みかん小説
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"妹のドレスを二十センチ切った" 第13話

もはや、母親のを取り繕う余裕すら失っていた。

「そんなグロテスクな傷を晒して歩く嫁を連れて、俺がどんな顔をしてバージンロードを歩けばいいんだよ! 『富樫は同で傷物を押し付けられた』って、会社で笑いものにされるんだぞ! お、俺のキャリアを潰す気か?!」

『グロテスク』。

その単語が落ちた瞬、部の空気がさらに段、凍りついた。 座していた母ですら、息を呑んで顔をげた。

美玖は、瞬きつしなかった。 ただ、その瞳の奥で、何かがプツリと音をてて千切れるのが見えた。

「健」 美玖の声は、恐ろしいほど平坦だった。 「、葉ったのこと、覚えてる?」

さんは苛たしそうに舌打ちをした。 「あ? 何の話だよ急に!」

「砂浜で、私が着になるのを怖がって、ズボンを脱げなかった。あなたが私のに触れて、なんて言ったか覚えてる?」

美玖は自分の太腿から膝、そしてケロイドの残る脛へと、ゆっくりと自らのを滑らせた。

「『美玖ちゃん、隠さなくていいよ。この傷はね、美玖ちゃんがトラックに負けないで、勇敢にき残った勲章なんだから。俺は誇りにうよ』って……泣きそうになりながら、言ってくれたよね」

さんの顔が、瞬だけ引きつった。 過の自分の言葉をしたのだろう。 だが、その揺は、すぐに醜悪な自己防の炎にかき消された。

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「それは……!」 健さんはネクタイの結び目を乱暴に緩め、吐き捨てるように言った。 「それはだけの話だろ!!」

に、健さんの絶叫が響き渡った。

きりの部や、誰も見てない砂浜なら、いくらでも受け入れてやるよ! 『に、痛かったね』って抱きしめてやるよ! でもな、公のは別だろ! 社会には社会のルールがあるんだよ! 自分の欠陥をわざわざに晒してにさせないのが、のマナーだろうが! 俺が求めてるのは、俺の隣で完璧に微笑んでくれる、傷のないトロフィーなんだよ! なんでそれを台無しにするんだよッ!」

さんのからび散った唾が、美玖のベールに付着した。 その醜悪な顔。 そのな論理。 『している』のではなく、『欠陥のある女を慈してやっている自分』に酔っていただけの、空っぽな男の正体。

母はに突っ伏したまま、もはや声もせずに刻みに震えていた。 母が「の救世主」と崇め奉っていた男の化けの皮が、完全に剥がれ落ちていた。

だが、美玖は泣かなかった。 今朝、私のであれほど激しく泣き崩れ、自らの脚を殴りつけていた妹は、どこにもいなかった。 美玖の瞳は、底なしののように静まり返っていた。

「そう」 美玖はさく頷いた。 「それが、あなたの本音だったのね」

「美玖さん」 それまで然と息子の醜態を眺めていた加奈子さんが、鋭い声を差し挟んだ。

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加奈子さんは首の級なスイス製計を瞥すると、顎をしゃくってキャビネットのの内線話を指した。

「もうはありません。分です。あと分で親族紹介、そのあとすぐに挙式ですわ」

加奈子さんの声には、抹の焦燥と、それ以酷な実利主義が滲んでいた。 息子の本性が暴かれようが、破談の危に瀕しようが、彼女にとって最優先なのは「今の披宴を、滞りなく富樫の体面を保ったまま終わらせること」だけだった。

「健の言う通りです。あなたのそのわがままに付きって、富樫の恥を晒すわけにはまいりません」 加奈子さんはドアの横にあるインターホンへ歩み寄り、受話器を取りげた。 「コンシェルジュデスク? ええ、富樫です。至急、至急、子を台、この鳥のへ持ってきなさい。ええ、それから、ホテルにある等で分い、ベルベットのブランケットも緒にね。至急よ」

ガチャリと乱暴に受話器が戻される。 母が顔をげ、すがるような目で加奈子さんを見た。

「お、奥様……子、ですの……?」

「ええ」 加奈子さんは切のを交えずに言い放った。 「婦が今朝、控首を激しく捻挫したことにします。歩困難のため、急遽子での入にする。元は、ホテルのブランケットで爪先まで完全に覆い尽くします。

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