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"長女にだけ渡された鍵" 第6話

「言い訳なもんか!」 健の額に、血管が浮きがる。 「親父はな、俺の肩きしか見てなかったんだよ!『うちの健は虎ノで部をやってる、役員候補だ』って、同窓会や親戚に触れ回って悦に入ってたのは誰だ!? その板が傷つきそうになったから、親父が自分で面したんだ! 俺だって頼みたくて頼んだわけじゃない!」

「頼みたくて頼んだわけじゃない?」 畳のに座り込んでいた織が、掠れた笑い声を漏らした。 「じゃあ何? 私の百万も、あんたのその偉そうな板を守るために消えたってわけ? ふざけないでよ! 私がパート先でどれだけげて、毎円単位の節約をして貯めただとってるの!? あんたのスーツ着分で消えるようなでも、私にとってはそのものだったのよ!」

織ががり、健の胸元からノートをもぎ取ろうと爪をてる。 健はそれを苛たしげに突きばし、織の肩がタンスの角にぶつかった。 鈍い音がして、織が痛みに顔を歪める。

「やめなさい!」 私はに割って入った。 臓が激しく脈打ち、喉の奥が鉄のがするほど渇いている。

「今ここで殴りっても、消えたは戻ってこない」 私は畳のに散らばった冊の払戻請求の控えを拾い集め、乱暴に自分のバッグにねじ込んだ。

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「健、あんたの言い分は分かった。織、あなたの悔しさも分かった。でもね、父さんが裏で何をやってたのか、帳簿の数字を全部洗いすまで、私は絶対に納得しないから」

「洗いすって、何を調べる気だよ……」 健が吐き捨てるように言った。その瞳の奥には、らかな怯えのが混ざっていた。

「全部よ。父さんの、医療費、費、それにあんたたちがやり取りしてたの全部。……、平のうちに信用庫へく。父さんの通帳の過分の取引細を全部発してもらうわ」

私はを見据えた。 「親戚には内緒よ。父さんのが終わった翌に、子どもたちが遺産を巡って沼の査定を始めたなんてられたら、それこそ父さんが何より恐れていた『世体』が々になるからね」

私の皮肉に、健は苦々しく顔を背け、織はを睨みつけたまま唇を噛み締めた。

その夜、私は実て、分ほどの距にある自分の賃貸アパートへ戻った。 築のワンルーム。 歳の、見い話を断って実た際に借りた部だ。 当、父は言った。 『朋美、暮らしをするのはいいが、くへはくなよ。おくにいてくれないと、このは回らない。お女として、番しっかりしているんだから』

あのの私は、その言葉を信頼の証だとい込み、への転職も、京で暮らしていた昔の恋からのプロポーズも断った。

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いつでもで駆けつけられる距を置き、平の夜はスーパーの特売品を買い込んで実蔵庫を満たし、週末は父の薬の仕分けと庭のむしりに追われた。

私の代は、そうやって「頼りにされる女」という名誉の贄として、静かに消えていったのだ。

狭い台所で湯を沸かし、インスタントの噌汁を啜りながら、私はスマホの画面を見つめた。 健からも織からも、何の連絡もない。 の静寂が、まるでたいのように私の全にまとわりついていた。

翌朝、午。 私は喪からなグレーのパンツスーツに着替え、方信用庫の本にいた。

父の除籍謄本、私の戸籍謄本、実印、そして分証。 法定相続として、過の取引細の示を請求する続きは、事務で、残酷なほど淡々とんだ。

「宮本様、こちらが過分の普通預および定期預の入細になります」

の女性員が、分いバインダーに綴じられた数枚のプリントアウトを差ししてきた。 の効いたロビーの隅のソファに座り、私は指先を湿らせながらページをめくった。

、父の活の痕跡を辿る。 の振込、介護保険料の引き落とし、費。 そこまでは普通だった。 だが、健が私の通帳から万円を引きしたの記録を見た、私の指が止まった。

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