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"義母が突然、結婚指輪をくれた" 第14話

亮介がくなる、葵の歳の誕にと、病から贈られてきたさな茶のテディベア。 そのを握ると、数秒の音声が再される仕組みになっていたはずだ。 私はただのバースデーメッセージだとい込んでいた。

だが、葵の言葉は違った。

は、亮介の回忌の命だった。 そして、役所とへの氏の変更続きの最終提期限まで、あと

神崎の親戚同が墓に集まるそのに向けて、私の胸ので、最にして最の覚悟が静かに固まりつつあった。

夜の気が、アパートのいガラス窓をく曇らせていた。

こたつ机のに、茶さなテディベアが座っている。 に亮介が病から葵のために買ってきた、のひらに収まるほどのぬいぐるみだった。 毛並みは所々が擦り切れ、のプラスチックにはさな傷がついている。葵が毎晩、布団のに抱き込んで緒に眠ってきた証だった。

「葵、これ……パパの声が入っているの?」

私の問いに、パジャマ姿の葵はこくりと頷いた。 そして、さな両でぬいぐるみをおしそうに抱きげると、そのをそっと私ののひらに乗せてきた。

「うん。パパがね、びょういんのベッドで『あおいのにだけ、ぎゅってして聞いてね』って言ったの。だから、あおい、誰にも言わなかったよ。

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ママにも、ないしょにしてたの。パパとのやくそくだから」

「……どうして、今ママに教えてくれたの?」

葵はし困ったように眉をげ、私の顔をじっと見つめた。

「あのね、今のおばあちゃん……すごく怖かった。あおいね、パパのおうちのたち、みんなパパのことが好きじゃないみたいに見えるの。でも、パパはこのくまさんのにいるよ。パパは、あおいとママのことが、世界でいちばん好きだって言ってたもん」

歳の子どもの言葉が、私の胸を鋭く貫いた。

子どもはの嘘を見抜く。 どんなに豪勢な事をされても、どんなに級なランドセルを買い与えられても、その奥にある「所欲」と「傲」のたさを、葵は本能で嗅ぎ取っていたのだ。

「葵……ママにも、聞かせてくれる?」

私が震える声で頼むと、葵は「いいよ」と笑って、ぬいぐるみのを指差した。 に入っているプラスチックのスイッチの触が、布越しに指先に伝わってくる。

カチリ、とさなクリック音がした。

ザー……という、古いテープレコーダーのような微かなノイズが流れた。 続いて聞こえてきたのは、規則正しい医療器のアラーム音。 そして、酸素マスクの奥から漏れるような、酷く掠れ、息のから絞りされた男の声だった。

『――葵。お誕、おめでとう』

息が止まった。 亮介の声だった。 、私が毎のように病で聞き、そして度と聞くことができなくなった、最の夫のの声。

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歳になったんだな。……パパ、おのそばにいてやれなくて、本当にごめんなさい。……葵、パパの言うことを、よく聞いてほしい』

録音の奥で、亮介が激しく咳き込む音がした。苦しげに息をえるい沈黙の、声はく、そして信じられないほどの真剣さを帯びて続いた。

『おきくなったら、いろんなが、おに「神崎」という名さを押し付けてくるかもしれない。おは神崎の跡継ぎだ、神崎の誇りを持てって、おを縛ろうとするかもしれない。……でもな、葵。そんなもの、絶対に聞かなくていい』

を疑った。 病の夫が、歳の娘に遺した言葉。それは、昨夜私が帳の余で見つけた文字と、寸分違わぬ魂の叫びだった。

『パパはな、神崎ののためにきて……自分のを、きられなかった。母さんの期待に応えることばかり考えて、ずっと息が苦しかった。……パパがまれてきて、自分のから笑えたのは、奈緒と会って、葵、おまれてきてくれただけだったんだ』

スピーカーから漏れる夫の吐息が、まるで部の空気を震わせているようだった。 私の目から、粒の涙がとめどなく溢れ、畳のにポタポタと落ちていく。

『神崎の名なんて、ただのたい碑と同じだ。おの命よりもいものなんて、この世につもない。葵は、ママの名を継ぎなさい。

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