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"目覚めた部下にクビを問われた" 第12話

裏面には、普段なら翌の引き継ぎ事項がきされるのスペースがある。 そこにも、黒いボールペンの文字が残されていた。 災のでインクがわずかに滲んでいたが、面にく刻み込まれた圧の溝が、その言葉をはっきりと残していた。

その文章を読んだ瞬、私の全から血の気が引いた。

『19:40 別館3階非常扉、ラッチ連良。器作より自閉鎖せず放状態のまま。煙流入を防ぐため、ピンにて固定。矢野副支配へ即修繕を請済。 (返答:今期は修繕予算ゼロ。業者を呼ぶはない。騙し騙し使えとのこと。事故が起きたらどうするのか)』

文字はそこで途切れ、激しい圧で引かれたアンダーラインが残されていた。

私はバインダーを握りしめたまま、そのち尽くした。

ピンを落としたのは、森さんだった。 だがそれは、過失でも隠蔽でもない。 がった際、壊れて閉まらなくなった防扉から煙がのフロアへ流入するのを防ぐための、緊急の現判断だったのだ。 そして、その扉が「度閉めたらからかなくなる」という致命な欠陥を抱えていたことを、旅館の管理職である矢野副支配は、災のからっていた。

っていながら、放置したのだ。 『予算がない』という理由で。

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「支配? 何か見つかりましたか?」

から、階段をがってくる音が聞こえた。 矢野だった。 ヘルメットを脱ぎ、額の汗を拭いながら、怪訝そうな顔で私にづいてくる。

「そんな煤だらけの物を持って……何がいてあるんです?」

私はゆっくりとがった。 バインダーを背に隠すことなく、胸のに掲げ、矢野の目を真っ直ぐに見据えた。

「矢野さん」 私の声は、自分でも驚くほどく、たく澄んでいた。

「この防扉のラッチが壊れていたこと、森さんから報告を受けていましたね」

矢野のが、ピタリと止まった。 その顔から、先ほどまでの笑いが、潮が引くように消えった。

に、焦げた材がきしむ音だけが響いた。 が、割れた窓から吹き込み、私のの焦げたシートをパタパタと震わせた。

「……何のことですかな、支配」 矢野の目が細められ、喉仏がさくした。

「誤魔化すな。彼女はここに記録を残している。あなたが修繕を拒否し、『騙し騙し使え』と命じたことも、すべてだ」

矢野は数秒沈黙した。 そして、ふっと元を歪め、吐き捨てるように笑ったのだ。

「……それが、どうしたって言うんです?」

「何……?」

「支配。あなた、自分が何を言っているのか分かっているんですか?」 矢野は歩、私に詰め寄ってきた。その目には、先ほどまでの卑屈さは微もなく、剥きしの敵が渦巻いていた。

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「修繕予算をゼロにしたのは、誰です? 設備投資の稟議を片っ端から突き返して、『無駄な経費は円たりとも認めない』と現を締めげたのは、どこの誰ですか?」

臓を、太い針で突きされたような衝撃だった。

、あなたが京から乗り込んできて最初にやったことは何でした? 件費の削減と、修繕積の凍結ですよ。私が『別館の防設備はもう寿命です、いつ事故が起きてもおかしくない』と何度も稟議したのを、全部ゴミ箱に捨てたのは……ならぬ、あなたじゃないですか!」

言葉がなかった。 呼吸が止まり、界が激しく揺らめいた。

。 支配のデスクのに積まれていた、何枚もの稟議。 そのに、確かにあった。 『別館防シャッターおよび避難扉連装置改修事 概算費用万円』。

私はその類に、赤ペンできくバツをつけたのだ。 『現の設備点検で法定基準内であれば、予防交換は常点検の注油で対応のこと』。 徹な跡でそうき殴り、矢野に突き返したのは――この私だった。

「私がケチったんじゃない。あなたがさなかったんだ!」 矢野は指を突きつけ、嘲笑うように言った。 「本社の松永次も、そのことは百も承ですよ。だからこそ、森さんの過失で処理しようとしているんじゃないですか。

もしこの扉の欠陥が表にれば、警察が宅捜索に入りますよ。そして、過の稟議の束を押収する。

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