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"目覚めた部下にクビを問われた" 第20話

当夜の事実確認をめさせていただきます」

正彦さんは無言のまま、子をテーブルの空いた角へ据え、自らはその背に仁王ちになった。

「では、始めます」 松永が類をめくった。 「森主任。消防の現検証により、別館階の防区画扉が、の固定ピンによって能な状態になっていたことが判しています。その結果、宿泊客名の避難が遅れ、救な支障をきたした」

松永は鏡のブリッジを指先で押しげ、鋭い線を森さんに落とした。

「当、別館階の最終巡回を担当したのは、あなたですね」

森さんは、唇を文字に結んだまま、さく頷いた。 「……はい」

「その際、あなたは防扉のロックピンを操作しましたか?」

内の空気が、ピンと張り詰めた。 矢野が息を殺し、神崎が目を細めて森さんを注する。

森さんは、膝ののブランケットをぎゅっと掴んだ。 その肩が、微かに震えていた。 記憶の空をいくら引っ掻き回しても、煙の匂いも、サイレンの音も、何も浮かんでこないはずだった。 その暗のなかで、企業の役員たちに囲まれ、罪を問われるような線を浴びせられる恐怖が、どれほどのものか。

彼女は、さくいた。 声が、掠れていた。

「……覚えて、いません」

「覚えていない?」 松永の声のトーンが、わずかにくなった。

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森さん。医師からの診断は拝見しました。逆性健忘とのことですね。しかし、事故直の数の記憶がないからといって、客観な事実まで消えるわけではありません」

松永は枚の写真を卓に滑らせた。 鑑識が撮した、あの焦げた防扉のクローズアップだった。

「扉のレバーとピンの周辺から、あなたの指紋が検されています。そして、現検証の結果、ピンはからい力でに押し込まれていた。……森さん、あなたは災の警報を聞き、パニックになって、誤ってピンを押し込んでしまったのではないですか?」

「松永さん」 正彦さんがりを押し殺した声で割り込もうとした。 「あいつは記憶がないって言ってるだろうが!」

「ご主を挟まないでいただきたい!」 松永は徹に制止した。 「私は彼女の記憶を責めているのではありません。当の極限状態を考えれば、パニックによる誤操作はとして分に起こり得ることです。問題は、それを正直に認めていただけるかどうかです」

松永はを乗りし、まるで同を装うように柔らかな声を作った。 だがその言葉の端々には、逃げを塞ぐためのたい棘が仕込まれていた。

森さん、あなたは、翠閣に尽くしてこられた。会社もあなたの功績を無にするつもりはありません。

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もし、パニックによる過失であったと認めていただけるなら、会社は全力であなたを守ります。警察に対しても、抗力にいヒューマンエラーとして処理するよう働きかける。退職の増額や、今の医療費の全額補償も約束します」

森さんの瞳が、激しく揺らめいた。 昨夜、病で矢野に突きつけられた甘い毒と、まったく同じ論法だった。

記憶がない。 自分に何ができたのかも、何を違えたのかも分からない。 認めさえすれば、この恐ろしい所から解放される。夫に迷惑をかけずに済む。 そうわせるための、計算され尽くした誘導尋問だった。

森さんの震える指先が、テーブルの端に置かれた類へと、吸い寄せられるように伸びかけた。

「さあ、森さん。あなたの記憶にはなくとも、状況から見てそうであった能性を認める……そのをいただければ、すべて終わります」

松永が、ボールペンを彼女のに差しした。

森さんは息を詰め、胸元を掻きむしるようにして俯いた。 その背が、圧に耐えかねて、今にも折れそうになっていた。

ガタァンッ!!

激しい音が、静まり返った会議を震わせた。

私が両でテーブルを叩き、がっていた。

松永の差ししたボールペンが卓を転がり、カチャリと音をててに落ちた。 全員の線が斉に私に突き刺さる。

神崎専務がそうに眉をげた。

「坂井支配、何の真似だ」

「そこまでだ、松永次

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