"給料袋を取り上げる姑と、娘の進学" 第13話
「させないよ」 タツは洗濯棒をのに突きてた。コン、とい音が響く。
「昨、学へ話をしてやったよ。『井恵子の推薦は取り消してください』とな。先は慌てていたが、である息子の名で断れば、学だって従わざるを得ないんだよ」
「……なんですって!?」 典子の界が真っ赤に染まった。 「嘘でしょう……先が、そんなこと……!」
「嘘じゃないさ。浩、おからもハッキリ言ってやりな! この狂った嫁に、誰ので飯をわせてもらっているのかをね!」
タツが叫び、浩の背を平でく叩いた。 浩がよろめきながらにりてくる。そのには、あの郵便局から届いた残通の片が握られていた。
は、午分。 ここから浦のまでは、バスとを乗り継いで半。 今、この玄関を突破できなければ、すべてが終わる。
「浩さん!」典子は夫の胸ぐらにすがりついた。「お願い、そこを退いて! 恵子のがかかっているのよ! あなた、自分の娘の未来を、本当にこので叩き潰す気なの!?」
「浩!」タツもまた、息子の腕を掴んだ。「親に逆らうんじゃないよ! このを壊す気かい! 正の将来をドブに捨てる気かい!」
の女の叫びが、狭い玄関に霊する。 浩の呼吸が荒くなり、その額から粒の汗がポタポタとに落ちた。 男のので、最もい選択の瞬が訪れていた。
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「……浩、くしなさい!」 タツが洗濯棒を握り直す。 「その汚い通帳を取りげて、願を破り捨てちまいな! そうすれば、からはまた元の静かなに戻るんだから!」
浩は、典子の胸ポケットから覗く、い願の角を見つめた。 そして、自らののにある、典子の青い通帳に線を落とした。
表をめくる。 『 千円』 『 千円』 『 千円』 『 千百円』
円単位の無駄遣いもせず、毎朝に起きて族の飯を作り、ボロボロのでへ通い、千円、千円と、爪にをともすようにして積みげられた、母の執の記録。 浩の脳裏をよぎったのは、昨夜、典子から聞かされた母・タツの昔話だった。 歳でを断たれ、弟のためにへ送られた母の涙。 そして今、目ので、まったく同じ歳の娘が、祖母と父のによって、未来を奪われようとしている。
「……浩?」 タツが怪訝そうに息子の顔を覗き込んだ。
浩の肩が、微かに震え始めた。 やがて、その震えは全へと広がり、浩は握りしめていた通帳を、胸元にく押し当てた。
「……母さん」
「なんだい」
「……もう、やめよう」
浩のから漏れたのは、蚊の鳴くような、だが決定な拒絶の言葉だった。
タツの表が凍りついた。 「……何だって?」
浩はゆっくりと顔をげた。その目は充血し、涙が溢れしていたが、、度も見せたことのないいが宿っていた。
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「もうやめよう、母さん! 恵子に……恵子に、受けさせてやろう!」
「浩!!」 タツが激昂し、洗濯棒でを激しく叩いた。 「正はどうするんだい! 正のや学のがりなくなったら、おが責任を取れるのかい!」
「正のは、俺がもっと働くよ!」 浩は初めて、母親に向かって号を張りげた。 「夜勤でも、飯の稼ぎでも何でもく! 俺の体がく限り、正の学費は俺が自分で稼ぎす! ……だからって、妹ののために、姉のを今ここで殺していい理由になんて、なるわけがないだろ!!」
タツがよろめき、壁に背を打ちつけた。 自分が女つで育てげ、度として自分に逆らったことのなかった息子が、今、自分を激しく拒絶している。
浩はに膝をつき、典子のを取った。 そして、自らの作業着の内ポケットから、くしゃくしゃになった千円札を枚、取りして典子ののひらに握らせた。
「典子……すまなかった。俺が……俺が腑抜けだった。……け! にび乗れ! 恵子の願を、してこい!」
「あなた……!」
「れ!!」
典子は通帳と千円を胸に抱き締め、を蹴った。 背から「浩! おってやつは……!」というタツの鳴が聞こえたが、典子は度も振り返らなかった。
計は、午分。 のたいを切り裂きながら、典子は駅へ向かって、がむしゃらにペダルを漕ぎ続けた。