みかん小説
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"長女にだけ渡された鍵" 第7話

万円が入された翌、そのは別の座へからへ全額送されていた。 振込先――『宮本健』。 やはり、健の借穴埋めに使われていたのは違いなかった。

だが、私の目を釘付けにしたのは、そのの記録だった。

その送があったから、健座から父の座へ、毎きっかり「万円」の振込が始まっていたのだ。 名義は『ケンジ シオクuri』。 仕送り。 それは父がくなる半まで、度も欠かすことなく続いていた。

「……え?」

計算がわない。 もし健が親のを横領し、甘えていた放蕩息子なら、なぜ毎万ものを律儀に送し続けていたのか? 総額にすれば、百万円以になる。 健は、引きした万円をとうに返済し終えているどころか、それ以を実に注ぎ込んでいたことになる。

さらに奇妙な記録があった。 健から万円が振り込まれた数、必ず窓で「現万円」が引きされている。 引きし伝票の跡を確認するまでもない。 その引きしは、父自によるものだった。

父は、健から巻きげた仕送りに自分のして、毎万円もの現を何に使っていたのか? 入院の父のの回りの世話をしていたのは織だ。 医療費は座振替。 費は私が週に何度も届けていた。

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父が毎万円もの現を、自分ので引きして消していた理由が、まったく見当たらない。

私はプリントアウトを抱え、信用庫をした。 胸のざわめきが収まらない。 父が遺した本のレールが、私のっている現実と激しく軋みをげて衝突していた。

私はらせ、実のある町内へ向かった。 向かった先は、実ではなく、駅の寂れた商にある喫茶『まつ』だった。 父が公務員を退職してから毎のように通い、元の老たちと囲碁や世話に興じていただ。

カランコロンと、古びたドアのベルが鳴る。 昼がりの内には、油の匂いと煙の残りが漂っていた。 カウンターの奥から、髪を撫で付けたマスターが顔をげた。

「いらっしゃい……おや、朋美ちゃんじゃないか」 マスターは私の顔を見るなり、目を細めて驚いたように声をかけてきた。 「、終わったんだってな。聞の訃報欄で見たよ。変だったねえ」

「ご無汰してます、マスター。父がいつもお世話になってました」 私はカウンターの端の席に座り、アイスコーヒーを頼んだ。 客は奥のボックス席に老いるだけだった。

「親父さん、最まで格好いいだったよ」 マスターがサイフォンを扱いながら、懐かしそうに目を細めた。 「くなるまで、ここでよく自話をしてたんだ。

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『うちの息子は京のの部で、役員のエリートなんだ』ってな。ほら、あそこの壁の掛け計、覚えてるかい? あれも親父さんが『息子が初任で買ってくれたスイス製の計だ』って自して、に寄付してくれたんだよ」

げると、確かに見覚えのある古めかしい柱計が、カチコチと正確にを刻んでいた。 ……嘘だ。 あれは健が買ったものではない。 母が、結婚記にデパートの積で買った物だ。裏蓋に母の旧姓のイニシャルが刻まれているのを、私はっている。

「それに、の娘さん……織ちゃんだったっけ? 親父さん、いつも謝してたよ。『織は俺に番似て、くて優しい。結婚も回しにして俺の事から着替えまで全部面倒を見てくれる、町内で番の孝娘だ』って、そうだった」

マスターの言葉が、私のの奥でチリチリと音をてる。 健はエリートの誇り。 織は献な孝娘。 ……じゃあ、私は?

私は渇いた喉をアイスコーヒーで湿らせ、できるだけ何気ない調を装って尋ねた。

「……私のことは、何か言ってませんでしたか? 女の、朋美のことは」

マスターのが、わずかに止まった。 彼は線を瞬泳がせ、困ったような、気まずい笑みを浮かべてい布巾でグラスを拭き始めた。

「いや……朋美ちゃんは、しっかりしてるって言ってたよ。

公務員の共済組の仕事をしてて、堅実でだって」

「マスター」 私はまっすぐに彼の目を見つめた。

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