"目覚めた部下にクビを問われた" 第7話
には、昨元に置きりにしかけたあの袋を提げていた。 は写真のアルバムだけではない。客部の輩たちが森さんへ向けていたメッセージカードの束と、彼女が災の直まで使っていた仕事用の帳のコピーを詰め込んでいた。
愚かだと言われれば、その通りだったかもしれない。 昨夕、病の窓越しに見た彼女の涙が、晩私の胸を苛み続けていた。
「私……何か、取り返しのつかないことをしちゃったの……?」
その掠れた呟きが、かられなかった。 彼女は自分の記憶がないせいで、自分が取り返しのつかない悪事を働いたのだとい込み、恐怖に震えている。 その誤解だけは、刻もく解かなければならない。 彼女を責めているなど旅館にはもいないこと。 むしろ全員が彼女に救われ、謝し、彼女の帰りを待っていること。 それを伝えさえすれば、あの氷のような怯えはらぐはずだ――そう信じたかった。
でくのは避けた。私の顔を見れば、彼女はまたの解雇宣告をいして直してしまう。 だから私は、森さんがまるで自分の娘のようにがっていた、客部の若スタッフである(かわい・ゆか)を連れてくことにした。
「ちゃん、いいかい」 病院のエレベーターので、私は歳の彼女に言い聞かせた。
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「森さんは今、混乱している。を打って、このの記憶がない。でも、君のことは覚えているはずだ。君が入社したときから、番くで仕事を教えてくれたのは森さんだからね。優しく、いつも通りに声をかけてあげてくれ」
は泣き腫らした目で、コクコクと頷いた。 「はい……支配。私、主任にちゃんとお礼を言いたいです。あの、私を先に逃がしてくれたのは主任だから……」
階の病のにつと、幸いにも夫の正彦さんの姿はなかった。 仕事の段取りをつけに、度自宅へ戻っている帯だった。
私はドアを回、静かにノックした。 「森さん、おはようございます。翠閣の、さんを連れてきましたよ」
返事はなかった。だが、にの気配がある。 私はゆっくりとドアをけた。
ベッドので、森さんは昨のままの姿勢で座っていた。 首元までいシーツを引きげ、部に入ってきた私たちをじっと見つめている。 私と目がった瞬、その瞳に微かな揺がったが、隣につの姿を認めたとき、彼女の眉がわずかにいた。
「……ちゃん?」
その声を聞いた瞬、の目から粒の涙がこぼれ落ちた。
「主任! よかった……本当に、よかった……!」 は駆け寄り、ベッドの柵越しに森さんの痩せたを握りしめた。 「識が戻ったって聞いて、私、もう居てもってもいられなくて……! 、痛くないですか? 煙、苦しくなかったですか?」
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森さんは、握られた自分のを戸惑ったように見つめていた。 「ちゃん……どうして、泣いているの? それに、その制……」
彼女の線が、が着ている翠閣のネイビーのスーツに留まった。 胸元には、にる『フロアリーダー』のバッジが留められている。
「私……まだ、あなたに仕事を教え始めて、ヶくらいしか経っていないはずでしょう? どうして、そんな派なバッジをつけて……」
が息を呑んだ。 田医師の言葉が、私の脳裏をよぎる。 、が入社したばかりの。森さんの記憶は、まさにその点で止まっているのだ。
「森さん」 私は歩にて、できる限り穏やかな声を作って話しかけた。 「あれから、もうが経ったんですよ。ちゃんは今、あなたの腕として、客部のフロアリーダーを務めてくれています。あなたが育てたんですよ」
森さんは、ゆっくりと私に線を移した。 その瞳には、昨ほどの剥きしのパニックはなかったが、代わりに底れない警戒のが宿っていた。 彼女はのをそっとし、自分の膝のに引き戻した。
「……ですか」
「ええ。信じられないかもしれませんが、本当です。あなたが眠っていた、スタッフ全員が配していました。これを見てください」
私は袋から、スタッフ全員でいたと、何枚かの写真を取りした。
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