みかん小説
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"妹のドレスを二十センチ切った" 第9話

あのお義母様が、自の披宴で、このみっともない傷を見せつけられた、どんな言葉を吐きすか……それを確かめにく」

それは、希望などではなかった。 絶望の底で、すべてを連れにして破滅へと向かうような、酷な決断だった。

ピンポーン。

張り詰めた沈黙を破り、玄関のチャイムが子音を鳴り響かせた。 午張ヘアメイクのスタッフが到着したのだ。

「来たわ……! どうしよう、美玖、どうするのよ……!」 廊から母の怯えた鳴が聞こえてくる。

美玖は呼吸をつすると、がった。 「お姉ちゃん。ドレスを持ってきて」

私はから、裾を切り落とされたドレスを抱えげた。 ずしりとしたみが、腕にのしかかる。 昨夜切り落とされたセンチの布の代わりに、今、このドレスには美玖の剥きしの覚悟という、目に見えないが縫い付けられていた。

リビングのドアをけると、母が青ざめた顔でち尽くし、その向こうで、黒いスーツを着た女性ヘアメイクが、きなメイクボックスを抱えて会釈をしていた。

「おはようございます。ブライダルヘアメイクの担当の佐藤と申します。美玖様、本はおめでとうございます」

チーフの女性が、プロフェッショナルな笑顔でリビングにを踏み入れた。 だが、その線が、私が腕に抱えているドレスの裾に留まった瞬、彼女の完璧な笑顔がピシリと凍りついた。

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「あら……? そちらのドレス……」

アシスタントの若い女性が息を呑み、目を見いた。 最級のミカドシルクのドレス。 その頃が、膝センチのラインで平に断ち切られ、切りの糸がわになっている。

「あ、あのね! これにはい事があって……!」 母が泡をって言い訳を始めようとた。

「事故です」 美玖が、母の言葉を遮った。 その声は、驚くほど静かで、凛としていた。

「昨夜、裾に修復能な汚れがついてしまい、急遽、裾をカットしました。このまま着用します」

ヘアメイクのチーフは、のキャリアので数くの修羅を見てきたのだろう。 瞬だけ揺の表を見せたが、すぐにプロの無表を取り戻した。 彼女は散らばった布の端や、美玖のスウェットの裾から微かに覗く傷痕の赤みを目敏く察したはずだったが、それについて切の詮索をしなかった。

「……承いたしました。では、おの関係もございますので、先におヘアとメイクからめさせていただきますね。婦様、こちらの子へどうぞ」

美玖は鏡のに座った。 母はおろおろと部の隅でを揉み、私は壁際にち尽くしていた。

ブラシが美玖の髪を梳く音。 スプレーの微細なう音。 パフが肌を叩くリズミカルな音。

鏡ので、美玖の顔がみるみるうちに「完璧な嫁」

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へと仕げられていく。 泣き腫らした瞼の赤みはコンシーラーで消され、浅黒くくすんでいた肌には透のあるファンデーションが施され、唇には華やかなコーラルピンクのルージュが引かれた。 誰もが息を呑むような、美しく、気品に満ちた嫁の顔。

だが、その完璧な顔のにある体には、まだあの汚れたスウェットが穿かれていた。

「では、お着替えに入ります。お母様、お姉様、しお伝いいただけますでしょうか」

分。 ヘアメイクを終えたチーフが、ドレスを広げた。

美玖はスウェットを脱いだ。 その瞬、ヘアメイクのアシスタントの息を呑む気配が、肌に伝わるほどはっきりとじられた。 美玖のの傷痕は、内の蛍灯ので、さらに異様なを放っていた。 だが美玖は、恥じるようにを隠すことも、縮こまることもなかった。 ただ、たい目でを見つめていた。

ドレスが、美玖のから被せられる。 背の無数のくるみボタンが、つずつ留められていく。 ウエストが締めげられ、パニエが広げられる。

「フィッティング、完いたしました」

チーフの声に、美玖が全鏡のった。

息を呑んだのは、母だった。 母は元を押さえ、そのままへたり込むようにソファーに倒れ込んだ。

鏡のにいたのは、異形の嫁だった。

は、ため息がるほど完璧だった。

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