みかん小説
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"棺の中の男を、夫は知らない" 第4話

「警察?」「アパートの類……?」

警察官の男は、厳粛なに配慮してげながら、持っていた黒いブリーフケースから、透なプラスチックの類袋を取りした。

「お兄様がくなられたアパートの鍵と、貴品の預かり証です。本来であれば警察署でお渡しするはずでしたが、本に部の退ち会いが必とのことで、産管理会社からの請もあり、こちらへお持ちしました」

浩平は涙を拭い、呆然としながらその類袋を受け取ろうとした。 だが、そのに私がて、警察官に向かってげた。

「妻のゆみと申します。夫は今、取り乱しておりますので……私が確認させていただきます」

「ああ、奥様ですか。恐れ入ります」

警察官から渡された透な袋のには、古びた真鍮の鍵が本、黄ばんだプラスチックのタグをぶらげて入っていた。 そして、数枚の公類。 にある『変体発見報告および遺留品引渡』の用に、故の氏名と、発見された所の所が記載されていた。

私の線が、その所の文字列に吸い寄せられた。

京都杉並区丁目……階建て、栄荘

考が、止した。

荻窪。 央線の、荻窪駅。

私は、ゆっくりと顔をげた。 私の線の先には、呆然とち尽くす浩平と、そうに警察官を睨みつけている義母の澄子がいる。

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澄子が暮らす佐伯の本は、吉祥寺の閑静なにある。 荻窪駅から吉祥寺駅までは、でたったの駅。 乗は、わずか分。 仮にこののアパートから佐伯の実まで歩いたとしても——なら、分もかからない。

「……浩平」

私の唇から、乾いた掠れ声が漏れた。

「何だ、ゆみ……もう頼むから、これ以は……」

「お義兄さんは、どこにっていたの?」

「え?」

、お義母さんは親戚じゅうに言っていたわよね。『達也は族を捨てて、方へ逃げてった』って。『関のほうで借まみれになって方をくらました』って」

澄子の顔が、ピクリと引きつった。

私は類を握りしめ、夫の顔の真んに突きつけた。

「見て。お義兄さんがくなった部所よ」

浩平が、線を類に落とした。 印字された所を読んだ瞬、彼の両目が限界まで見かれた。 呼吸が止まり、胸元で握りしめられていた彼の拳が、刻みに、激しく震え始めた。

荻……? そんな……嘘だろ……?」

「嘘じゃないわ。警察が確認した、正式な引き渡し類よ」

私の声は、自分でも驚くほど徹に響いた。

「お義兄さんは、くへ逃げてなんかいない。蒸発なんてしていない」

んだものとして扱われ、恩らずの悪として親族じゅうから罵倒され続けた男。 毎送られてくる弟からの万円を、円も使わずに送り返し続けた男。

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「お義兄さんはずっと、あなたの……お義母さんのの、すぐ隣にいたのよ。歩いてたった分の所で、で暮らしていたの」

を吹き抜けたたいが、祭壇のを微かに揺らした。 棺のの達也さんは、何も語らない。 だが、誰も疑わなかった『佐伯の物語』に、決定な亀裂が入った音だけが、私のに確かに聞こえていた。

葬炉のい鉄の扉が閉まる鈍い音は、まるで誰かのを無理やり切り落とす断台の刃のようだった。

ゴオオという微かな燃焼音が壁の向こうから響き始める。 親族たちがち並ぶの控えは、息が詰まるほどの沈黙に支配されていた。

「……終わったわね」

く、どこか堵したような声をもらしたのは、義母の澄子だった。 黒いレースのハンカチをバッグにしまい、子の背もたれにく体を預けている。 その顔には、先ほど斎で取り乱して私を鳴りつけたときの潮はすでに消え失せ、たく乾いた表だけが残っていた。

「これで、佐伯の恥さらしも煙になって消えるわ。親族の皆様にも、ようやく示しがついたというものよ」

親戚たちは誰もその言葉に異を唱えなかった。 ただ居悪そうに目を伏せ、えた緑茶のコップを指先で回している。

族を捨てて逃げ回っていたはずの男が、実は実から歩いて分のボロアパートで野垂れんでいた。

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