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"義母が突然、結婚指輪をくれた" 第7話

ケースをけると、亮介の使っていた帳、万、古いパスポート、そして保険や類のファイルが然と並んでいた。 亮介の匂いが、微かに腔をくすぐる。 胸が締め付けられるような痛みを覚えながら、私は類の束を枚、貪るようにめくっていった。

医療費の領収。 入院計画命保険の証券。

見慣れた類ばかりだった。やはり義母の任せだったのかと、諦めかけたそのだった。

帳の革カバーの裏側に、つ折りにされた見慣れない用が挟み込まれているのが指に触れた。

引き抜いて、広げた。

部に印刷された太い文字が、目にび込んできた。

『子の氏の変更許

庭裁判所の正式な式だった。 そして、そのにある記入欄には、紛れもない、あの几帳面でがりの亮介の直の文字が並んでいた。

【申】神崎 亮介 【事件本】神崎 葵 【変更を求める氏】

息が、止まった。

亮介の字だった。 震えるで、私はその用を凝した。 付は、亮介がくなるわずか。 すでにベッドから起きがることもままならず、激しい痛みに耐えながら点滴を受けていた期の付だった。

なぜ。 どうして亮介が、自分の命が消えようとしていたあの極限の瞬に、娘の姓を自分のの「神崎」から、私の旧姓である「野」

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に変えるための類を、いていたのか。

の余には、鉛く、亮介のきが残されていた。

『母さんには絶対にらせるな。葵を、神崎の贄にしてはならない』

文字が、涙で滲んだ。

亮介は、っていたのだ。 自分がんだ、義母が葵をどう利用しようとするかを。 神崎の名という名の呪縛が、幼い娘のをどれほど残酷に縛り付けるかを。 だからこそ、彼は最の力を振り絞って、娘をその呪いから解き放つための「武器」を遺そうとしていたのだ。

だが、用にある押印欄は、空のままだった。 提されるに、亮介の容体が急変し、識を失ってしまったのだろう。

そして、帳のポケットから、もう枚の片がハラリと畳のに滑り落ちた。

それは、庭裁判所から届いた、最付が印字された枚の『事件照会通』のコピーだった。

の欄には、私のらない弁護士の名。 そして、照会内容の欄には、こう記されていた。

『被相続・神崎亮介による、事件本・神崎葵の氏の変更申無、およびその捗状況についての照会』

付は、先週の。 依頼者の欄に記されていた名は――神崎 芳

たい戦慄が、のてっぺんから爪先までを貫いた。

義母は、ただ学や役所の噂を聞きつけただけではなかった。

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亮介が、裁判所に相談していた痕跡を何らかのルートで嗅ぎつけ、弁護士を使って裁の記録を洗いし、亮介が「娘から神崎の姓を奪おうとしていた」という事実に辿り着いていたのだ。

義母にとって、それは耐え難い裏切りだったはずだ。 塩にかけて育て、神崎の柱にしようとしていた最の息子が、の直に、母親の最も執着する「名」を孫から剥ぎ取ろうとしていた。

だから、義母はいたのだ。 亮介の遺志が公になり、葵が法に「野」のになってしまうに。 あのの指輪を使って、と伝統を振りかざして私を組み伏せ、力づくで「神崎」の檻のに引き戻すために。

計が、ボーン、ボーンと夜零を告げた。

こたつので、葵がさく寝返りを打った。 「パパ……」と、寝言のように呟く声が聞こえた。

私はがり、台所のシンクへ向かった。 排溝の脇に転がっていた、傷だらけのプラチナの指輪を拾いげる。

たく、い、呪いの輪。

私はそれを、乱暴にティッシュペーパーで包むと、テーブルの隅に放りした。

――亮介さん。

胸ので、き夫の名を呼んだ。 あなたは、病のベッドので、でどれほどの恐怖と戦いながら、この類をいていたの。 どれほどの覚悟で、母親という名の怪物を拒絶しようとしていたの。

私は、もうの、ただで泣き崩れるだけの無力な嫁ではない。

私は亮介のきの申を胸にく押し当て、眠る娘のそばに座り直した。

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