みかん小説
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"義母が突然、結婚指輪をくれた" 第20話

義母の唇が、刻みに震えした。

「葵ちゃん……」

義母はしゃがみ込もうとしたが、膝に力が入らないのか、よろめいてをつきそうになった。 私がわずしかけたが、義母はそれを制するように々しく首を振った。 そして、面に片膝をついたまま、抱えていた袋を胸のへと差ししてきた。

「……これを受け取って、くれないかしら」

「これは……?」

突き返した、あの紋入りの最級ランドセルだろうか。 それとも、またあの千万円の通帳なのだろうか。 私の眉がわずかに寄ったのを察したのか、義母は慌てて首を横に振った。

「違います……! 違うの、奈緒さん。けて、見てちょうだい」

義母の懇願するような目に押され、私は袋の隙からを覗き込んだ。

息を呑んだ。

に入っていたのは、あの黒々としたなコードバンのランドセルではなかった。

柔らかな、沢を抑えたクラリーノ製の、品なカーマインレッドのランドセルだった。 どこにでもある、けれど番軽くて、さな子どもが背負いやすいように夫された、標準な学習用品。 あの『抱き茗荷』の紋の刻印も、箔の『神崎代』という禍々しい文字も、どこにもない。 被せの具の横に、らしいさな桜のびらの鋲が、つだけ控えめにっていた。

「……これ、は」

「今朝、番で……駅の百貨商部をけさせて、買い直してきたの」

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義母の声が、涙で途切れ途切れになった。

「あの子紋入りのランドセルは……私の部の押入れの奥に、しまい込みました。……あんなたいものを、歳のあの子の背に背負わせようとしていたなんて……私、本当に……愚かだったわ」

義母の目から、粒の涙が零れ落ち、アスファルトを濡らした。

「昨夜……ずっと、亮介の声がかられなかったのよ」

義母は自分の胸元をぎゅっと掻きむしった。

「あの子が、病で遺した言葉……『神崎の名なんて、たい碑と同じだ』って……『葵の命よりもいものなんて、この世につもない』って……。、仏壇ので、亮介の写真を見つめながら、泣き続けました」

朝のたいが、義母の乱れた髪を撫でていく。

「私はね……怖かったのよ、奈緒さん」

義母は顔をげ、すがりつくような目で私を見げた。 そこには、旧の絶対な女主としての姿は微もなかった。 ただの、孤独と悔に打ちひしがれた、れな老いた母親の魂が剥きしになっていた。

「主くにくなってから、私には『神崎のを守る』ということしか、縋るものがなかったの。それさえ握りしめていれば、世から見されない、ぼっちにならないと信じ込んでいた。……そのために、亮介のを奪い、あの子のを殺して……そして、亮介を失った」

義母の涙が、顎を伝って袋の縁に落ちた。

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「息子がんだ、私は自分ののすべてを否定されたような気がしたの。だから、あなたを責めた。跡取りを産まなかったあなたを追いせば、自分の過ちを見なくて済むとった。……そして、葵ちゃんがになると聞いた、私はまた同じ過ちを繰り返そうとしたのよ。神崎の名さえ残せば、亮介がきていた証が残ると……私がやってきたことが違いじゃなかったと、自分に言い訳したかっただけだったの」

喉の奥から絞りされるような、魂の懺悔だった。

誰かに言わされた言葉ではない。 自分ので最の息子を追い詰め、その息子からになって絶縁状を叩きつけられた母親が、獄の底でようやく辿り着いた、血を吐くような真実の独

「私は……神崎のを守りたかったんじゃない。……になるのが、怖かっただけなのよ。自分が誰からも必とされなくなるのが、ぬほど恐ろしかったの……!」

義母は面に両をつき、を垂れた。

「すまなかったわ、奈緒さん……。あなたに、あんな酷いことを言って……亮介が命懸けでしたあなたを、蹴にして……本当に、ごめんなさい……!」

役所のき交う々が、何事かとを止め、に膝をついて平伏する老婆の姿を巻きに見つめていた。 だが、義母は目も気にせず、ただひたすらにげ続けていた。

私は、袋のの赤いランドセルを見つめていた。

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