"偽りの仕送りと緑の通帳" 第12話
だからこそ、私が来ている隙を見計らって、を直接確認しようと企んでいるのだ。
私は決して慌てることなく、穏やかな笑顔を作って首を傾げた。
「お母さん、何をおっしゃってるんですか。仕送りは座にちゃんとお振込みしてありますし、封筒のにもきちんと記録が入っていますよ。今、が濡れていますから、で確認してくださいね」
そう言って適当にあしらうと、君代は「……チッ」と忌々しそうに舌打ちを鳴らし、それ以は何も言えなくなる。
座に毎万が入っている(とい込んでいる)以、表って私を棒扱いするわけにもいかないのだ。
それでも、私のことをどうしても信じきれない義母の執は、次第に別の方向へと暴し始めた。
あるの夕方、買いしを終えて荷物を届けた私に対し、君代は異様なほど猫撫で声をしながらすり寄ってきた。
「ねえぇ、真美さん。ちょっとお願いがあるんだけどぉ」
何か良からぬ企みがあるの、独特のねっとりとした甘えた声だった。私は顔を引き攣らせないよう細の注を払いながら、義母のに腰を落とした。
「どうかなさいましたか、お母さん?」
「ほら、私ってが悪いでしょう? いつも真美さんには々とお世話になって謝してるんだけどねぇ……ちょっとへって、続きをしてきてほしいのよ。
広告
別に、あんたたちを疑ってるわけじゃないんだけどねぇ?」
チラチラと私の顔を伺いながら、探るように線を投げてくる。
らかに、自分の通帳をの械に入れて、本当に毎万円が振り込まれているのかどうかを確かめようとしているのだ。化けの皮を剥がそうと必なのが丸見えだった。
私はので笑しながら、わざとらしく困ったような顔を作ってため息をついた。
「すみません、お母さん。今はこれから奈々の夕飯の買い物と、浩のクリーニングの受け取りがあって、どうしてもが取れないんです。は窓もATMも混みうですし……また今度でもよろしいですか?」
「……そう。まあ、いつでもいいんだけどね」
君代はあからさまに嫌そうに顔を歪め、ぷいと横を向いた。
私は義実の玄関をた瞬、肺のの毒素を吐きすようにい息を吐いた。
そんな狐と狸の化かしいのようなやり取りが、数ヶにわたって続いた。
私が頑としてへの同や通帳の預かりを「忙しい」の言で躱し続けた結果、痺れを切らした義母は、ついに段にたのだった。
ある曜の午。
穏やかにれ渡った週末の朝、リビングでコーヒーをんでいた浩のスマートフォンが、けたたましく鳴り響いた。
話にた浩は、スピーカーから漏れ聞こえてくる義母の切り声に顔をしかめ、やがてうんざりした表で通話を切った。
広告
「……なんだよ、せっかくの休みなのにさ。母さんが『事な話があるから今すぐ全員で来い』って騒ぎしてるんだよ」
浩の文句を聞きながら、私は静かにちがった。
ついに、このが来たのだ。
「こう、浩。奈々も緒にきましょ」
支度をえていた奈々も、引き締まった表で力く頷いた。
をらせて義実へ向かうと、玄関のに見覚えのあるがまっていた。
義姉の恭子さんのだった。どうやら、義母は私たちだけでなく、男夫婦まで呼びしたようだった。
「ごめんください」
玄関をけてを踏み入れると、廊の奥から恭子さんが顔をした。
「あら、浩さんも真美さんも、奈々ちゃんも来たのね」
恭子さんは優しく微笑んで迎えてくれたが、その瞳の奥には「いよいよ決着のね」という静かな覚悟が宿っていた。
居に入ると、苦しい沈黙が部を支配していた。
座の座子に座った君代は、般若のように眉を険しく吊りげ、腕を組んで私たちを待ち構えていた。その線は、部に入ってきた私を射殺さんばかりに鋭く睨みつけている。
私たちは浩を先にして、義母の向かい側の畳へと腰をろした。
異様な緊張を察した奈々が、すっとちがって台所へ向かった。
「……あの、私、お茶でも淹れてきますね」
広告
おすすめ作品
-
完結第19話
完璧な夫に給料を突き返した朝
毎月二十五日、夫は手取り四十五万円の給料を一円も引かずに私の口座へ振り込み、親戚の前で完璧な夫として称賛されている。だがその裏で、私は息子の塾代を払うために結婚五周年の指輪を買取店へ持ち込んでいた。固定費と夫のカード代だけで毎月赤字が続き、私の独身時代の貯金も底をついた。翌朝、いつも通り振り込まれた四十五万円の通知を見つめた私は、その全額をそのまま夫の口座へ送金し、スマートフォンの画面を伏せた。嫁姑|夫婦|金銭問題|修羅場2.9万字5 20 -
完結第30話
一万八千円の伝票
病を克服し、身なりを隠して自らのホテルへ宿泊客として訪れたオーナー・佐藤かず子。亡き夫と四十年にわたり心血を注いできた老舗ホテルは、かつての温もりを失い、強欲な支配人・中村の私欲に侵されていた。 きっかけは、わずか千八百円の粗末な昼定食に突きつけられた「一万八千円」の法外な伝票。中村たちは気の弱そうな高齢客を狙って組織的なぼったくりを繰り返し、さらにはホテルそのものを外資系ファンドへ売り飛ばそうと目論んでいた。 無力な老婆と侮られ、嘲笑と脅迫を受けるかず子。だが彼女の手には、亡き夫の誇りである一本の「蒔絵万年筆」と、深夜に掴んだ決定的な「裏帳簿」の証拠があった。誇りを泥靴で踏みにじられた元女将の、静かなる大反撃が今、幕を開ける――。職場逆転|真相4.6万字5 1474 -
完結第17話
消された母親席
「お義母さんの席はありません。ご祝儀だけ置いて、隅で体育座りでもしていてください」――一人息子・優太の結婚式で、看護師として41年間働き、学費や結婚資金、新居費用まで1500万円以上を支えてきた私・道代は、嫁・千夏から大勢の前でそう言い放たれた。しかも優太は妻を止めず、「母さんは恥ずかしい」と目を逸らす。最後まで母親として我慢しようとした私だったが、隣で全てを見ていた夫・剛がついに「帰るぞ」と私の手を取った。さらに千夏は、席も用意しない私から祝儀250万円だけは受け取ろうとする。そこで私たちは初めて、自分たちのお金と尊厳を取り戻す決意をする。祝儀の返還、結婚資金300万円の返還請求――華やかな披露宴の裏で、息子夫婦が当然だと思っていた“親の犠牲”が一つずつ引き上げられ始める――。嫁姑2.6万字5 452 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 74 -
完結第25話
義母の合鍵が入らない
結婚五年目、情緒不安定を理由に義母に家の合鍵を預けさせられた。夫は母を庇い、私に我慢を重ねるよう笑って求めた。義母の無断侵入は続き、私の大切な机まで雨のベランダへ放り出されたが、私は一度も怒鳴らなかった。一ヶ月後、いつものように合鍵で入ろうとした義母の前に現れたのは、鍵穴すら存在しない最新の電子錠だった。激怒して電話をかけてきた義母に対し、今まで母に逆らったことのなかった夫が「僕が鍵を変えた」と告げた。嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場3.8万字5 160 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 95 -
完結第18話
顔合わせのすっぽかしと五通の裏切り
精密機械加工会社の令嬢・紗栄は、誠実に見えた恋人・弘樹と婚約を結ぶ。しかし両家顔合わせの直前から弘樹はモラハラを連発し横柄な態度へと急変。迎えた顔合わせの当日、高級料亭へ向かわず自室に留まる紗栄のもとへ、弘樹から「遅刻するな、調子に乗るな!」と激しい怒声が届く。 その瞬間、横にいた紗栄の父が電話を奪い取り一喝。「とぼけても無駄だ。お前の身辺調査は済んでいる」。 机の上に叩きつけられた興信所の分厚い茶封筒と、弘樹が抱える「5人の愛人」の証拠写真。怒り狂った弘樹が両親を連れて実家へ殴り込んできた時、彼らがひた隠しにしてきた信じがたい搾取の手口が暴かれ――。嫁姑|裡の顔2.7万字5 2989 -
完結第31話
「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円
「会計はいつものように嫁ね」――舅の還暦祝いに集まった親族18人。1人8800円の懐石に祝い鯛まで並ぶ中、夫・浩司も「エミ、よろしく」と当然のように私へ支払いを押しつけた。だが私は店員に、自分の9460円分だけ別会計にしてほしいと伝える。2時間後、幹事の浩司へ差し出された残り17人分の伝票は18万6740円。5年前、善意で一度4万円を払ったことから、7万円、10万円超と立て替えは膨らみ、返すという約束も消え、私の財布は田中家の“共有財産”にされていた。しかも浩司は親族に「エミが払ってくれる」と勝手に約束し、自分だけ気前のいい長男を演じていたのだ。経理主任の私はもう黙って穴埋めしない。自分の分だけ払い、残りは予約名義人へ――そして帰宅後、5年分のカード明細を前に、夫へ自分の嘘と向き合うよう突きつける。だが金の境界線を引いた途端、今度は義母が“親族のため”という新たな請求を持ち込み始める――。嫁姑4.6万字5 524 -
完結第19話
結婚翌朝の平手打ちと専務剥奪
「嫁のくせに初日から遅刻か」――結婚翌朝、老舗料亭グループ専務の夫・高志は、親族の前で私・美咲の頬を平手打ちした。私は管理栄養士として、持病を抱える義父・正一郎のために朝食を作り直し、配膳が5分遅れただけだった。しかも義母・かよが“嫁の腕試し”に使わせた古い調味料は、義父の薬と危険な組み合わせになるもの。誰も信じようとしない中、私は義父の御膳をひっくり返し、「命を粗末にするよりはマシです」と言い切る。すると駆け込んできた料理長・佐木が私を“白川先生”と呼び、封印されていた試作品の危険性を証言。父で食品衛生の専門家・白川敬吾からも緊急の電話が入り、食卓の空気は一変する。それでも母をかばい、私を嘘つき扱いする高志。だが義父が「彼女は私の命を救った」と頭を下げた瞬間、黒崎家が守ってきた序列は崩れ始める――。嫁姑2.8万字5 354 -
完結第25話
父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導
父の葬儀を終えて帰宅した私・水希を待っていたのは、夫・高志から突きつけられた離婚届だった。「底辺の血筋」「寄生虫」と亡き父まで侮辱した彼は、次期社長の座を手に入れるため、社長令嬢リナとの再婚を宣言し、10年間尽くした私を無一文同然で家から追い出す。絶望の中、私に残されたのは、父が最期に託した錆びたブリキ箱だけ。その届け先を頼りに東北へ向かうと、辿り着いたのは巨大企業・暁グループの総本部だった。しかも父の名を告げた瞬間、黒服の社員たちが一斉に頭を下げる。父は本当に貧しい町工場の職人だったのか――。やがて私は、父が残した“力”と、高志の会社を巡る不穏な事実を知る。もう泣いて耐えるだけの妻ではない。自分を捨てた男が次期社長の座を確信して総本部へ乗り込む日、私は静かに反撃の舞台を整え始める。嫁姑3.8万字5 261