"祖父が私に遺した最後の拒否権" 第4話
私は静かにをいた。
「はい、何でしょうか? インクがませんか?」
「いえ。ひとつだけ、確認させてください」
私はペンを持ったまま、津の目をまっすぐに見据えた。
「このを買った、買い企業様は、ここを何にするつもりなんですか?」
部の空気が、わずかに揺れた。
津の笑いが、ほんの瞬、ピキリと引きつったのを私は見逃さなかった。
「え……? あ、ああ、の利用目でございますか? それは……契約にも記載の通り、般な事業用、域発の環としての取得でございまして……」
「般な事業用とは何ですか?」 私は畳みかけた。 「祖父の果園は、向きの傾斜です。の引き込みも細く、も通っていません。背には保林があって、砂災害警戒区域の指定も部かかっているはずです。を建てるにも造成費用がかさむはずですが、なぜあのを、相よりい千百万円もの値段で、しかも今に契約を急いで買い取るんですか?」
京の商社で、臭い請けとの契約や仕様の粗探しを叩き込まれてきた私の直が、激しい警報を鳴らしていた。 都のいい話には、必ず裏がある。 特に、「相が異常に契約を急がせる」は、こちら側に致命な利益が隠されているだけだ。
「おい、咲!」 父が苛った声を張りげた。
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「何を関係ないことを聞いてるんだ! 相が何に使おうが、さえ払ってくれれば俺たちには関係ないだろうが! 余計な詮索をして、話が流れたらどうするんだ!」
「関係なくないよ」 私は父をたく見返した。 「あの果園の真には、田さんちの田んぼがある。それに、園のすぐは、私が通っていた学の通学だよ。もし何か危険な施設ができるなら、所のたちに迷惑がかかる。名義はお父さんでも、所のたちはずっと『佐伯さんの果園』として見てきたんだよ」
「所のことなんかるか! 俺たちの今の活の方が先だろうが!」
父の声に構わず、私は津から線をさなかった。
「津さん。答えてください。買いは何の会社で、あのを具体に何に変える計画なんですか? それが確にならない限り、私はこの同には署名できません」
津の額に、じわりと脂汗が滲みた。 彼はネクタイの結び目を指でし緩め、助けを求めるように松永司法士の方を見たが、松永は無表のまま元の茶封筒を指で弄んでいるだけだった。
数秒の苦しい沈黙の、津は観したようにく息を吐き、膝ののバッグからい図面を取りした。
「……型輌の、夜継デポです」
ボソリと漏らされた言葉に、私は眉をひそめた。
「夜継デポ?」
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「はい。県の物流会社様が、自のインターチェンジにいこのエリアで、型トレーラーの待・積み替え拠点を求めておられましてね。あの果園の斜面をすべて削り取って平坦にし、全域をアスファルトで舗装します。型トレーラーが常台から台、夜から朝にかけて入りするパーキングプレイスにする予定です」
津の言葉が落ちた瞬、私のので、かつて歩いた故郷の景が激しい音をてて塗り替えられた。
斜面を、削り取る? あの、になればいが面に咲き乱れ、甘い蜜蜂の羽音が響いていた所を。 祖父が何もかけてを耕し、堆肥を混ぜ、柔らかな黒に育てげたあの裾を、すべてで削り、黒いコールタールとアスファルトで塗り固める。
そして、。 夜通し響く型ディーゼルエンジンの音。 排気ガスの臭い。 カーブミラー越しに照らされる、烈なハイビーム。 その型がり抜けるは、歩すらない、学たちが黄い傘を差して歩く通学なのだ。
「そんなの……」 私のから、乾いた声が漏れた。 「あんな狭い町に、トンいトレーラーが入りできるわけないでしょう? それに、あのを削ったら、がったにの集落へが流れ込む危険はどうするんですか?」
「それは! すべて買い企業様が法令に基づいて適切に事をいます!」 津が語気をめた。
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