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"棺の中の男を、夫は知らない" 第5話

その事実を警察官から突きつけられた直だというのに、義母のからるのは、んだ息子への悼みではなく、世体への執着だけだった。

「浩平」 澄子が、私の隣で虚ろな目をしている夫の膝に、骨ばったを置いた。 「遺骨を拾ったら、そのまま私のくわよ。仕しの精落としを用させてあるの。親戚の皆様にも、あなたがちゃんとお礼を言いなさい」

「……母さん」 浩平の声は掠れていた。 「兄貴のアパートは……どうするんだ。警察のは、今に部の確認をしてくれって……」

「あんなもの、見にく必なんてありません!」 澄子の声が、ぴしゃりと控えの空気を切り裂いた。

「どうせゴミ溜めみたいな部に決まってるわ。に敷めに渡して、専の清掃業者に全部処分させなさい。具も、も、あの子が触ったものはつ残らずゴミ袋に詰めて燃やしてしまえばいいのよ。あんな吉なもの、このに持ち込ませるわけにはいかないわ」

「でも……」

「でも何なの!? あんた、まだあの恩らずに未練があるの!? あの子がどれだけお父さんと私を苦しめたか、あんたくで見ていたでしょう! それとも何? またあの子の肩を持って、私を裏切る気!?」

澄子の目が、ギラリと異常なを帯びて浩平を射抜く。 浩平はビクッと肩を震わせ、喉の奥で息を詰まらせた。

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いつもの景だった。 浩平が自分ので何かを言おうとするたび、義母は「裏切り」「孝」という劇薬のような言葉を投げつけ、彼の考を麻痺させてきたのだ。

浩平の握りしめた拳が、喪のズボンの張っている。 彼ので、かけて刷り込まれた恐怖と、先ほどった「分の距」という謎が、激しく衝突していた。 このままでは、彼はまた母親の言いなりになり、真実に背を向けて逃げす。 兄のきた証拠が、業者によって完全ににされるのを、ただ指をくわえて見送ることになる。

私は、浩平の震えるに、自分のねた。

「お義母さん」 私の静かな声に、澄子が忌々しそうに線を向けた。

「私たちは、精落としにはきません」

控えの空気が凍りついた。 親戚の何かが、息を呑んでこちらを見る。

「……あんた、さっきから本当にいい加減にしなさいよ。嫁の分際で、佐伯の法事にこれ以を挟む気?」

を挟んでいるのではありません。妻として、夫の兄の最所を見届ける義務があると言っているんです」 私は澄子の徹な目を、正面から見据え返した。 「警察から預かった鍵があります。部の引き払いのち会いは、親族がうのが筋です。業者が入るに、私と浩平で部を確認します」

「浩平をかせないわよ!」

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澄子ががり、息子の腕を掴もうとした。 「浩平、聞きなさい! ったら承しないわよ! あんたがそんな潔な所にくなら、私はもう度とあんたの顔を見ないからね! 親子の縁を切るわよ!」

脅迫だった。 子供の頃から、浩平を縛り付けてきた呪いの言葉。 浩平の瞳が、恐怖で激しく揺らいだ。 「母さん……そんな……」と、々しくすがりつこうとする。

「浩平」 私は夫の襟首を掴むくらいの勢いで、彼の肩をく揺さぶった。 「を見て。あなたはもう、お義母さんのご嫌を伺うためだけにきる子供じゃないの。歳のの男よ。実の兄が、なぜあなたのすぐそばでななければならなかったのか……その答えから逃げるなら、私はあなたを軽蔑する」

浩平の息が止まった。 私の言葉が、刃のように彼の胸の奥くに刺さったのが分かった。 彼は震える瞳で私を見つめ、それから、自分の腕を掴む母親のを見た。

「……ごめん、母さん」

浩平のから、掠れた声が絞りされた。 「俺……ってくる」

「浩平!? ちょっと、浩平!!」

澄子の切り声が、い廊に響き渡る。 浩平は母親のをゆっくりと、しかし確実に振りほどいた。 背からんでくる「親孝者!」「あんたなんか息子じゃない!」という罵声を背に浴びながら、私は浩平の背を押し、へと急いだ。

の駐めてあったに乗り込むと、浩平はハンドルに額を押し当て、過呼吸のように肩をさせた。

彼の喪のポケットので、スマートフォンが狂ったように振を続けている。

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