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"棺の中の男を、夫は知らない" 第17話

『私が恩らずの悪になり、財産を狙って逃げした者としてれば……母は自分を捨てた私を憎むことに全エネルギーを注ぎ、残された浩平を、自分を救ってくれる唯の優しい息子として神格化するはずです。憎しみの対象がにいれば、母は浩平が庭を持つことを、許さざるを得なくなります。浩平を自由にする方法は、これしかありません』

読み終えた瞬、広は墓のような静寂に包まれた。

として、言葉を発することができなかった。 、自分たちが汚く罵り、族の恥として切り捨てた男。 その男が背負っていたもののあまりのさと、壮絶なまでの自己犠牲。 叔父たちは皆、恥じ入るようにを垂れ、叔母たちはハンカチを目元に押し当ててすすり泣いていた。

「……あ、ああ……」 澄子のから、をなさない掠れた呻きが漏れた。 彼女の顔は完全に蒼になり、目だけが泳いでいた。 「違う……私は……私はそんなこと頼んでない……あの子が勝に……」

「そうだ、母さん」

浩平が、静かに言った。 その声には、もはやりは含まれていなかった。 ただ、どこまでもたく、どこまでも澄んだ絶望だけがあった。

「兄貴は勝にやったんだ。母さんの病な執着から、俺を守るために。……でもね、母さん。本当に恐ろしいのはそこじゃない」

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浩平は、自分の胸にを当てた。

番醜くて、番卑怯だったのは……母さん、あなたじゃない。俺だ」

の全員が、息を呑んで浩平を見つめた。

「浩平……?」私がわず声をかけると、浩平は私に向かってさく首を横に振った。

「ゆみ、止めないでくれ。これは、俺が自分ので言わなきゃいけないことなんだ」

浩平は親戚たちを、そして畳に座り込む母親を見据えた。 その瞳には、血を流すような自省のが宿っていた。

「俺は……気づいていたんだ。、兄貴がったあのから、何かがおかしいってのどこかで気づいていた。兄貴がそんなに酷なじゃないことくらい、弟の俺が番よくっていたはずだった」

浩平の唇から、苦渋に満ちた告が絞りされる。

「でも、俺は見ないふりをした。兄貴が悪者になってくれたおかげで、母さんの攻撃が止まったからだ。兄貴がを被ってくれたおかげで、親戚の皆は俺を『母親を支える派な孝息子』だと褒め称えてくれた。俺はその居の良さに甘えて、兄貴の犠牲のに胡をかいて、ぬくぬくと結婚し、幸せな活をに入れたんだ!」

浩平は膝から崩れ落ち、畳に両を突いた。

「俺は、毎万円を兄貴の座に振り込んでいた。でもそれは、兄貴を助けるためなんかじゃなかった! 『俺は兄を見捨てていない』という免罪符が欲しかっただけだ! 返されても確かめにかなかったのは、真実をるのが怖かったからだ! もし兄貴の本当のいをってしまったら、この居のいい『親孝息子』の座から引きずりろされるのが怖かったからだ!!」

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浩平の額が、畳に叩きつけられた。 ゴソッという鈍い音が響く。

「俺が兄貴を殺したんだ……! 母さんの病気と、俺のさと卑怯さが、兄貴をあの畳半に閉じ込めて、歳でなせたんだよ!!」

浩平の慟哭が、仏を満たした。 それは者を責める声ではなかった。 自らの内にある欺瞞とさを、に晒し、自らを切り裂く刃のような叫びだった。

親戚の誰も、浩平を責めることはできなかった。 自分たちもまた、澄子の言葉を鵜呑みにし、達也さんを切り捨てることで、この平穏な親族関係を維持してきた共犯者だったからだ。

「浩平……」 澄子が震えるを伸ばし、浩平の肩に触れようとした。 「もういいのよ……あんたは悪くないわ。あの子のことはもう忘れましょう。これからはで……こので仲良く暮らせばいいのよ。あんたが私の面倒を見てくれれば……」

「触るな!」

浩平が、鋭くそのを払いのけた。 彼はゆっくりと体を起こし、母親の顔を正面から見据えた。 その瞳から、涙は消えていた。 そこにあったのは、母親の操り形としてきてきた過との、完全な決別だった。

「俺は、このには戻らない。母さんの面倒も、直接見ることは度とない」

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