取り込み、呂の薪を割り、夕飯の支度。