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"義母が突然、結婚指輪をくれた" 第4話

葵は戸惑いながら、さく「……ありがとう、ございます」と呟き、私の顔を窺った。 私は無理に角をげ、葵のを撫でてやった。

やがて、ビールや本酒がみ、親戚たちの声が段ときくなった頃だった。 叔母の恵子が葵を招きした。

「葵ちゃん、あっちのお部に美しいケーキがあるのよ。おばちゃんと緒に見にきましょうか」

葵はそうに私を見たが、私は「しだけってらっしゃい」と背を押した。 この息の詰まるから、でも葵をざけたかった。

葵が叔母たちに連れられて隣の広へと移り、襖がパタンと閉まった。 に残ったのは、酒をんで赤ら顔になった数の親戚と、義母、そして私だけだった。

座敷の空気が、ふっと変わった。

さっきまでの気あいあいとした、わざとらしい温もりが急速にえていく。 義母は元のお茶を含むと、湯呑みを畳のに静かに置いた。 カツン、と瀬戸物の乾いた音が響く。

義母の線が、私の胸元から、へとゆっくりとりていった。 私が指にはめたままの、あのプラチナの指輪。 それを見た義母の元に、満げな、しかし温度のまったくない笑みが浮かんだ。

「奈緒さん。指輪、気に入ってくれたようで嬉しいわ」

「……お義母様、やはりこの指輪はすぎます。私には受け取る資格がありません」

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私がそう言って指輪にをかけると、義母は制するようにすっと差し指をてた。

「いいのよ。神崎のの嫁として、その指輪をにつけるのは当然の義務なのだから」

「……義務?」

聞き捨てならない言葉だった。 私が眉をひそめると、義母はを乗りし、座敷の親戚たちをぐるりと見渡した。 親戚たちは誰としてかず、ただじっと私を注していた。 全員が、最初からこの瞬を待っていたのだと直した。

義母の細い目が、私を射抜くように細められた。 その瞳の奥に宿っていたのは、昨夜の涙でも、先ほどの慈でもない。 の領域にで踏み込んでくる、徹で計算い、あのと同じだった。

「ところで、奈緒さん」

義母は、まるで世話でもするかのような、穏やかで毒な声で言った。

「――亮介が、葵ちゃんの『氏の変更』の申し類を準備していたそうね?」

ぴたりと、私ので箸が止まった。

座敷の空気が、瞬で絶対零度まで凍りついた。

くの部から、葵の微かな笑い声とテレビの音が微かに漏れ聞こえてくる。 だが、このは、針が落ちても聞こえるほどの静寂に支配されていた。

氏の、変更。

その単語が、私の鼓膜を暴力に揺らした。

「……何を、仰っているのですか」

私は箸を膳のに置き、声を絞りした。 指先が微かに震えそうになるのを、膝の布を掴んで必に抑え込む。

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義母は元に張り付いた笑みを崩さないまま、首を傾げてみせた。

「とぼけなくていいのよ。来、葵ちゃんはに入学するでしょう? そのタイミングで、あなた、葵ちゃんをあなたの実の姓――『野』に変えようとしているんじゃないの?」

親戚たちのややかな線が、斉に私の顔に突き刺さる。

「……なぜ、それを」

私のから漏れたのは、否定ではなく、揺の混ざった問いだった。

っているはずがなかった。 葵の姓を私の旧姓である「野」に変える続きについては、誰にも話していなかった。 役所の戸籍課に相談にき、の就学健康診断の類に、入学続きまでに姓を変更する予定である旨を備考欄にさくき添えただけだ。 親しい友にも、実の両親にすら、正式に決まるまでは余計な配をかけたくなくて伏せていたことだった。

なのに、なぜ義母がそれをっているのか。 しかも、「亮介が、準備していた」とは、体どういうことなのか。

私の揺を見逃さず、義母はフッと喉の奥でたく笑った。

役所にも、学の教育委員会にも、昔から主の代からのいがいくらでもいるのよ。神崎の孫が、聞き覚えのない名に変わろうとしていれば、親切に教えてくださる方がいて当然でしょう」

報が漏れていたのだ。 方の旧のネットワーク。

役所や学に張り巡らされた、な「顔パス」

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