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"目覚めた部下にクビを問われた" 第10話

どうやって証するのか。 警察も、消防も、現に残された状況証拠だけで判断をそうとしている。 そして本社の松永は、その隙を突いて森さんにすべてのを被せようとしている。

にいたのは、森さんだ。 彼女の証言が得られない以、客観な事実など、もうどこにも残っていないのではないか?

いや。

本当に、何つ残っていないのだろうか。

『私はクビを宣告されていたのよ! にはけと言われていたが、どうして命をかけて旅館のために戻るのよ!』

での彼女の絶叫が、でリフレインした。 そうだ。彼女自ですら、今の自分には理解できないと言った。 の記憶しかない美なら、災が起きた瞬、自分のを守るために真っ先に逃げしていたはずだ。

それなのに、彼女は戻ったのだ。 命の危険を冒して、猛煙のち込める別館階へ、で引き返したのだ。

そこには、絶対に理由がある。 「支配の改革を成功させるため」などというではない。 もっとく、もっと固な、彼女自の矜持に根ざした「何か」があったはずなのだ。

ちゃん」 私はのキーを取りした。 「旅館へ戻るぞ」

「旅館へ……? でも、別館はまだ警察のち入り規制が……」

「規制線は、実況見分の終わったエリアから順次解除されているはずだ。

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を見る。彼女が最にいた所を、もう度最初から調べるんだ」

閣の敷内は、異様な静けさに包まれていた。 本館の営業は当然ながら無期限止。駐には事関係者のトラックと、消防の両が数台まっているだけだった。

渡り廊を抜け、別館へとを踏み入れると、烈な焦げ臭さが腔を突いた。 消で撒かれたと、燃え落ちた断材の湿った悪臭。 元には、黒く炭化した梁の破片や、割れた窓ガラスが散乱していた。 歩踏みしめるたびに、が靴底からじゅわりと音をてる。

「支配、危ないですから元に気をつけてください」

から声をかけてきたのは、副支配の矢野(やの)だった。 私よりの矢野は、元採用のベテランで、の私の着任から事務方の実務を取り仕切ってきた男だ。 作業用ヘルメットを被り、にはクリップボードを持っている。

「矢野さん。別館階の現検証は終わったのか」

「ええ、正午に警察と消防の鑑識は引きげましたよ。元のダクト周辺はまだち入り禁止ですが、客側の廊なら歩けます」 矢野は溜息をつき、ヘルメットの鍔を押しげた。 「それより支配、病院へかれたそうですね。本社の松永次から連絡がありましたよ。森さん、相当取り乱しておられるとか」

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「……ああ」

「困りましたねえ」 矢野は顔をしかめ、さも配そうに眉尻をげた。だがその声のトーンには、どこか事態を巻きに眺めているような儀な響きがあった。 「記憶がないとなると、当夜の状況確認もままならない。松永次のおっしゃる通り、適当なところで彼女にいてもらって、打ちにするのが番現実なんじゃないですか? このまま引けば、本館の営業再の目途すらちませんよ。従業員の活だってかかっているんです」

「矢野さん、君までそんなことを言うのか」 私がち止まり、たい線を向けると、矢野はわずかに線を泳がせた。

「いや、私だって森さんには苦楽を共にしてきたがありますよ。ですがね、組織を守るためには、誰かがを被らなきゃならないもある。それに、彼女にはい退職るんでしょう? あの齢で、記憶障害まで負って、現復帰なんてどのみち無理なんですから……」

胸の奥で、黒い炎がチリチリと音をてて燃え広がった。 誰もが、森さんの「沈黙」を都よく利用しようとしている。 、この旅館の台骨を支え続けてきたの女性のを、帳簿の数字をわせるかのように簡単に切り捨てようとしているのだ。

「私は諦めない」 私は矢野の横を通り抜け、焦げた階段へをかけた。

「彼女が無実である証拠を、現から見つけす」

「証拠って……支配! 鑑識が入ったですよ、何も残っちゃいませんよ!」

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