みかん小説
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"長女にだけ渡された鍵" 第5話

「待ちなさいよ!」 突然、織が横から割り込んできた。 彼女の目は、私ではなく、庫のに残された自分の通帳に向けられていた。

彼女は震えるで『織』とかれた通帳をひったくり、乱暴にページをめくった。

「嘘……嘘でしょ? 私の通帳も……ゼロじゃない! 私のパート代、父さんに言われて毎半分預けてたのに! 『将来の自にしてやるから』って言われてたのに! 全部なくなってる!」

織の通帳にも、同じ期に引きされた記録があった。 百万円。綺麗に全額引きされていた。 そしてそこにも、同じ払戻請求のコピーが挟まれていた。

サインは――『宮本健』。

「健ィッ!!」 織が獣のような鳴をげ、健の胸ぐらに掴みかかった。 「あんたでしょ!? あんたが父さんを唆して、私たちのを盗んだのね!? 何がエリート役員よ! 何がの柱よ! 棒じゃない! ただの棒じゃないの!!」

せよ!」 健織の腕を力任せに振り払った。 織の体が壁に激突し、古い襖がガタリと音をてる。

棒だと? ふざけるな!」 健の顔が真っ赤に潮していた。 額に青筋が浮き、その目は憎悪と、追い詰められた物のような恐怖に濁っていた。

「俺が自分ので盗んだとでもってんのか!? 違う! 親父だよ! 親父が俺に泣きついてきたんだよ!」

「……何?」 私ので、何かが崩壊していく音がした。

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は乱暴に自分の髪をかきむしり、座卓を蹴りばすように叫んだ。

、俺が規事業に失敗して、個に数百万の借を背負いかけた……親父が虎ノまで来たんだよ!『健、おの傷は宮本の恥だ。おが潰れたらこのは終わりだ。姉貴と織の通帳を解約して面してやる。だから絶対に会社でき残れ、成功しろ』って……! 印鑑と委任状を俺に押し付けてきたのは、親父なんだよ!!」

が、凍りついた。

織がにへたり込み、を半きにして健を見げている。 私は、にした払戻請求を握り潰したまま、指先がくなるほど力を込めていた。

親父が……?

『お番しっかりしている』 『おだけが私に番似ている』 そうやって私たちを繋ぎ止め、従順な娘として囲い込んでおきながら。 裏では、私たちが血のにじむいで積みてたを、京で見栄を張る息子の「失敗」を隠すために、あっさりと差ししていた?

「……嘘よ」 私のから、乾いた笑いが漏れた。 「冗談じゃないわよ。……じゃあ、私のは何だったの? 私が京の学を諦めて、元の役所の臨職員になって、母さんの代わりに事をして……『朋美はしっかりしてるから頼りになる』って言われて、全部み込んできた私のは何だったのよ!?」

涙はなかった。 ただ、胃の底から煮えたぎるような、黒くてりがせりがってくる。

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私だけが特別だったのではない。 健だけが誇りだったのではない。 織だけがされていたのではない。

私たちは全員、父という男が描いた「理庭」という台ので、都のいい役柄をあてがわれ、互いに秘密を持たされ、競いわされ、そして最は使い潰されただけだったのだ。

「……ふざけないで」 私はがり、庫の底に残されていた最つのものに目を落とした。

冊の、学ノート。

には、それぞれの付が記されていた。 番古いものは、母がんだ

私は吸い寄せられるように、そのノートへとを伸ばした。 この獄のような欺瞞の、本当の始まりを確かめるために。

庫の底にあった冊の学ノートに私がを伸ばした瞬、背から荒い息遣いとともに、健が伸びてきた。

「触るな!」

番古いノートを引にひったくると、胸元に抱え込んだ。 その仕は、京のオフィスで巨額の予算を差配しているエリート幹部のそれではない。遣いを盗んだ現を親に見つかった、期の怯える子どもの姿そのものだった。

「健、返しなさい」 私の声は、底えするようなりでかすれていた。 「私の通帳を勝に解約して万を持ちしたこと、まだ説がついてないわよ。親父に泣きつかれた? 親父が差しした? そんなの、あんたの言い訳でしょうが!」

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