みかん小説
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"妹のドレスを二十センチ切った" 第8話

「だから、美玖が置物になればいいと?」

「そうよ!」 美玖は涙を流しながら、喉をからして叫んだ。 「たった! 披宴のたった、あのい布のを押し込めて、言われた通りに座ってニコニコ笑っていれば、私は『富樫健の妻』になれるの! 世田のあの綺麗なマンションにんで、お母さんにも仕送りをして、みんなに『美玖ちゃんは玉の輿に乗って幸せになったね』って言ってもらえるの!」

美玖はがり、スウェットの裾を乱暴に捲りげた。

した。 朝のたいで、その傷痕はあまりにも々しかった。 膝から首にかけて、皮膚がひきつれ、と赤が入り混じった揃いなケロイドが、まるで焼け爛れた皮のように美玖の細い脚に張り付いている。 皮膚移植の継ぎ目には、何本もの縫痕が、百のように点々と残っていた。

「見てよ! これを見て、誰が『美しい嫁』だとうの?!」 美玖は自分の傷ついた脚を、自らの拳で何度も、何度もく叩いた。 鈍い音が部に響く。

「やめなさい、美玖!」

私はわずがり、美玖の両首を掴んだ。 美玖のは氷のようにたく、刻みに痙攣していた。

して! 見てよこれ! 気持ち悪いでしょう?! 自分でも吐き気がするよ! 鏡を見るたびににたくなるよ! それを……健さんは見ないふりをしてくれたの! 『隠していれば問題ない』って、逃げを作ってくれたの! それをなんで……なんでお姉ちゃんが引き剥がすのよぉッ!」

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美玖は私の胸に額を押し当て、子供のように泣き崩れた。 私のを掴む指先に、痛いほどの力が込められる。

その涙のみに、私は言葉を失った。

正論など、何の役にもたなかった。 「ありのままのあなたをしてくれるが本物だ」などという綺麗事は、この獄のような現実をきる美玖にとっては、ただの傲な毒でしかなかったのだ。

美玖は戦いたくなかったのだ。 傷を誇るヒーローになりたかったわけでも、世の偏見にち向かうジャンヌ・ダルクになりたかったわけでもない。 ただ、痛みを隠し、体面を取り繕い、並みの「普通の幸福」の枠のに、滑り込みたかっただけなのだ。

そして私は、その美玖が必で掴み取ろうとしていた細い糸を、自分ので断ち切ってしまった。 「妹を救う」という義名分を掲げながら、実際には、健の偽善にがならなかった自分のプライドを満たすために。

「……ごめん」

私は美玖の震えるを置こうとした。 だが、そのは空で止まり、触れることができなかった。 加害者のが、被害者を慰めることなど許されるはずがなかった。

「ごめん、美玖。私は……あなたの痛みを、何も分かってなかった」

私の声は震えていた。 昨夜、鋏を握っていたのあの徹な決は、美玖の剥きしの絶望のに、跡形もなく崩れっていた。

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「今から、式話しよう」 私は言った。 「私が全部話す。私が気が狂ってドレスを切り刻んだって、健さんにも、あのお義母さんにも全部言う。美玖は被害者だって。式を延期して、ドレスを仕て直して、美玖が納得する形で――」

「バカじゃないの」

美玖が、私の胸から顔をした。 その顔には、先ほどまでの激しいの昂ぶりは消えていた。 代わりに浮かんでいたのは、底れないたさだった。

美玖は乱れた髪をで払い、をすすると、に落ちていたドレスを見ろした。

「延期なんてしたら、富樫が納得するとう? 『そんな常識のない庭の娘とは結婚できない』って、破談になるに決まってるでしょ」

「でも、このままじゃ――」

くよ」 美玖は言った。 「このドレスを着ていく」

「美玖……?」

美玖は捲りげていたスウェットの裾をろし、ゆっくりとベッドの縁に腰掛けた。

「お姉ちゃんのことは、許さない」 美玖の瞳が、私を真っ直ぐに見据えた。 その線には、かつての甘えた妹の面は微もなかった。 「勝に私の傷を暴いて、勝に私の選択肢を奪ったこと、ぬまでんでやる」

「……うん」

「でもね、健さんがどう反応するかだけは、見てみたい」

美玖の元に、歪で、どこか狂気じみた笑みが浮かんだ。

「『どんな傷があってもしてる』って言ったあのが、私のを隠す布を失った、どんな顔をするか。

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