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"長女にだけ渡された鍵" 第3話

『健、お番優秀だ。朋美は野が狭く、織は世らない。このの柱として、最にすべてを背負い、名を残せるのはおしかいない』……そういてある」

私は凍りついたで、その便箋を引き寄せた。

インクの染み、父独特のがりの癖字。違いなく父の直だった。 付は。父がまだ胃がんの再発をらされるのものだ。

そこには、健の言う通りの文言が並んでいた。 女の私を「野が狭い」、女の織を「世らず」と切り捨て、京で働く次男だけを唯の理解者、唯の希望として持ちげる言葉の数々。

「な、何よこれ……」 織が横からを覗き込み、顔を急速に失っていく。 「こんなの、デタラメよ! 父さんが健にこんなくわけない!」

「デタラメはおらのだろ」 健淡に言い放つ。 「親父は現実主義者だったんだよ。方のしがない公務員で終わった親父にとって、京の企業の役員候補になった俺だけが、自分のの唯の成功作だったんだ。だから俺にすべてを託した。当たりだろ」

「違う!」 織が叫ぶ。 「父さんが本当にしてたのは私よ!『お番似ている』って、ずっと、子どもの頃から言われてた! 姉さんはお伝いさん代わり、健は見栄を張るための板、私だけが父さんの本当の娘だったのよ!」

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「やめなさい!」

私の叫び声が、畳半の仏霊した。 臓が鐘を打っていた。 喉の奥がカラカラに渇き、や汗が背筋を伝っていく。

私のにある真鍮の鍵。 織がすがりつく、最期の夜の涙の告。 健が突きつけた、半に届いた直

……全部、違う。

父がに言っていた言葉が、あまりにも綺麗に、残酷なほど完璧にい違っていた。

『お番しっかりしている。のことはおにしか頼めない』 私にはそう言って、責任を煽り、実の雑務と介護の方支援を丸投げした。

『お番優秀だ。このの柱は、本当はおなんだ』 健にはそう言って、男としてのプライドを刺激し、京での成功を実の威に利用した。

『おだけが、私に番似ている』 織にはそう言って、孤独な娘の罪悪に付け込み、体制の介護者として元に縛り付けた。

「……父さん」 私のから、絞りすような声が漏れた。

どれが本音だったのか。 どれが嘘だったのか。

いや、違う。 直が、脳の奥で警鐘を鳴らしていた。

どれも本音で、どれも嘘なのだ。 父は、私たちに、それぞれの「番都のいい役割」を演じさせ続けるために、最も障りのいい言葉を、個別に処方していただけではないのか。

「……見にこう」 私はがった。 の裏がたく痺れていたが、構わず畳を踏みしめた。

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「朋美姉さん?」 織が怯えたような目で私を見げる。

庫よ。けてみれば分かる。父さんが本当に誰を信用して、何を遺したのか。……そこに答えがあるはずでしょ」

が無言でがり、ネクタイを乱暴にした。 織も震えるでエプロンをした。

私たちは、度も交わすことのなかった疑暗鬼の線を互いに向けいながら、暗い廊列になって歩いた。

父の寝は、線と古い、そして微かな消毒液の匂いが染み付いていた。 介護用ベッドが撤されたの畳には、角い窪みがくっきりと残っている。

その部の押し入れの奥、着物の箪笥の横に、の古い鉄製庫が鎮座していた。 センチほどの、据え置き型の提げ庫。ダイヤルと鍵穴がについたタイプだ。

「ダイヤルの番号は?」 健が私の背からく尋ねてくる。

「……私の誕よ」 私は言った。 「父さんが倒れた、病打ちされた。『庫の番号は、朋美がまれただ』って」

織が息をむ音が聞こえた。 私は躊躇うことなく、ダイヤルを回した。 父の几帳面な字で帳の隅にかれていた、私のまれた昭――「1・0・0・4」。

カチリ、と属音がした。

そして、私が持っていた真鍮の鍵を鍵穴に差し込み、へ回す。

ガチャン。

拍子抜けするほどあっけなく、けられたことのなかったであろうい扉のロックが解除された。

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